日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.90 女神は哂う(前編)
Category : 小話・短文
前回が暗かったので、明るい話にしようとしたら無自覚傍迷惑Wソルジャーになりました。この二人は今のところ師弟関係、純粋なる好意だけの信頼関係の間柄。
でもこの話の主人公はフィシスです。このフィシスは腐女子ではなくて、単に嫌気が差しただけで。
ブルーのことをあまり大事にしていないフィシスですのでご注意ください(^^;)
黒フィシス、天然Wソルジャー、女装等、色物ご注意。
でもこの話の主人公はフィシスです。このフィシスは腐女子ではなくて、単に嫌気が差しただけで。
ブルーのことをあまり大事にしていないフィシスですのでご注意ください(^^;)
黒フィシス、天然Wソルジャー、女装等、色物ご注意。
「聞いてくれ、フィシス!」
満面の笑顔のソルジャー・ブルーが天体の間に訪れる。その足取りは軽やかであるのに力強く、彼の人の威厳とご機嫌が同時に伺えるものだった。
「まあ、ソルジャー・ブルー。ようこそいらっしいました。お待ちしておりましたのよ」
かたりと椅子を立ったフィシスの言葉に、ブルーは更に機嫌を良くした。
このところフィシスは忙しかったり、体調が優れないなどが続いて、あまり長く話し込むことができなかったからだ。
待っていた、というからには存分に話せるのだろうと喜び階段に足をかけたブルーは、階段下で竪琴を鳴らしていたアルフレートの額から冷や汗が流れていたことに気づかなかった。アルフレートはそのまま一礼をして、二人の時間を邪魔しないように遠慮した態で天体の間から逃げ出す。
「今日はあなたに、お伝えしなくてはならないことがあります」
「え?それはソーサラーとしての言葉かい?」
「いいえ。ですがあなたと、ジョミーのために必要なことですわ」
ジョミーのため、と聞いてブルーが反応しないわけがない。
フィシスが予想するまでもなく確信してた通り、ブルーは途端に表情を引き締めてフィシスの前に立った。
「聞こう」
その表情は、ソルジャーとして相応しいものだった。
「やあ、フィシス。こんにちは。いや、こんばんはかな」
夕方と夜との狭間の時間に訪れたジョミーの表情には、一日の疲れが透けて見えたが、それ以上に彼は上機嫌だった。
「まあ、いらっしゃい、ジョミー。お待ちしてましたのよ」
昼間にブルーを招き入れたときと同じような状況で、同じようなことをいうフィシスに、アルフレートは今度は早々に階段から立ち上がった。
そうして、ジョミーに挨拶もせずに足早に天体の間を後にする。
フィシスのファンであるアルフレートには、常々フィシスに近付くことをあまり快く思われていない自覚のあるジョミーは、珍しく一瞥もくれなかったアルフレートに首を傾げたが、フィシスに呼ばれてすぐに気を取り直した。
「今日は時間は大丈夫だったかな?」
女の子たちに占いをする約束がありますの、そろそろ入浴しようとしていたところですの、など最近はすれ違いが多かったことを指しているのだろうジョミーに、フィシスはにっこりと微笑んだ。
「ええ、今日はあなたに大切なお話がありまして……」
「大切な話?」
ちょこんと首を傾げたジョミーは、本人が聞けば断固として否定しそうだったが大層可愛らしい。
……この可愛らしさに、絆され続けてしまったのだ。
フィシスが手を伸ばすと、ジョミーはそれを握ってくれる。
「ええ、ソルジャー・ブルーのことです」
「ソルジャーがどうかしたの?」
途端にジョミーの雰囲気が引き締まった。
「フィシス、聞いてくれ!今日の目覚めはジョミーで迎えることが出来たんだ。僕が眠っていようと目覚めていようと、夜に挨拶にきてくれていることは知っていたが、なんとジョミーは朝も僕の顔を見てから訓練に行っていたと言うじゃないか!なんて可愛いのだろう!」(うっとり頬を染める)
「聞いて、フィシス!今日は朝の挨拶のときにソルジャーが目を覚ましてくれたんだよ!ぼく、一日がすごく楽しくて、機関長に怒られても幸せだったんだ。おかげでヘラヘラするなって、余計に怒られちゃったよ」(ペロリと舌を出して悪戯な微笑み)
「フィシス、聞いてくれ!今日のジョミーは休憩時間に子供たちとかくれんぼをしていたんだ。途中で疲れが出たのだろうね。隠れた木の上で眠ってしまった。その寝顔は天使のように清らかで……いや、天使如きがジョミーに叶うはずもないのだが。しかし眠っているのが木の枝の上だったからね。落ちては危ないと僕が迎えに行ったら、逆に怒られてしまったよ」(幸せそうな笑みで頭を掻く)
「フィシス聞いて!今日、ソルジャーったら広場まで出てきて、サイオンを使って木の上にあがってきたんだよ!……そりゃ、あんなところで居眠りをしたぼくも悪いんだけどさ……でも、そんなの下から声を掛けてくれたらいいのに、わざわざサイオンを使うなんて、自分の身体に無頓着すぎるよ、あの人!抱っこなんてしてくれなくても、落ちたりしないのに!」(頬を膨らませつつ、ほんのりと嬉しそうに)
「フィシス、聞いてくれ!今日はジョミーが手料理を作ってくれたんだ。卵の殻が少し痛かったが、カルシウムが不足しているだろう僕にはぴったりのオムレツだった!卵のふわふわとした食感が、まるで愛らしいジョミーのようで、今日は素晴らしい食事だった……」(感歎の溜息)
「フィシス……聞いてくれる?今日はぼくからソルジャーに、オムレツを作ってみたんだけど……失敗して卵の殻が混じってたみたいなんだ。ガリってすごい音がから、びっくりして吐き出してって言ったらあの人、『僕は歳だから多少の殻はカルシウムにちょうどいい』なんて言って、全部食べちゃったんだ。ぼく本当に申し訳なくて……ねえ、お詫びにもう一度何か作ろうと思うんだけど、あの人が好きな料理って知ってる?」(少し照れたような上目遣い)
「私は、惚気は聞き飽きました」
冴え冴えとする美貌でフィシスがテーブルを叩くと、さたる音も立てなかったというのに、傍らに立っていたアルフレートと、正面に所在なげに座っていたリオが同時にびくりと震えた。
『え……ええ……フィシス様、お気持ちはわかります……』
「確かに、この15年間、ジョミーを見つけてからのソルジャーからは来る日も来る日も「今日のジョミー」を聞いておりましたが、ジョミーをようやく迎え入れ、念願が叶ってからのあの方は更に磨きが掛かってしまいました」
ジョミーを遠くから見守るだけの日々の間の話は、傍に行くことのできない寂しさが含まれていたから、まだ素直に聞くことが出来た、の間違いではないだろうかと、アルフレートとリオは同時に考えたが、賢明なことに口にも思念も乗せなかった。
「それでもソルジャーおひとりからでしたらまだ我慢もできましたが、ジョミーまでが私に喜びの報告をするようになって……正直に申し上げてつらかったのです」
それは、様々な用事を作っては逃げ出していたことを考えると容易に想像はつく。
ほぼ毎日、二人掛かりで昼と夜、同じ話を、別々の視点で、惚気て聞かされていれば、それは嫌気も差すだろう。その点は確かにフィシスに同情する。リオはジョミーからしか惚気は聞かないので、まだマシだろう。
『……ですが、どうしてアレなんですか?』
衣装協力と称してフィシスの意趣返しに巻き込まれたリオが恐る恐ると訊ねると、フィシスは口元にほっそりとした指を翳して、あらと微笑む。
「だって、あのお二人は傍から見れば相思相愛は明白なのに、そのことに無自覚だからああして公害……こほん。人に話して内に篭った想いを発散しているのですわ。でしたら、その想いを互いに向けてしまえば、すべては解決ではありませんか」
『はあ、まあ………』
理屈はわからないでもないですが、何もあそこまでしなくても。
リオはそう思ったものの、やはりそれをフィシスに面と向かって告げはしなかった。
満面の笑顔のソルジャー・ブルーが天体の間に訪れる。その足取りは軽やかであるのに力強く、彼の人の威厳とご機嫌が同時に伺えるものだった。
「まあ、ソルジャー・ブルー。ようこそいらっしいました。お待ちしておりましたのよ」
かたりと椅子を立ったフィシスの言葉に、ブルーは更に機嫌を良くした。
このところフィシスは忙しかったり、体調が優れないなどが続いて、あまり長く話し込むことができなかったからだ。
待っていた、というからには存分に話せるのだろうと喜び階段に足をかけたブルーは、階段下で竪琴を鳴らしていたアルフレートの額から冷や汗が流れていたことに気づかなかった。アルフレートはそのまま一礼をして、二人の時間を邪魔しないように遠慮した態で天体の間から逃げ出す。
「今日はあなたに、お伝えしなくてはならないことがあります」
「え?それはソーサラーとしての言葉かい?」
「いいえ。ですがあなたと、ジョミーのために必要なことですわ」
ジョミーのため、と聞いてブルーが反応しないわけがない。
フィシスが予想するまでもなく確信してた通り、ブルーは途端に表情を引き締めてフィシスの前に立った。
「聞こう」
その表情は、ソルジャーとして相応しいものだった。
「やあ、フィシス。こんにちは。いや、こんばんはかな」
夕方と夜との狭間の時間に訪れたジョミーの表情には、一日の疲れが透けて見えたが、それ以上に彼は上機嫌だった。
「まあ、いらっしゃい、ジョミー。お待ちしてましたのよ」
昼間にブルーを招き入れたときと同じような状況で、同じようなことをいうフィシスに、アルフレートは今度は早々に階段から立ち上がった。
そうして、ジョミーに挨拶もせずに足早に天体の間を後にする。
フィシスのファンであるアルフレートには、常々フィシスに近付くことをあまり快く思われていない自覚のあるジョミーは、珍しく一瞥もくれなかったアルフレートに首を傾げたが、フィシスに呼ばれてすぐに気を取り直した。
「今日は時間は大丈夫だったかな?」
女の子たちに占いをする約束がありますの、そろそろ入浴しようとしていたところですの、など最近はすれ違いが多かったことを指しているのだろうジョミーに、フィシスはにっこりと微笑んだ。
「ええ、今日はあなたに大切なお話がありまして……」
「大切な話?」
ちょこんと首を傾げたジョミーは、本人が聞けば断固として否定しそうだったが大層可愛らしい。
……この可愛らしさに、絆され続けてしまったのだ。
フィシスが手を伸ばすと、ジョミーはそれを握ってくれる。
「ええ、ソルジャー・ブルーのことです」
「ソルジャーがどうかしたの?」
途端にジョミーの雰囲気が引き締まった。
「フィシス、聞いてくれ!今日の目覚めはジョミーで迎えることが出来たんだ。僕が眠っていようと目覚めていようと、夜に挨拶にきてくれていることは知っていたが、なんとジョミーは朝も僕の顔を見てから訓練に行っていたと言うじゃないか!なんて可愛いのだろう!」(うっとり頬を染める)
「聞いて、フィシス!今日は朝の挨拶のときにソルジャーが目を覚ましてくれたんだよ!ぼく、一日がすごく楽しくて、機関長に怒られても幸せだったんだ。おかげでヘラヘラするなって、余計に怒られちゃったよ」(ペロリと舌を出して悪戯な微笑み)
「フィシス、聞いてくれ!今日のジョミーは休憩時間に子供たちとかくれんぼをしていたんだ。途中で疲れが出たのだろうね。隠れた木の上で眠ってしまった。その寝顔は天使のように清らかで……いや、天使如きがジョミーに叶うはずもないのだが。しかし眠っているのが木の枝の上だったからね。落ちては危ないと僕が迎えに行ったら、逆に怒られてしまったよ」(幸せそうな笑みで頭を掻く)
「フィシス聞いて!今日、ソルジャーったら広場まで出てきて、サイオンを使って木の上にあがってきたんだよ!……そりゃ、あんなところで居眠りをしたぼくも悪いんだけどさ……でも、そんなの下から声を掛けてくれたらいいのに、わざわざサイオンを使うなんて、自分の身体に無頓着すぎるよ、あの人!抱っこなんてしてくれなくても、落ちたりしないのに!」(頬を膨らませつつ、ほんのりと嬉しそうに)
「フィシス、聞いてくれ!今日はジョミーが手料理を作ってくれたんだ。卵の殻が少し痛かったが、カルシウムが不足しているだろう僕にはぴったりのオムレツだった!卵のふわふわとした食感が、まるで愛らしいジョミーのようで、今日は素晴らしい食事だった……」(感歎の溜息)
「フィシス……聞いてくれる?今日はぼくからソルジャーに、オムレツを作ってみたんだけど……失敗して卵の殻が混じってたみたいなんだ。ガリってすごい音がから、びっくりして吐き出してって言ったらあの人、『僕は歳だから多少の殻はカルシウムにちょうどいい』なんて言って、全部食べちゃったんだ。ぼく本当に申し訳なくて……ねえ、お詫びにもう一度何か作ろうと思うんだけど、あの人が好きな料理って知ってる?」(少し照れたような上目遣い)
「私は、惚気は聞き飽きました」
冴え冴えとする美貌でフィシスがテーブルを叩くと、さたる音も立てなかったというのに、傍らに立っていたアルフレートと、正面に所在なげに座っていたリオが同時にびくりと震えた。
『え……ええ……フィシス様、お気持ちはわかります……』
「確かに、この15年間、ジョミーを見つけてからのソルジャーからは来る日も来る日も「今日のジョミー」を聞いておりましたが、ジョミーをようやく迎え入れ、念願が叶ってからのあの方は更に磨きが掛かってしまいました」
ジョミーを遠くから見守るだけの日々の間の話は、傍に行くことのできない寂しさが含まれていたから、まだ素直に聞くことが出来た、の間違いではないだろうかと、アルフレートとリオは同時に考えたが、賢明なことに口にも思念も乗せなかった。
「それでもソルジャーおひとりからでしたらまだ我慢もできましたが、ジョミーまでが私に喜びの報告をするようになって……正直に申し上げてつらかったのです」
それは、様々な用事を作っては逃げ出していたことを考えると容易に想像はつく。
ほぼ毎日、二人掛かりで昼と夜、同じ話を、別々の視点で、惚気て聞かされていれば、それは嫌気も差すだろう。その点は確かにフィシスに同情する。リオはジョミーからしか惚気は聞かないので、まだマシだろう。
『……ですが、どうしてアレなんですか?』
衣装協力と称してフィシスの意趣返しに巻き込まれたリオが恐る恐ると訊ねると、フィシスは口元にほっそりとした指を翳して、あらと微笑む。
「だって、あのお二人は傍から見れば相思相愛は明白なのに、そのことに無自覚だからああして公害……こほん。人に話して内に篭った想いを発散しているのですわ。でしたら、その想いを互いに向けてしまえば、すべては解決ではありませんか」
『はあ、まあ………』
理屈はわからないでもないですが、何もあそこまでしなくても。
リオはそう思ったものの、やはりそれをフィシスに面と向かって告げはしなかった。
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