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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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サイト転載にあたって転生話にタイトルをつけました。ついでに目次もまとめました。どこまで話が伸びるのか分からないので、縦長対策に見にくい横並び目次です(苦笑)
このペースだと完結までには100話くらいは軽く費やされる予感。1話ずつが短いとはいえ…orz

ところで今話でブルーの捏造ファミリーネームが出ます。
ジョミー以外はなるべくみんなファミリーネームを出す事態を避けているのですが(苦笑)、さすがにブルーくらいはどのみち避けては通れまい、と。しかし話が伸びるほど避けられない人が増えて行くような気もします……(^^;)
ブルーはそれこそブルーカラーの中から選んでみました。アクアブルーとかインディゴブルーとかの、○○ブルーの○○の部分。なんて無理やりな。
できればキースのファミリーネームもあんまり出したくないところなんですが……出れば間違いなくアニアンです(他に考えられない…)

目次はこちら


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校医に連れ戻されたジョミーは、強引に椅子に落ち着けられた。
だが本人は赤い血を流す膝の怪我より、ブルーの方が気になるらしい。
「ねえ、どこを怪我したの?」
校医に足を掴まれて身動きできないとなると、上半身だけでもとこちらへ身を乗り出す。
横を見ると、こういったときに愛想よく相手をするはずの友人はなぜか遠慮するようにジョミーに背を向けていて、ブルーは溜息をついた。
「別に……」
返答になっていない答えを返しながら、手当てを受けるジョミーを上から下までしげしげと眺める。
受け止めたときは衝撃があったからともかく、確かに体重はそれほど重くはなかったが、すらりと伸びた白い足は、ふくらはぎと太股が柔らかそうに少しだけふっくらとしているだけで、全体的には思ったより華奢だ。
ジャケットを脱いだ下は白いシャツを身に着けていたらしく、スパッツの黒とちょうど対になっている。
肩も随分小さくて細い。あれは袖を捲くれば腕もきっと折れそうに細いに違いない。
今年入学ということは、今はまだ十三歳なのだろうから頼りない子供体型で当然と言えば当然だ。
だが……。
ふと、少年に違和感を感じたところで、ごほんと咳払いが聞えた。

「そうあまりジロジロと見るものではありません。リオを見習いなさい」
膝の血を消毒液をつけた脱脂綿で拭い去った校医は、ブルーを見て叱るように目に力を込めた。
リオを見習えと言うと、たかがズボンを脱いでいるだけで遠慮をして背中を向けろということか。
下着まで脱いでいるならともかく、そこまでする必要は感じなかったが、男の足なんて眺めたいのかと思われるのも遠慮したいのでブルーも背を向けた。
「別にそんなのいいのに。ねえ、それよりブルー……先輩、本当にどこも悪くないの?だったらどうしてここに……」
「君には関係ないと言った。もし責任を感じるというのなら、僕に構うな」
放っておいてくれと告げると、さすがに背中越しの声は黙り込んだ。
だが代わりに校医が呆れたと声を上げる。
「そのような冷たい言い方をしなくてもよいでしょう!あなたは今年で最上級生になるのですよ。下級生に優しくして導いてあげこそすれ、そのような態度……!」
「い、いいんです、エラ先生。ぼくがしつこくしたのがいけないんですから」
「聞きましたか、ブルー・イリアッド!新入生に気を遣わせて情けないと思わないのですか」
勝手に慌てて勝手に反省したことまで、こちらに当てこすられても知ったことか。
ブルーは背を向けたまま肩を竦めた。
「風向きが悪いようだ。僕はこれで」
校医を怒らせたことを幸いと、さっさと出て行ってしまおうとすると、その腕をリオに掴まれる。
「だめですよ。肋骨の辺りが痛いなんて、ヒビでも入っていたらどうするんです」
「肋骨?ヒビ!?そんな……っ」
「ジョミー・マーキスー・シン!少しはじっとなさい!式までに手当てが終わらないでしょう!」
また暴れたらしいジョミーもぴしゃりと叱られた。こちらは被害者なのだから、それでもお相子だとは思わないが、それにしても無謀な事をする割りには随分とその結果に責任を感じるものだ。得てして、無鉄砲な子供は責任を重く捕らえないからこそ無茶を繰り返すものだろうに。
いつまでも気に掛けて纏わりつかれるのも面倒で、ブルーは横目でリオを睨みながら溜息を零した。
「リオが強引で大袈裟なだけで、少し痛む程度だ」
「大袈裟かどうかは私が判断します。さ、ジョミーは服を調えなさい。ブルーはこちらのベッドに横になって」
衣擦れの音のする場所からコツコツと低いヒールが音を立てて離れて、ブルーは言われるままに仕方なしにそちらへ向かった。

こうなったらさっさと検査を済ませてしまった方が面倒が少ない。
どうせ大した傷ではないと思っていたからこその判断で、ブルーは示されたベッドに上がって仰向けに寝転ぶ。
胸の上の辺りに、身体には触れずに手をかざされた。
医者とミュウを嫌うブルーにとって、この学校の校医はまさしく鬼門だ。何しろミュウで医者なのだから。
「……あなたは……相変わらずサイオンの干渉を拒みますね。身体の力を抜いてリラックスなさい」
校医は眉を寄せて溜息をついた。
「体内のリズムを見ているだけです」
「拒んでいるつもりはありません」
実際、さっさと終わらせてしまいたいブルーに拒む意思はない。だが嫌いなものに対する拒絶反応まで制御できないし、できたとしてもする気もない。
傍で検査を見ていたリオの隣に、茶色のジャケットを羽織り直したジョミーがひょいと顔を出した。
目が合った途端に、自然とブルーの眉間に皺が寄る。
一体なんだというのだ。
そんなに心配そうな顔をして。
結果的に睨みつけられたようなものになるのに、ジョミーは少しだけ悲しそうに目を伏せただけで、立ち去りもせずに何も言わずに検査が終わるのを待っていた。
10話になっても大して話が進んでないってどうしよう(^^;)
ブログ形式は書くのは楽なんですが、読み返すのが面倒なので、そろそろサイトのほうへ移していこうかな?と思います。サイトへ移すのはきっちり話の着地点を決めてから、と思ってたんですけどね……。
どこに何を書いたか、読み返さないと忘れるんですよ……。
重複説明をしたり、必要なものをスポーンと飛ばしたりとかしたら後で困りますし(苦笑)


転生話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話




普段からそんなに機嫌の良い人物ではないが、今日の友人は格別に機嫌が悪かった。
無理やり掴んだ手を引っ張りながら教室を出ると、その手を振り払われる。
「自分で行くから引っ張るな」
引っ張られることだけでなく、ついてくるなという意味を込めた一睨みを受けたけれど、リオは構わず並んで歩き出した。
ジロリと不機嫌そうな目を向けられたが、にこりと笑って跳ね返す。
「見張ってないと、本当に医務室に行くか怪しいですから」
「自分のことは自分で分かる。必要が不必要か、決めるのは僕だ」
「あなたが医者嫌いでなければその通りですね」
ブルーは目を細め不愉快を顕わにすると、後は黙って足を動かすだけだった。本当に、見張っていなければ医務室へ行っていたかどうか。

ほんの数ヶ月だけ年下だという隣の家の少年は、生まれたときから身体があまり丈夫ではなかった。
原因不明の高熱をたびたび発し、そのために遠くの病院へあちこち転院しながら検査を繰り返したせほどだ。結局息子のためにお隣は引っ越してしまい、その後首都に戻ってきたときも、以前とは違う家に入ったのでお隣ではなくなってしまった。
それでも歳を取るほどに少しずつ体力をつけて、今では人並みには丈夫といえる。
だがブルーの目指している道は、人並みではいけないのだ。
地球再生機構に所属するには、どうしてもクリアしなければならない様々なチェックがある。もちろん人より頑強な身体を持つことも、条件の一つだ。
ブルーが体力面でどうしても劣ることは否めない。
だがミュウは違う。
ミュウは体力的には虚弱な者が多いが、その意思伝達能力を見込まれて、多少身体が弱くとも優先的に機構に選抜される。
ブルーがミュウを嫌う理由の一つだ。それを八つ当たりだと、彼自身よく理解している。
理解していて、地球に近付くことのできる立場を羨む気持ちが消せない。そのために余計に苛立つ。
悪循環から抜け出せないのは気の毒だとは思うけれど、それはブルーが自分でどうにかするしかない。そしてやはりそのことも、ブルー自身が一番よく分かっているだろう。
そういえば、ここにもミュウなのかと疑われている人がいたんだった。

子供の原因不明の高熱は、しばしば目覚めたサイオンの暴走が原因となっていることがある。
幼い頃のブルーは病弱で、たびたび高熱に悩まされた。それは人間の子供でも珍しくはないことだが、その髪や瞳の色が人とは異なることもあって、散々ESPチェックを繰り返されたと聞いている。
結局度重なるチェックはブルーが人間だということを証明したにすぎないが、同時に幼い心にミュウへの嫌悪を植付けた。
ただでさえ病気の検査があるのに、そこにきてESPチェックまで。
そうして、ブルーはミュウも病院も大嫌いになった。
だが彼がミュウを嫌う最も大きな理由は。

段々と足が鈍るブルーを、結局引っ張る形で医務室の扉を開けたリオは、ぎょっと驚いて後ろに仰け反った。
「すみません!」
くるりと背を向けると、不可解そうな顔をしたブルーと正面から向き合うことになる。
「どうした?顔を赤くして」
「どうかしたんですか、リオ先輩?」
リオの脇からひょいと顔を出した少女に、ブルーも目を見開く。こんなところですぐに再会するなんて思ってもみなかったのだろう。リオだってそうだ。
だが更に驚くことに、彼女はリオを押しのけるように背中を強く押してきた。
「ブルー!医務室に来るなんてどうしたんですか!やっぱり怪我を!?」
「わっ、とと……」
リオを押しのけたジョミーは、ぺたぺたと音を立てる素足で廊下を進んでブルーに詰め寄った。
扉を開けたときの格好のままだ。
「別に。君には関係ない」
「関係ないなんて!さっきのことが原因ならぼくのせいだ!」
「ジョミー!ズボンを履いてください!」
短めの黒いスパッツ姿で白い足を晒していたジョミーに、堪らず肩を掴んで医務室に引っ張り戻す。その膝には赤い血が滲んでいる。ズボンの下で見えなかっただけで、やはりあのとき怪我をしていたのだろう。
「そんな慌てなくても、スパッツ履いてるよ?」
「そ、それはそうですが、そういうことではなく!」
「恥じらいを持ちなさいと言っているのです。手当ての途中ですよ!戻りなさい」
校医に連れ戻されるジョミーとは反対に、廊下に出て扉を閉めるつもりだったリオは、後ろから服を引っ張られて仰け反った。
「ジョ、ジョミー?」
「ぼくの手当てなんてすぐだよ。それよりブルーはどうしたの?どこか怪我してた?」
リオはジョミーに引かれ、ブルーはリオに引っ張られ、結局二人は当初の目的通りに医務室へと引きずり込まれることになった。
No.30 転生話9
そういえばこの話、ナスカっ子たちとシロエは登場予定が決まっているんですが、長老たちがどうなるのかまだ未定です。他のミュウ(キムとかカリナとか)や、テラ側(セルジュやグレイブ)もどうしたものか。

転生話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話




新しい教室で振り分けられていた席は窓際だった。
新入生が多い階下からここまで来ると、注目する視線が少なくなってほっとする。
新学年、新しい教室、新しいクラスメイトの顔ぶれ、そういった適度に騒がしい教室で、ブルーはひとり窓辺から外を眺めていた。
大通りではいくつにも別れる人の波が、ここまでくると一方向に定まって、すべてが校門に吸い寄せられるように流れてくる。
頬杖をついて、目的もなく眺めているつもりだったブルーは、その目が金髪ばかりを追っていることに気づいていなかった。
そうして、わざわざ追って見分ける必要すら、なかったことを知る。

金なんてそんなに珍しい髪の色ではない。
それなのに、笑いながら校門を潜り抜けたその少年だけは、まるで太陽の光をひとり浴びているかのようにキラキラと輝き、振り返るその動きで舞うようになびく。
そこだけが切り取られた絵のように、人込みの中で一際目立つ存在。
振り返り、口元に手を当てて後ろに向かって何かを言っているその絵画の中に、無粋な手が割り込んだ。
ジョミーの首に巻きつくように伸びてきた腕。
連れがいたなんてまったく気づいてなかったブルーは、ジョミーの首に腕をかけて引き寄せ、耳元に何かを囁いた少年にむっと眉を寄せる。
友人らしき少年は片手で自転車のハンドルを押さえているところを見ると、どうやら先ほどの暴走の片割れらしい。
斜め後ろから引き寄せられたジョミーは、自身も少し後ろに身体を倒すようにして、少年の耳に口を寄せた。

二人で、何かを囁き合い、笑い合う。
何がそんなに面白くないのか……今朝は夢見が良くなくて寝不足なので、元から機嫌が悪かった。そこに人から体当たりをされて、胸は痛いし、今なら楽しそうな人物を見るだけで不愉快になるのも無理はない。しかも相手がその加害者ともなればなおさらだ。
不愉快なら目を逸らせばいいと思うのに、何か人目を引くのか友人と肩を組むのをやめて駆け出したジョミーを目で追ってしまう。
そこに校門に駆け込んできたのは、黒髪の友人の弟の友人。
「サム!ジョミー!」
窓越しに、その声が微かに聞えた。
途端にジョミーは肩を竦めて頭を抱えた。だがその表情は悪戯でもして叱られた子供のように、楽しそうだ。
ふと、その右手に白い布が巻かれていることに気づいた。
ジョミーが振り返って、キースに何かを言う。キースは額を押さえて溜息をつく。
その後ろから苦笑いしているリオとマツカがゆったりと歩いて校門を潜ってきた。それに何か気づいたのか、ジョミーは慌てたようにリオの前へと駆け戻る。
深く頭を下げるジョミーに、リオは微笑みながら手を振った。リオからジョミーへ、鞄が手渡される。
並んで校舎へ歩き出した一団から、ジョミーの友人らしい少年が駐輪場へ行くのか自転車を押して離れた。するとキースとマツカがその後を追う。
リオと二人並んで校舎へと歩いていたジョミーは、ふと何かに気づいたように顔を上げた。
ゆっくりと向けられる翡翠の色。
目が、合った。

心臓が跳ねる。
新しい命が芽吹く新緑のような瞳は、まだ15歳になってもいないはずの子供のものとは思えない深い色に見えた。
だがそれは瞬きをする一瞬の出来事で、ジョミーはすぐにくるりと大きな目を丸めた。
そして、両手を交差させながら大きく振る。
それが自分に向けられていると思うほど、ブルーは……。
「怪我、大丈夫ですかー!」
窓ガラス越しの声は不鮮明だったが、確かに聞えた。
自分に向けられているだなんて思いもしなかったのに、どうやらジョミーはブルーに向けて手を振っている。
それでリオも気づいたらしく、こちらに顔を向ける。
途端にブルーは手近にあったカーテンを一気に引いて、外の風景を遮断した。

「なんですか、あの態度は」
教室に上がってきた友人は眉を寄せて、最初から批難の体勢だった。
「……何が」
カーテンを引いて少し陰の差した机で頬杖をついたブルーは、気のない様子で備え付けの端末を弄る。
今年のカリキュラムを組まなくてはいけないので、これは特別おかしな行動でもない。
だというのに、溜息をついた友人は端末の蓋を無理やり閉じた。お陰で危うく手を挟むところだ。
「危ないな」
「せっかくジョミーがあなたに気づいて声をかけたのに、わざとカーテンを引いたでしょう!」
「別に。なんでもないのにいつまでも、面倒だからやっただけだ。あれでこっちの意図は伝わっただろう」
「それに、外でも無理やりジョミーを押しのけて壁にぶつけたりして!」
「わざとじゃない」
「当たり前です!痣にでもなったらどうするんですか。可哀想に!」
いつもはおっとりとしている友人が、珍しく怒りを顕わにしている。リオはブルーの性格も知っているし、そんなに目くじらを立てるほどの危険行為だったわけでもないというのに。
ジョミーがしたことに比べれば、壁にぶつけたくらいかわいいものだ。しかも不可抗力。
「痣くらいなんだ。それに可哀想なのはこっちだ。お陰で肋骨の辺りは痛むし……」
「肋骨?」
聞き返されて、しまったとばかりに頬杖を少しずらして掌に口元を押し付けるようにしながら、端末の蓋を上げる。
画面が点灯する前に、もう一度上から強制的に端末を閉じられた。
「肋骨を痛めたんですか?どうして医務室に行ってないんです!」
「大したことはない。放っておけば……」
「診て貰うだけでも診てもらっておきましょう」
腕を掴まれ、席から引きずり上げられたブルーは、口を滑らせた己を内心で罵らずにはいられなかった。
No.24 転生話8
マツカから見た話。
なかなか入学一日目の朝が終わらない……(苦笑)
今度はブルーが不足してきましたorz


転生話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話




危険な状態だったけれど怪我人は出なかったことで、ほっと胸を撫で下ろして笑っていたマツカは、ふとキースが首を捻っていることに気がついた。
植え込みから引っ張り出したサムの自転車を見て、植え込みを見て、それから来た道を振り返り、また植え込みを見てもう一度首を捻る。
「キース?」
「あ、いや……」
どうかしたのだろうかと問えば、言葉を濁して首を振る。
「……それにしても、随分器用なこけ方だな、サム」
「へ?」
「進行ルートが上手く少し右にずれたから、植え込みが深くて大した怪我をせずに済んだんだぞ。見ろ、直進なら植え込みの切れ目と重なっていた可能性もある」
「あー、ホントだな。俺って運がいいのかな」
「サム……」
呑気なことを言って軽く笑う友人に、キースは額を押さえて溜息をついた。

頭が痛いと言わんばかりのキースとは対照に、サムと同乗していたジョミーという少年はにこにこと笑顔で友人の無傷をからかい混じりに祝っている。
「とにかく!」
キースは眉を寄せて、反省の色の薄い二人の少年を睨みつけた。
「サムと、そちらの……ジョミーだったか?二人は反省文だ。怪我人が出なかったからといって、危険行為だったことには変わらないのだからな」
「えー!そりゃないよ、キース。俺、転入一日目で反省文だなんて、教師に目をつけられちまう!」
「ぼくも……入学早々ってママが『またなの!?』って角を出しそうだ……。と、それに反省文って君は生徒会の人とか?」
「僕は学年代表だ。新学年になってはいるが、新たに選出されるまでは前年度の学年代表がその役目を負う。二年次は僕の管轄だ」
「あー……キースらしいな、学年代表って……」
乾いた笑いを漏らしながらマツカから鞄を受け取ったサムの横で、ジョミーはにっと笑みを浮かべる。
「じゃあぼくは……キース、だっけ?君の管轄じゃない。ぼくは今年入学の一年次生だからね」
「年下か」
「ううん、同い年。でも病気で半年以上休学してた時期があるせいで、一年遅れているんだ」
言いづらいような聞きづらいようなことをサラリと口にして、ジョミーは頬に手を当てて精々残念そうな溜息をついてみせる。
「だからぼくはキースの管轄外だ」
「残念ながら、前年度の学年代表が存在しない一年次は、代表が決まるまでは前一年次の代表が兼任することになる。つまり、僕だ」
「ええ!?」
当てが外れてがくりと膝を崩したジョミーに、キースは目を細めてにやりと笑う。
「サムと、ジョミーと、二人とも反省文と減点だ。減点は溜まるとペナルティーが科せられるから以後は生活態度に気をつけるように」
「そんなあ。キース、俺とお前の仲じゃないか」
「僕は私的に職務を疎かにはしない」
どうにか手心をとお願いしてみる友人に、ふいと顔を逸らしながらキースの表情は普段のトラブルを片付けるときのような苦々しさはない。
今朝は顔を合わせたときから口数も多く、本当にサムが帰って来て嬉しいのだな、と微笑ましく二人を見ていたマツカの耳に、小さな呟きが聞こえた。
「本当に、相変わらず固い男みたいだな」
「え?」
固い男というのがサムのはずはない。まるでキースを昔から知っているような口ぶりの少年に顔を向けると、視線に気づいたジョミーは友人を指差す。
「ああ、サムから色々キースの話は聞いてるんだ。聞いたままのお固さだよ」
ジョミーの声色も表情も、揶揄するようなものではなく、悪戯小僧のように気安い笑みで、マツカも素直に笑い返すことができた。

「さ、そろそろ学校へ向かわないと、遅刻しますよ。学年代表が遅刻では様にならないのではないですか、キース?」
「む、そうですね」
「いけね!」
年下の少年たちのやり取りを微笑ましいという様子で眺めていた兄が腕時計を指差して、サムは慌ててキースがハンドルを持ったままだった自転車の籠に鞄を放り込む。
「この上遅刻まで重なったらしゃれにならない。ジョミーも急げ!」
「分かってるって……って、あれ、ぼくの鞄……あ、ごめんなさい!」
リオが肩に二つ鞄を下げていることに気がついて、ジョミーは慌てて手を伸ばす。だがリオはそれをやんわりと手で制した。
「学校までは僕が運びましょう。まだ興奮状態で、痛みが曖昧になっているでしょう?」
掌から血が出てますよとハンカチを差し出されて、ジョミーは目を瞬いて慌てて自分の右手を見た。
擦り剥いた程度のそれは酷い出血ではないが、リオが指しているのは他にも痛めている箇所があるのに気づいていない可能性の方だ。
「でも……」
ハンカチを受け取ることに躊躇するジョミーにそれを押し付けて、リオはさっさと歩き出した。年少者たちは慌ててその後ろを追いかける。
「それに、先ほどは丈夫が取り得なんて言って、休学するほどの大病を患っていて丈夫もないでしょう」
「ああそれは、謎の高熱が一週間くらい続いたのが原因で、あとの期間は検査が半分、あと別件で骨折して入院してたのが半分。だから大病ってわけでもなくて」
「あの熱は、おばさんがすごく心配してたよな。でも見舞いに行ったら、お前は本当にピンピンしてて、心配し損だったよ。見舞いの品は食い物にしろってごねてたくらいだったし」
「謎の高熱って……サイオンの暴走だったわけではないのですか?目覚めたばかりのときは力が強い子供などは稀にそういうことが起こるでしょう?」
少し心配そうに伺うリオに、ジョミーは目を瞬いてサムと顔を見合わせる。
「ぼく、ミュウじゃないですよ」
「え……!?」
「ホントホント。マツカみたいな繊細さがこいつにあるように見えますか?」
「サァームー?」
拳を握るジョミーに、サムは笑いながら自転車を押して走り出す。
「本当のことだろ!」
「だからって失礼極まりないぞ!」
「サム!ジョミー!少しは懲りろ!この人込みで暴れるな!」
駆けて行く二人を叱るキースに、くすくすと笑っていたマツカは、難しい表情をした兄に気づいて首を傾げる。
「兄さん?」
「あ、いや、なんでもないよ」
すぐにいつもの柔らかい笑みを見せてマツカの頭を軽く撫でたリオは、先に行った三人を追いかけるように歩き出した。
触れた箇所から、珍しく兄の心が零れて聞える。
『ミュウじゃない……本当に?』
はっと顔を上げてその背中に視線を送ったけれど、なぜ兄がジョミーのことをミュウと疑っているのか、理由までは分からなかった。
No.23 転生話7
設定としてまとめていないから、どうしても説明が長くなるのが目下の悩み。
いっそ、こういう世界になってます、でまとめてしまった方が見やすい気もするんですが、そうすると今までの説明部分は無駄シーンになるので全部編集しなくっちゃ、と思うとなかなか思い切れません(苦笑)

本日はジョミーとリオの話でブルーの出番はなし。
中途半端に切れたので、続きも急いでアップしたいです(^^;)


転生話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話




最初は、彼女はミュウに違いないと思ったのだ。
「大丈夫ですか!?」
幼馴染みが乱暴に押しのけたせいで壁にぶつかった少女に怪我はないかと近付く。
確かに先に不可抗力とはいえ暴力的にブルーの上に落ちたのは少女のほうだったけれど、それにしたって謝ってもしもに備えて心配をした相手を、あんな風に押しのけることはない。
歩み寄り、彼女の肩に手を置く。
やはり、彼女の心は読めない。
もちろんリオも普段は人の思考を読まないように心掛けていて、意識して読もうとすることはまずない。だが先ほど、彼女から強い感情が伝わった。
あの感情を名付けることができるとすれば……。
歓喜。
そうとしかいいようがない。
だがただ歓喜と呼ぶには、彼女の心は複雑に捩れていた。
喜びと、恐れと、後悔と、胸を締め付けるような激しい「何か」と、様々な感情が混ざり合い、それは溢れ出る水が渦を作るほどの洪水のような激しさだった。
だがその直後、彼女の心が悲しみで塗りつぶされた……ように感じたが、それが本当に悲しみだったのかは分からない。
そのすぐ後に彼女の感情が見えなくなったからだ。
溢れ出た心にしたって、他の人のようにはっきりと何を考えているかということまでが見えたわけではなく、ただ漠然とした感情が滲んだだけだった。

思念を閉ざすことはミュウにならできる。ミュウと認定された子供はその時点から思念の扱い方について学び、目覚めたばかりの子供でもなければすぐに思念による会話や、逆に思念を閉ざす術を覚える。
だが人間の子供はそうはいかない。
望めば思念波の干渉を拒む術を学ぶこともできるが、そもそも「思念」を肌で知ることができない状態でそれを「閉ざす」という感覚を覚えることは難しい。特に子供は下手をすれば人格形成期の心に悪影響を及ぼす可能性があるとして、本格的に思念の干渉を拒む術を学べるのは十六歳以上と定められている。
それにわざわざ人が思念を閉ざさなくとも、基本的にはミュウの側が勝手に相手の心を読まないようにとガードを施す義務を持つ。それが暗黙の了解ではなく明文化されているのは、人と共に生きて行く上で必要なことだ、と上から説明されている。
だから思念を閉ざす術を学ばずに一生を終える人間も珍しくはない。

彼女は、その閉ざしたはずのリオの思念を震わせるほどの感情を溢れさせた。
あんなに激しい感情に触れたことは生まれて初めてではないだろうか。
だが今こうして見下ろす少女は静かで、読もうとしても欠片も心を感じさせない。こんな風に綺麗に思念を閉ざせる人間の子供はそうはいない。
リオが知る限りでは、一部を除いて激しくミュウを拒絶するブルーが例外としているだけだ。
だからミュウに違いない、と。

振り返った彼女は、翡翠色の瞳を瞬きもさせずにじっとリオを見上げていたが、すぐに柔らかい笑みを零した。
「大丈夫です!ぼくは丈夫で元気なのが取り柄なんですよ。……ずっと、昔から」
「ジョミー!」
ふと、笑みに影が差した気がしたけれど、それを確かめる前に向かう先から少年の怒声が聞こえた。
そちらに首を向けると、息を切らした少年が植え込みからようやく這い出していた。
「お前、自分だけ逃げてーっ!」
「ごめんごめん、サム!ひとり分の体重が減ったらブレーキが効くかもって思ったんだって!」
ジョミーと呼ばれた少女は、友人の少年の方へと駆け出した。
ベージュを基調にした茶色系のジャケット、それとセットのズボン、短く切った髪と、一見すると可愛い少年にしか見えない少女は、力強い走りを見せてますます男の子に見える。
リオはジョミーが落としたままだった鞄を拾って、その後に続いた。
「怪我はない?」
「ねーよ。植え込みがあったから。それよりお前こそ大丈夫か?」
「ぼくは平気。うっかり目測を誤って、人の上に落ちちゃって」
「って、お前、その人は大丈夫なのか!?だ、大丈夫ですか!?」
後から追ってきたリオがそうだと思ったのか、少年は蒼白になってリオを仰ぎ見る。
「ああ、いえ、僕ではありません。ブルーはもう先に行ってしまいました」
土と枝を払いながら立ち上がった少年に軽く手を振って否定すると、少年は溜息をついて頭を押さえた。
「先に行ったってことは、怪我はなかったのかな。お前、名前ちゃんと聞いた?後で一緒に謝りに行こうぜ」
「うん」
「必要ない。ブルーの奴はそういったことは面倒がるだけだ」
植え込みに突っ込んでいた自転車を引っ張り出してたキースがにべもないことを言うが、事実なのでリオも苦笑するしかない。
「サンキュ。キースの知り合いだったのか?なら話は早いや」
「だから必要はないと言っている」
キースは人の話を聞けとばかりに溜息をついて、傍にいた弟はサムという少年の鞄を拾ってやりながらくすくすと楽しそうに笑った。
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