日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.92 深みに嵌る(前編)
Category : 転生話
転生でバレンタイン小話。
未来時間なので、多分に想像が入っています。
バレンタインはおろか、義理チョコ文化まであるので、パラレルの更にパラレルくらいに捉えていただけたらと(^^;)
せっかく女の子ジョミーなのに、このイベントには乗っからないと!ということで~。
でもって二人はまだ恋人同士ではありません。
そしてフライングで本編より先にシロエが出ます……す、すみません!
「よう!おはよう、ジョミー!」
白い息を吐きながら、いつにも増して朝から元気に挨拶をしてきたサムに、ジョミーは溜息をついて肩をすくめる。
「おはよう、サム。ひょっとして、今年も君のママとぼくとアルテラくらいしか当てがないのか?」
「………そう言うなよ……」
がっくりと肩を落とすサムと、くすくすと笑うマツカの横で、キースだけが首を傾げた。
「何の当てだ?」
「え、待てよキース。まさか心当たりがないなんて……」
「ジョミー、キースはこういう奴なんだ」
「嘘だろ!?だってキースってモテるのに!?」
「受け取ってくださいなんて差し出したら『これはなんだ、一体どういう意図のものだ?』とか鋭い目を向けて言い出しかねない人に、正面きって渡せる猛者がいるはずないと思うけど」
「あ、おはよう、シロエ」
後ろから声を掛けられて振り返ったジョミーは、その言葉に酷く納得して頷いた。
「イベントでもそれか、キース」
「ジョミー、機械に情緒を求めるだけ無駄だよ」
キースを一瞥して、つんと顔を逸らしたシロエに苦笑しながら、ジョミーは肩に掛けていた鞄を下ろして中を探る。
「まあなんでもいいや。全員揃ってちょうどよかった。シロエは同じクラスだから後でもいいと思ってたんだけどさ」
そう言ってジョミーが鞄から引きずり出した袋に、シロエとマツカが目を丸めた。サムはまたかと呟き額を押さえ、キースは眉を寄せる。
「ジョ……ジョミー……それって……」
「えーと……」
シロエは袋を指差して言葉に詰り、マツカも戸惑うように首を傾げてサムを伺う。サムは苦笑を零して頷いた。
「ジョミー、学業に菓子は必要ないぞ」
「バレンタインなんだから大目に見てよ。はい、キースも一掴み取っていいから」
バリンと音を立てて徳用の大袋の口を開けると、まずキースに差し出した。
「バレンタイン……?」
「そ。これは日頃仲のいい友達とかに渡す……」
「いくら義理だからって、麦チョコっていうのはどうなのさ、ジョミー!」
「やっぱり……それが義理チョコだったんですね……」
さすがのマツカも引きつった笑いで呟いた。
「いいじゃないか、麦チョコ。美味しいさ、クラス全員に勝手に取って行ってーってできるし、貰うほうだってお返しはいらないか、それこそ10円チョコでいいかって思えるだろ」
「ジョミーは毎年こうなんだよ」
学校へ向かって揃って歩きながら、ジョミーが掲げている袋に手を入れてサムは苦笑いを見せる。
「まあ……百パーセント誤解なく義理チョコだとは分かりますよね」
「いい風に言いすぎだよマツカ。どう見ても手抜きじゃないか」
「そう言いつつ、君らも食べてるだろ」
「本人も食べてるけどね……」
溜息をつくシロエに肩を竦めて、ジョミーはまだ一度も手を出さない男に袋を向ける。
「ほら、キースも食べなよ」
「しかし歩きながらものを食べるというのは……」
「お堅い奴……じゃあ仕方ない、キースには特別だ。えーと……」
ごそごそとポケットを探るジョミーに、シロエはえっと声を上げる。
「なに?別に普通のチョコレートも持ってたの!?なんでキースにだけ……」
「ほら、ティッシュに包んであげるから、後で食べるといいよ」
手にしていた麦チョコを握り締めて叫びかけたシロエは、取り出したポケットティッシュから一枚抜いたその上に、ザラザラと麦チョコを入れて口を捻るジョミーに、力なくうな垂れる。
「そ、そうか……すまない……」
そのラッピングとも言えないぞんざいなチョコを入れた包みを渡されて、キースは戸惑いながら礼を言った。
「だからさあ、ジョミーに夢見んなって」
サムは笑いながら、うな垂れたシロエの背中を叩く。
「義理でもこいつがバレンタインにチョコを用意すること自体がすごいんだって」
「た……確かに……ジョミーならあげるより逆に貰っても不思議じゃないよね……」
「ああ、こいつ後輩とか先輩からよく貰ってたぜ」
「そ……そう……なんですか……」
もはやシロエが声も出ない様子で額を押さえて溜息をついたので、代わってマツカが引きつった笑いで頷いた。
義理用にと用意したチョコレートを自分でもポリポリと食べながら歩いていたジョミーは、思い出したように麦チョコの袋をシロエに渡す。
「ごめんシロエ、ちょっと持ってて。ほら、サム。アルテラから」
「おー、サンキュー」
サムはジョミーが鞄から取り出したもうひとつの袋を両手で受け取って、笑顔で礼を言う。
「アルテラにもありがとうなって伝えておいてくれ」
シロエはサムが受け取った袋をまじまじと眺めて、溜息をついて首を振る。
その言いたいことが容易に想像できてしまったマツカがくすくすと笑いながら、サムの持つ袋を指差した。
「妹さんは手作りなんですね」
こちらは色の着いたセロファン紙を重ねて作った袋に、ピンク色のリボンで口を縛って、バレンタインのカードもついている。
「毎年だよ。サムにはついでだけどねー」
「わかってるよ。俺はコブとタージオンのおまけだろ。いいんだよ、それでも!麦チョコで済ませるお前に比べて、アルテラはなんて可愛いんだろうな、お姉ちゃん?」
「ぼくに夢見るなって言ったのはサムだろ……あ」
何気なく振り返って見つけた人影にジョミーは手を上げて大きく振った。
「ブルー!リオ!おはよう!」
手を振るジョミーに釣られて全員が振り返ると、いつもの温和な笑みが僅かに凍った様子のリオと、不機嫌そうなブルーが並んでいる姿があった。
未来時間なので、多分に想像が入っています。
バレンタインはおろか、義理チョコ文化まであるので、パラレルの更にパラレルくらいに捉えていただけたらと(^^;)
せっかく女の子ジョミーなのに、このイベントには乗っからないと!ということで~。
でもって二人はまだ恋人同士ではありません。
そしてフライングで本編より先にシロエが出ます……す、すみません!
「よう!おはよう、ジョミー!」
白い息を吐きながら、いつにも増して朝から元気に挨拶をしてきたサムに、ジョミーは溜息をついて肩をすくめる。
「おはよう、サム。ひょっとして、今年も君のママとぼくとアルテラくらいしか当てがないのか?」
「………そう言うなよ……」
がっくりと肩を落とすサムと、くすくすと笑うマツカの横で、キースだけが首を傾げた。
「何の当てだ?」
「え、待てよキース。まさか心当たりがないなんて……」
「ジョミー、キースはこういう奴なんだ」
「嘘だろ!?だってキースってモテるのに!?」
「受け取ってくださいなんて差し出したら『これはなんだ、一体どういう意図のものだ?』とか鋭い目を向けて言い出しかねない人に、正面きって渡せる猛者がいるはずないと思うけど」
「あ、おはよう、シロエ」
後ろから声を掛けられて振り返ったジョミーは、その言葉に酷く納得して頷いた。
「イベントでもそれか、キース」
「ジョミー、機械に情緒を求めるだけ無駄だよ」
キースを一瞥して、つんと顔を逸らしたシロエに苦笑しながら、ジョミーは肩に掛けていた鞄を下ろして中を探る。
「まあなんでもいいや。全員揃ってちょうどよかった。シロエは同じクラスだから後でもいいと思ってたんだけどさ」
そう言ってジョミーが鞄から引きずり出した袋に、シロエとマツカが目を丸めた。サムはまたかと呟き額を押さえ、キースは眉を寄せる。
「ジョ……ジョミー……それって……」
「えーと……」
シロエは袋を指差して言葉に詰り、マツカも戸惑うように首を傾げてサムを伺う。サムは苦笑を零して頷いた。
「ジョミー、学業に菓子は必要ないぞ」
「バレンタインなんだから大目に見てよ。はい、キースも一掴み取っていいから」
バリンと音を立てて徳用の大袋の口を開けると、まずキースに差し出した。
「バレンタイン……?」
「そ。これは日頃仲のいい友達とかに渡す……」
「いくら義理だからって、麦チョコっていうのはどうなのさ、ジョミー!」
「やっぱり……それが義理チョコだったんですね……」
さすがのマツカも引きつった笑いで呟いた。
「いいじゃないか、麦チョコ。美味しいさ、クラス全員に勝手に取って行ってーってできるし、貰うほうだってお返しはいらないか、それこそ10円チョコでいいかって思えるだろ」
「ジョミーは毎年こうなんだよ」
学校へ向かって揃って歩きながら、ジョミーが掲げている袋に手を入れてサムは苦笑いを見せる。
「まあ……百パーセント誤解なく義理チョコだとは分かりますよね」
「いい風に言いすぎだよマツカ。どう見ても手抜きじゃないか」
「そう言いつつ、君らも食べてるだろ」
「本人も食べてるけどね……」
溜息をつくシロエに肩を竦めて、ジョミーはまだ一度も手を出さない男に袋を向ける。
「ほら、キースも食べなよ」
「しかし歩きながらものを食べるというのは……」
「お堅い奴……じゃあ仕方ない、キースには特別だ。えーと……」
ごそごそとポケットを探るジョミーに、シロエはえっと声を上げる。
「なに?別に普通のチョコレートも持ってたの!?なんでキースにだけ……」
「ほら、ティッシュに包んであげるから、後で食べるといいよ」
手にしていた麦チョコを握り締めて叫びかけたシロエは、取り出したポケットティッシュから一枚抜いたその上に、ザラザラと麦チョコを入れて口を捻るジョミーに、力なくうな垂れる。
「そ、そうか……すまない……」
そのラッピングとも言えないぞんざいなチョコを入れた包みを渡されて、キースは戸惑いながら礼を言った。
「だからさあ、ジョミーに夢見んなって」
サムは笑いながら、うな垂れたシロエの背中を叩く。
「義理でもこいつがバレンタインにチョコを用意すること自体がすごいんだって」
「た……確かに……ジョミーならあげるより逆に貰っても不思議じゃないよね……」
「ああ、こいつ後輩とか先輩からよく貰ってたぜ」
「そ……そう……なんですか……」
もはやシロエが声も出ない様子で額を押さえて溜息をついたので、代わってマツカが引きつった笑いで頷いた。
義理用にと用意したチョコレートを自分でもポリポリと食べながら歩いていたジョミーは、思い出したように麦チョコの袋をシロエに渡す。
「ごめんシロエ、ちょっと持ってて。ほら、サム。アルテラから」
「おー、サンキュー」
サムはジョミーが鞄から取り出したもうひとつの袋を両手で受け取って、笑顔で礼を言う。
「アルテラにもありがとうなって伝えておいてくれ」
シロエはサムが受け取った袋をまじまじと眺めて、溜息をついて首を振る。
その言いたいことが容易に想像できてしまったマツカがくすくすと笑いながら、サムの持つ袋を指差した。
「妹さんは手作りなんですね」
こちらは色の着いたセロファン紙を重ねて作った袋に、ピンク色のリボンで口を縛って、バレンタインのカードもついている。
「毎年だよ。サムにはついでだけどねー」
「わかってるよ。俺はコブとタージオンのおまけだろ。いいんだよ、それでも!麦チョコで済ませるお前に比べて、アルテラはなんて可愛いんだろうな、お姉ちゃん?」
「ぼくに夢見るなって言ったのはサムだろ……あ」
何気なく振り返って見つけた人影にジョミーは手を上げて大きく振った。
「ブルー!リオ!おはよう!」
手を振るジョミーに釣られて全員が振り返ると、いつもの温和な笑みが僅かに凍った様子のリオと、不機嫌そうなブルーが並んでいる姿があった。
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