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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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No.21 転生話6

書きたいものが多すぎて、手と頭が追いつかない(苦笑)
連載だけで転生もあわせると三つですが、肩の力が抜けすぎたあほっぽい話と、教育指導の続編とかそれ以外でのえちぃ話、どシリアスとネタがぐるぐる回って頭の中がカオスです……。
基本的に共通しているのは、ブルーがむっつりだということ。
……orz
ツンツンしている転生話の初期くらいは格好よくと思っていたのに、それもなかなか難しい……せめてむっつりじゃないからいいか、とか妥協です(笑)


転生話 第2話 第3話 第4話 第5話

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ジョミー・マーキス・シン。
有名なミュウの二代目の長の名前。
一部ではSD体制を終わらせた英雄として、その名を語られている。


幼馴染みが先ほどの現場に残ったことにすぐに気が付いたが、ブルーは構わず先に登校した。
とにかく、面倒なことには関わりたくない。
激突された胸がずきずきと痛む。
ジョミー・マーキス・シンと名乗った少年。
そんな名前をつけるとは、ジョミーの両親か片親がミュウか、それともミュウ贔屓なのか。
どちらにしろ子供にその名を与えるほど英雄を敬愛しているのなら、きっとシンというファミリーネームであることにさぞや喜びを覚えただろう。そうでなくてミドルネームまでしっかり重ねるはずもない。
英雄にあやかって「ジョミー」の名をつける親は、多いとは言わないが少なくもない。
「ジョミー」という名は今では珍しいものでもなく、SD体制最後の国家元首「キース」の名も、それから数はぐっと減るが初代のミュウの長「ブルー」という名も同様だ。
しかし珍しくないからと言って、「ブルー」と「キース」と「ジョミー」が揃うなんて、なんの冗談だ。
不愉快にブルーの足取りが僅かに荒くなった。
大体、ブルーはミュウという種族自体があまり好きではない。
こう言うと幼馴染みはいつも、「でも例外はいますよね」と気にした様子もなく自分を指差す。自分と弟のマツカと、そして盲目の占い師フィシスの映像を。
マツカはともかく、リオはなぜブルーがミュウを嫌うか、その理由を知っているためそんな風に軽く受け流すのだ。

世間でミュウを嫌う人間の一般的な理由は、「自分の心を読まれるのではないか」という恐怖からの意見が半数以上を占める。
だが本来ミュウたちのその力は、他者と分かり合うためのものらしい。
人類が機械の支配から脱却してミュウの存在を認めるようになってからの三百年、そう思念について説いて、その上で自ら厳しい規則を設けて自分たちの力を制御していた時代もあったという。
すべては人と共に生きて行くために。
それでも、人間は自分とは異なるものを受け入れることに柔軟ではない。
ブルーの両親がそのくちだ。
だがブルーがミュウを嫌う理由は、もっと個人的で幼い八つ当たりに過ぎない。
思念が悪用されるのではないかという嫌悪でも、ソルジャー・アスカを始めとするたった四人しかいないタイプ・ブルーの強大な力に対する恐怖でもなく。
ほんの少し、自分を取り巻く状況が違えば嫌う理由もなかったくらい、ブルー以外のものからみれば些細な、だがブルーに取っては耐え難いこと。
なぜ両親は、ブルーに「ブルー」の名をつけたのだろう。
ミュウを嫌っているくせに。
そしてそんな疑問さえも、直接両親に問うたことはない。

「見て、あの髪の色、珍しいよね」
指を差されることに慣れた今では、聞こえた声にいちいち反応することもなかったというのに、ぼんやりと考え込んでいたせいで、つい声のした方を振り返ってしまった。
振り返った視線の先にいた三人組の少女たちが、ブルーと目が合った途端に短い歓声を上げて手を取り合う。
そこには否定的な様子はなく、どうやら一年次生かと眉を潜めて足を速めた。
周囲を取り巻く環境が、身に纏わり付くようで不愉快だ。早く人の合間に埋没してしまいたい。毎年、一年の始まりは憂鬱だ。

足を速めたところで、また胸が痛んだ。背中の痛みは随分と引いたのに、胸のほうは呼吸の度に鈍く疼く痛みがなかなか消えない。ひょっとすると肋骨を痛めた可能性もある。
もしも怪我をしていたら、と聞いてもいないのに名乗った少年のことを思い出した。
ジョミー。
ジョミー・マーキス・シン。
ごく一部を除いてミュウに良い感情を持たないブルーには、あまり耳に心地の良い響きではない。
……そのはずだった。
だが不思議なことに、それが明らかにミュウの先代の長を意識してつけられたと分かるはずのあのジョミーに対してだけは、込み上げるはずの面白くないという感情が起こらない。
何故だろう。

「ブルー……」
そう呼んだジョミーの声は僅かに震えていた。すぐ傍から見上げた瞳は、綺麗な翡翠色。
今まで何人か遭遇したことのある「ジョミー」は、ブルーの名前を聞くと「ブルーとジョミー」の取り合わせに喜んだりひとしきり笑い転げたりしたものだ。
だがあのジョミーは、今まで見たどの反応とも違う。
痛みを堪えるような、湧き上がる歓喜を堪えるような、それとも、まるで目の前のものを信じ切れていないような、そんな目をして。
「本当に、あなたなの?」
不可解なことを口にした。
「………待て」
見えてきた校門に、さっさと教室に入ってしまおうと更に足を速めるつもりだったブルーは思わず立ち止まる。
「あいつ、なんで僕の名前を知っていたんだ……?」
名乗ってなどいないというのに。

No.20 転生話5
転生話5話目。今現在はツンデレならぬツンツンブルーですが、他の連載との落差が激しい(笑)

ジリジリとした速度で進み、オマケにまだまだ続くのでまとめて目次を作った方がいいかな、とか思ったのですが、とりあえず簡易目次。

転生話 第2話 第3話 第4話




「サム!サム!大丈夫か!?」
切羽詰ったようなキースの声に、腕の中で身動きする少年から目を上げると、先にある街路樹の植え込みに自転車が引っ繰り返った状態で突っ込んでいた。その横から突き出た足が見える。
キースはその傍らに膝をついて足の持ち主の様子を伺っているようだった。
生徒の溢れ返る通学路に自転車で突っ込むとは、キースの友人にしては随分大胆なことだ。

「ブルー………?」
小さく掠れて、消え入りそうな震えた声が、ブルーの耳に僅かに届いた。
泡を食ったキースの珍しい叫び声につい気が逸れたけれど、そういえば自分も荷物を抱えていたのだった。
呼ばれて目を落とせば、翡翠色の瞳と視線がぶつかる。
こんな至近距離で人と目を合わせたことなどないブルーは驚いてつい仰け反ったが、すぐに背中がどこかの家の外壁に当たった。
それにしても、何をそんなに驚くことがあるのか、少年は大きな目を更に大きく開き、今にもその瞳が零れ落ちそうなほどだ。
その輝きは宝石だと言えばそれでも通じそうなだ、なんて。埒もないことが脳裡を過ぎったその頬に、白い手が伸びて触れた。
「本当に、あなたなの?」
戦慄く唇で小さく呟く少年に、けれどその言葉の内容よりも見ず知らずの者にいきなり顔を触れられた嫌悪感が先に立って、乱暴にその手を振り払った。
「なんなんだ、一体。訳の分からないことより、まず言うことがあるだろう」
喧騒に振り返ったときに上から降るように飛び込んできたので見たわけではないが、少年は恐らくあのキースの知り合いらしき相手の自転車の同乗者だ。
クッションになる気がブルーにサラサラなかったとしても、結果的にはそうなった。
振り落とされたのか、危険を考えて飛び降りたのかは知らないが、見ず知らずの人間にクッションになってもらったのなら、言うべきことがあるはずだ。
当然のことを言ったまでだというのに、なぜか少年の顔が今にも泣き出しそうにくしゃりと歪み、胸の底に不可解な感情が湧き上がって眉を潜めた。

少年が泣いてしまいそうな表情を隠すように俯いたのは、ほんの数秒のことだった。
すぐにもう一度上がった顔には、悪びれない苦笑が昇っている。
「ごめんなさい!受け止めてくれてありがとう、助かったよ。怪我はない?」
さっき見た表情は見間違いだったのだろうか。それほど少年の様子には、申し訳ないという意識は見えてもそれ以外に屈託はない。
「君が上に乗っていては、怪我しているかどうかを確かめることもできやしないな」
言外にいつまで上に乗っているつもりだと膝の上で座り込む少年を睨み据えると、何を驚くことがあるのかパチパチと瞬きをする。
「おい……」
「あ、ごめんなさい」
更に要求すると、少年はようやく気が付いたように立ち上がって手を差し出してくる。
「ごめん。それで怪我はない?」
「………ああ」
ブルーは差し出された手を丸きり無視して自分で立ち上がると、服の埃を払って鞄を拾った。
ぶつけた背中と少年を受け止めた腕と胸が痛んだが、それ以外はどうということもなく怪我もしていないようだ。
無言で歩き出したブルーに、少年は金の髪を揺らしてブルーの行く手に回りこむと、両手を広げて前に立ち塞がる。
「あ、あの、怪我は」
「ないと言った」
「お礼を」
「もう聞いた」
「えっと……」
少年が何をしたいのか分からなくて苛立ったブルーは、無言でその肩を掴んで強引に横へ押しのけた。少し力が入りすぎてどこかの家の外壁に強かにぶつかったようだが見向きもしない。大した用事もないのに機嫌の悪いブルーを呼び止めた相手が悪い。
「ブルー!そんな乱暴なっ」
抗議の声を上げたのは幼馴染みだったが、軽く袖を後ろに引かれて振り返ると、少年は壁から身体を起こしてニッコリと微笑む。
「ぼくはジョミー。ジョミー・マーキス・シン」
「……そんなことは聞いてない」
壁に叩きつけられた自覚はあるのかと眉を寄せると、ジョミーと名乗った少年はうんと頷いた。
「聞かれてないけど、名乗っとく。もしも後で怪我とかしてたって分かったら教えて。ちゃんとお詫びするから。アルテメシアから引っ越してきたばっかりの一年生で探したら分かり易いかなって思う」
少年の笑顔に冷ややかな一瞥をくれると、ブルーは無言で袖を掴んだ手を振り払って歩き出した。
No.18 転生話4

そういえばマツカですが、本来「マツカ」は姓の方なんですよね(^^;)
彼のファーストネームはジョナのはずなんですが、こちらではただ「マツカ」で統一されております。みんな名前で呼び合ってるのにひとりだけファミリーネームというのもあれですし、だからってジョナと呼ぶと今更な違和感が(苦笑)

で、今回はようやくジョミー登場。
この話はブルーの視点で進んでいるので、最後のは間違いじゃありません。
しかしこのペースだとトォニィが出てくるまでにどんだけかかるんだろう……。




「別に目新しい情報は何もない。地球の浄化が進んでいれば大々的に発表されているはずだ。単に行った連中が帰ってくるだけの話だろう」
リオが立ち上げた携帯モバイルのホログラムに無感動に応えたのはキースで、ブルーは振り返りもしない。そのニュースなら、どのソースのものも一通り目を通した。
「これはまた素っ気無いですね。確かキースは地球再生機構への参加を希望しているのではなかったですか?」
それは初耳だ。思わぬところでキースとの接点を知ったブルーは多少興味を惹かれた。
だがすぐにそれも失い、一人歩く速度を上げた。
再生機構への参加は脱落者が続出するという訓練を潜り抜け、厳しい選考とその条件を満たした者のみが参加を許される。
その訓練生になることすらも選考を抜けねばならず、その門の狭さには定評がある。
ならば同じ道を目指しても、キースと同行するとは限らない。いや、恐らく不可能に近い。
なぜなら。

「希望はしているが、それは些末な情報に踊らされるという事とは別物だ。一通りのニュースには目を通している」
キースと同じ行動を取っていると知って、ブルーは機嫌は更に少し下降した。それまで気にも留めていなかった相手が、自分と同じものに興味を惹かれ、同じところを目指している。
しかもそこまでへの距離は、恐らくキースのほうが近い。
「ところで、僕はあなたにそんな話をした覚えはない……マツカ」
「は、はい!あの、でも兄さんなら別にいいかと思って……」
「余計なことを」
年少の二人はそんなブルーの様子など気づいた様子もないが、少し足を速めたというのに距離が空く気配がない。恐らくさりげなくリオがブルーに合わせて二人に気づかれないほど自然にペースを上げたろう。
「マツカは君の希望を吹聴して回ったわけではないですよ。この子が急に機構を目指すと言い出したから理由を尋ねただけです。君について、君の手助けをしたいと、そう言ってね」
ブルーは思わず零しかけた溜息を噛み殺して、更に少し速度を上げた。下り坂のお陰で勢いがついた。
「くだらない」
同じ道を目指し、その手助けをしたいという友人の思いをくだらないと切って捨てたキースに、マツカは怒るどころか軽く首を傾げた。
「今日は機嫌がいいんですね、キース」

無関心に先を歩いていたのに、思わぬ感想につい振り返ってしまった。
ブルーと目が合ったキースは不機嫌そうに眉を寄せてふいと横を向く。今朝のキースといえば、相も変わらぬ無表情。どの辺りに機嫌の良さがあるのだろうか。
「余計なことを言うな」
「はい、すみません」
叱られながら、それでも楽しそうなマツカの様子にリオは苦笑して、ブルーは気が知れないと肩を竦めて、リオとマツカをそれぞれ目だけで指し示す。
「ミュウはみんなどこか変なのか?」
「それはまた随分な言い様ですね」
「僕やキースみたいな奴に好んで構う」
「それを言うなら寛大と」
自分で言っていれば世話はない。少なくとも神経は図太いのだろうと結論付けて速度を落とさず歩き続けるブルーの後ろで、答えがなくとも自分で見つけたらしいマツカが軽く手を叩いた。
「ああ!そうか、今日からアルテメシアに移動していたサムが戻ってくるんでしたね」
言いながら自身も嬉しそうに微笑むマツカに、キースは苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、リオが弟に問う。
「サム?」
「キースの親友です。お父さんの仕事の都合で二年前にアルテメシアへ移住していて、今年から帰ってくるはずなんです」
「余計なことを言うな」
聞くともなしに耳に入ってきた後ろの会話に、キースにマツカ以外で友人がいたのかと少し感心してしまった。確かに自分よりはキースの方がまだ社交性は望めるが、世の中は案外お人好しと物好きが多いらしい。
どちらにしても自分には関わり合いのない話だと、大した興味もなく鞄を肩に掛け直した、その後ろでざわめきが起こった。

聞き慣れたそれに振り返りもしないでいると喧騒が大きくなり、悲鳴や怒声までが上がる。
さすがにいつものブルーを見世物にした様子ではないと振り返ろうとした刹那。
「どいてくれー!」
急ブレーキ音に周囲から上がる悲鳴。
その中心にいたはずのブルーは、一瞬のうちの判断で後ろにステップを踏んで振り返りながら道の脇に避けた。
その視界に、茶色の影が過ぎる。
それが人だと認識したのは、飛び込んできた物体を咄嗟に受け止めてからのことだ。
激しい衝突で飛び込んできた物を両手に近くの壁に強かに背中をぶつける。少し先に進んだ向こうでは、尾を引いたブレーキ音が何かに激突する音と共に止まった。

「サム!?」
背中と胸を痛めて軽く咳き込んだブルーに見向きもせずに、いつになく血相を抱えたキースが駆けて行く。その後ろをマツカが追いかける姿を見たところで、ブルーの腕の中のものが動いた。
ぎょっと目を落とすと、目に鮮やかな金色がすぐ傍にあって思わず息を飲む。
「いたた……」
呻き声が上がり、金色がひょこひょこと揺れて驚いた。
「なに……?」
「大丈夫ですか、ブルー!それに君も!」
蒼白の顔色で駆け寄ってきたリオの呼び掛けで、ブルーは腕に飛び込んできたものが、金色の髪を持った茶色のジャケットを着た少年だとようやく認識した。

No.16 転生話3

えー、この話のジョミーですが、女の子でいくことにしました。
女の子ジョミーが駄目な方には中途半端なところで宣言となって申し訳ないのですが、最初にそうなるかも~と書いていたということで……。

しかしここで女の子と宣言すると、初期展開のネタバレになっているという。
前回の冒頭に書いていた通り、転生した人たちは前世とほぼマンマの容姿をしておりますので、ベタな展開が待っております(笑)

とにもかくにも、まず3話目。ここから一気に登場人物が増えます~。
ジョミーは多分……次で登場できるかと。
このブルーは色々捩れています。それにしてもおかしな取り合わせ(笑)



家を出てしばらく進み、大通りまで出ると人の波に方向性ができる。
その波のうちのひとつはブルーと同じ年代の子供が作るもので、行く先はほぼ同じだ。
今日から新学期。
母の言葉を思い返して憂鬱な気分になった。
新学期、新学年。新入生も入ってくる。またしばらくの間は見世物だ。
銀の髪も赤い瞳も、自分の他に見たことがない。それは周囲にとってもブルー以外には見たことがないわけで、どうしても人目を集めてしまうのだ。否応もなしに。
それが酷く煩わしい。

ふと、横の角から黒のジャケットを翻して三つ年下の顔見知りが大通りに合流した。
あちらもブルーに気がついて、互いに視線が合ったがそれだけだ。
軽く目だけで挨拶をしたような、しなかったような、そんな様子で同じ方向へ向かう。
傍から見れば顔見知りだとは思わないほどの素っ気無く、二人揃って無言で歩いていると別の角からひょいと友人が現れた。
「やあ、おはようございます、ブルー」
「……おはよう」
それだけを返してまた気だるげに歩くブルーの横に並んだ幼馴染みは、素っ気無い態度にも気を悪くした様子もなく、眼鏡の向こうで優しげな目を細めて苦笑を漏らすだけだ。
そしてその弟は、同い年の友人の隣へとくっついた。
「おはようございます、キース」
「ああ、おはようマツカ」
背筋をピンと伸ばして歩くキースの返礼は、ブルーとは違い堅苦しいまでにきびきびとしている。
「相変わらずですね、二人とも。せっかく一緒に歩いているのに、まったく口も利かないなんて」
リオが呆れたような、いっそ感心するようなという様子で笑う。
隔意とまではいかなくとも、キースのほうには色々と思うところがあるようだが、ブルーからはキースに対して何の感慨もない。
「別に」
「話すこともないだけだ」
やはり揃ってにべもない返答をされて、リオは肩を竦めて息をついた。
「そうそう、それなら僕から提供する話題が……」
リオがごそごそと緑のコートのポケットを探っているうちにも、周囲からひそひそと小さな話し声と視線が集まってきていた。

ブルーがちらりと目を向けると、こちらを見て何かを話していた二人の女の子が顔を赤らめて小さな歓声のような短い声を上げる。
他にもこちらを見て声を潜めている集団がいくつもあって、ブルーは早々に予想通りの展開が見えた気がして溜息をついた。
「毎年毎年……」
愛想よく笑ったりしなければ、好奇の視線に対して睨みもせず、ブルーは気だるげな歩調のままで特に態度を変えることもない。
銀の髪に赤い目と、小さな頃は指を差されるたびに逃げるように足を速めたが、もうすっかり慣れてしまった。好奇の目にも、嫌悪の目にも。
「新入生でしょうか」
「だろうな」
あの反応はと傍で遠慮もなく言う友人は、本当に友人なのだろうか。
制服のない学校だったおかげで、一見しただけでは学年など分かりはしない。だがブルーに対する視線は、ある程度それを振り分けるのに役に立つ。特に女生徒は顕著に。
古馴染みの友人のうち、兄はそんな周囲のブルーへの態度に既に慣れきっているのに、その弟は気が優しいのか弱いのか、気を遣うような視線を向けてくる。
それが哀れみから来る同情なら反発もできるのに、マツカの場合は心根が優しいだけだと知っていることが、より厄介だった。
ブルーは軽く舌打ちして鞄の紐を引いて肩に掛け直した。

「ひとつ、先に言っておくが」
そんな中、友人の弟の、そのまた友人という微妙な立場の少年は、むしろこちらこそが昔からの馴染みのように遠慮の欠片もない。
「去年のような騒ぎを起こさないように心掛けてもらえるだろうか」
「君に何か迷惑をかけたか……ああ、そういえば学年代表だったな」
ブルーが絡むことで起こる騒動は、同学年ではほとんどと言っていいほどない。
キースが言った騒動とは、黙っていれば貴公子然としたその容姿に、勝手に憧れて勝手に盛り上がった下級生が告白なんてものをやってきて、ブルーがそれを手酷くあしらうことに端を発することが半数以上を占める。
去年が一年次だったキースは学年代表だったこともあって、大きな騒ぎに発展したときはその耳に原因のことも伝わっていたのだろう。何度か苦言を呈された。
強い抗議でなかったのは、一方的にブルーに問題があったわけではなかったからだ。まったく、三つも年下の癖に、妙に冷静で公正なので嫌になる。
「僕に言われても知らないな。それにキースは今年は二年次だ。一年もの期間があって、同じ愚を繰り返すような奴の短絡まで僕のせいにされてはたまらない」
優秀な少年はどうせ今年も学年代表だろうという認識で返すと、どうやら本人もそのつもりのようだった。
「一年次の女生徒が貴様に熱を上げるのは目に見えているという話だ」
「それこそ僕の知った話か」
導く後輩たちのことまで、今から気に掛けているのかと、いっそご立派な志に呆れるブルーに、去年の苦い思い出が蘇ったのかキースの目が険しくなったところで、リオがポケットから携帯モバイルを取り出して開いた。
「不毛な会話はこの辺りで終わりにして。シャングリラが地球を出発したというニュースは見ましたか?」
キースはともかく、リオがブルーの地球への興味を知らないはずはないので、これは完全に話題を変えにかかっただけだろうと、その気配りにブルーは皮肉めいた苦笑を頬に昇らせた。

No.12 転生話2

三代目ソルジャーについて、公式なのかどこかの創作から端を発したのか未だに分かっていないのですが、この話ではネット上でちらちらと見かける呼び名でいきます。
ソルジャー・アスカ。
ソルジャーで呼ぶ名前が分からないと三代目が出せないので……ということで、三代目は登場予定です。フィシスはまだ未定ですが、彼女も出てくるなら転生ではありません。まだ普通にご健在なので。
アスカなのはどうしてだろうと思うのですが、ひょっとしてユウイの名字?
(ユウイが出ているオリジナルの方は読んだことないから分からない……)
疑問が解けました。ユウイのファミリーネームは作中でちゃんと出ていたんですね!お墓か……。
みなさん読み込んでいらっしゃるー!とすごく感動したのですが、ひょっとして自分の読み込みの方が激しく足りてないのではという疑問も(^^;)
とにもかくにも、教えてくださってありがとうございます。すごくすごく引っ掛かっていたので、とても助かりました!


いまだブルーしか出ていないのですが、その他の転生している人たちも容姿や名前は前世のまんまということになっております。でないとややこしくて仕方がない(自分が)

 



シャツを羽織り階下へ降りると、忙しなく朝の支度をする母親の後姿があった。
「おはよう、ブルー。今日から新学期ね。もうすぐトーストが焼けるから勝手に食べてちょうだい」
「うん……」
母は振り返らないし、息子もテーブルコンピューターのスイッチを入れ電子新聞を選ぶだけで、母の背中を一瞥もしなかった。
それはどこにでもある朝の風景であったが、流れる雰囲気はどこか白々しい。
トースターが焦げ目のついたパンを吐き出すと、ブルーは電子新聞の記事を捲りながらバターだけを塗ってそれを齧る。
目を向ける事無く手探りだけで入れたコーヒーを口に含んだところで、ひとつの記事に目が止まった。


「シャングリラ、地球を出発」


写真も映像もないその文字だけの記事は、地球再生機構の中心を担うミュウの視察団の船団が、ノアへ戻るということを報じていた。帰港するのは今月末の予定となっている。
「……ご苦労なことだな」
現在の赤茶けた重苦しい様相を見せる地球に対して、未だに夢や憧れを持ち続けるものは少なくない。
特にミュウ、その中でもミュウの長ソルジャー・アスカを始めとする古い顔ぶれはその傾向が強いという。
ソルジャー・アスカはかつて地球が完全に死の星となるところを、人間と協力してその身を呈して守ったというのだから、思い入れがあるのも当然かもしれない。
地球が完全に滅びそうになったのは三百年前のことで、今では当時の証人はミュウといくつかの文献に残るのみだ。

ブルーは地球とは何の縁もない。
人類発祥の地であるとはいえ、人類の大半が地球を離れてもう九百年になる。そんな遠い昔の故郷と言われても。地球に対してはそんな冷めた見方をする向きもあって、どちらかと言えばブルーもそちらと同じ考えを持っている。
そのはずなのに、なぜか地球の話題を目にするたび、耳にするたび、どうしても目が、耳が、そちらの集中してしまう。
そうして今日もやはりその記事で手が止まった。
再生機構はその活動や進捗度を隠す事無く開示していて、今回も特に目新しい大きな発見はないということだった。
十四年前、死の星と化した地球にソルジャー・アスカが持ち込んだという花が枯れることなく咲いたことに世間は大きく沸き上がったが、そこから大きな進展はない。
もっとも、十年や二十年で劇的な変化など訪れようもない。
彼らとて三百年待って、ようやくそこまで辿り着いたのだから。

記事を端から端まで一文字も漏らさず読み終えると、どうぜ似たような内容だと分かっているのに、発行元を異にする別の新聞を取り込んで地球関連の記事を読み漁る。
どの新聞でもやはり絵はなく、文字のみの記事だった。
赤茶けた色でも、それでも地球を見ることができる機会は本当に少ない。少し落胆する。
次に地球の新しい映像なり写真なりがどこかに掲載される可能性があるのは、ミュウの船団が帰港したときだろう。
政府と上手く連携した特集が組まれれば、可能性はゼロではない。
確率は、かなり低いけれど。

「ブルー」
名前を呼ばれて顔を上げると、母は振り返ってはいたけれどどこか視線を彷徨わせるようにブルーを見てはいなかった。
「学校に行かなくて良いの?新学期早々遅刻するわよ」
「うん、行くよ」
ブルーは手元のコンピューターの電源を落とすと、空になった皿とカップを流しへ運んで鞄を掴み、リビングを後にする。このまま身支度を整えて出て行くので、次は帰宅するまで母と顔を合わせることはない。
あちらはさぞかし、ほっとしていることだろう。
鞄を玄関に置き、洗面所に入ると鏡に映る銀の髪を指先で弄りながら、知らずに溜息が漏れる。
「寮に入ればよかったな」
歴史の授業によると、機械にさまざまなことを委ねていた時代は、十四歳になると成人と見なして強制的に親元から引き離し、成人したてということになっている子供たちだけで集団を生活を送っていたという。
将来の選択を機械にすべて握られるというのは御免だが、その自立年齢の早さは少しだけ羨ましい。
集団生活の煩わしさを嫌って自宅通学を選んだ浅はかさに溜息を零しながら、身支度を整えると玄関に戻って無言で家を後にした。

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