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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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3月3日更新三つ目は教授ブルーと学生ジョミーの話。
とうとう雛祭りから離れましたが、実はこれは予定通りでして……そう、最初に書き間違えたんです(苦笑)
雛祭り祝いというか、これは3月3日という日にちなんだ更新だったのに!
これで時間的にラストかなーと思うのですが、できれば会話だけの短い話でいいからもう一個捻じ込めたら……ともうちょっと頑張ってみます……。

この話は……えー……ブルーがまたやりたい放題。
それでもこの二人はまだ恋人同士じゃありません(ーー;)



「今日は何の日か、分かるかいジョミー」
万年筆を手にくるくると回しながらデスクで微笑む人を見やって、片付けの最中だったジョミーは本を拾う手を止めた。
今日の弁当にはちらし寿司を詰めようと思った理由がそれだったので、考えるまでもない質問だ。つい顔を上げたのは、妹のレティシアならともかくここにいるジョミーにも、そして質問をしてきたブルーにもまるで関係のない話だと思ったからだ。
「雛祭りですね」
「ん?ああ、そういう日でもあったかな」
そういう日でもって。
「違うんですか?」
拾い集めた本をアルファベット順に並べながらジョミーが首を傾げると、ブルーは満面の笑みでデスクから立ち上がる。
「確かに、違わない。だがもうひとつ別の日でもある」
別の日でもとは何があっただろうかと考えながら、並べた本を数冊両手に抱えて本棚の前に移動する。そのすぐ横にブルーが立った。
手伝ってくれるのだろうかと―――元々これはブルーが散らかしたもので、本来片づけを手伝っているのはジョミーだが―――隣に立った部屋主を見上げるのと、相手の指がジョミーの耳を撫でるのはほぼ同時だった。
ブルーは指先で軽く摘んで、人の耳で遊ぶように少し引っ張る。
「……なんですか?」
「耳の日だ」
ああ、3月3日をそんな風に言うこともあったか。昔、3月3日生まれの友達が、女の子の日生まれだとからかわれたときに、そんな反論をしていたことを思い出す。
「で、それがなにか」
両手に本を抱えるジョミーの傍にいるのに、手伝う素振りも見せずにブルーは人の耳で遊ぶだけ。
力は加減されているから痛くはないが、軽く摘んで引っ張って挟んで捏ね回されてでは、さすがに気になる。
「やめてくれませんか」
「ジョミー、僕はこの日に気付いてから、君の耳が気になって仕方がない」
「なんでなんですか!?」
今のところ傷もないし、ちゃんと掃除をして、汚れてもいないはずだ。
本を直す手を止めて勢い込んで振り仰ぐと、ブルーは輝くような笑顔を振りまく。
「なぜって君、こんな美しいフォルムを僕はいまだかつて見たことがない」
「は……?……あ、ちょ……!」
ブルーの指先はジョミーの耳を摘んでいた指を離すと、その形を辿るように柔らかく滑り始める。
たったそれだけの変化なのに、ジョミーは言いようのない奇妙な感覚を覚えて肩を竦めた。
「ちょっと……やめてくださいっ」
両手が本で塞がっていて押し返すこともできない。逃げようと足を引けば、ブルーは斜めに足を踏み出しながら本棚に片手をついて、巧妙にジョミーを追い詰める。
背中を本棚にぶつけて逃げ道はないし、両手は本で塞がっていてブルーの手を止めることもできない。
その間にも指先は外縁を辿り終え、くすぐるような柔らかさで耳の内側を余すことなく探りながら奥の方へとゆっくりと進む。
感覚の鈍い耳朶をくすぐられていたときとは違うなにかが、ジョミーの背筋を緩やかに上る。
「や……な、なに……?」
「美しさを数値で表すのなら、一体どの数値を取ればいいと思う?外周の長さ?それとも耳朶の面積?君のこの美しい頭部とのバランスだろうか。どうしたらこんなに僕の目を魅きつけてならない誘惑を醸し出すことになるのだろう……」
「何を言ってるのか、全然わかりません!」
いつも意味不明なところがあるが、今日のは格別だと力一杯に叫んでみるが、ブルーは理解不能を叫ばれたことなど気にも留めずにジョミーに耳を存分に愛で続ける。
「触れてみると素晴らしいことに手触りまで完璧だ。ほどよい柔らかさも、手に返る耳骨の反発も……ジョミー、もう少し触れてもいいかい?」
「今まで散々触ってるでしょう!?」
もう十分だろうと拒否したつもりだったのに、ブルーは感動したと言わんばかりに目を輝かせる。
「そうか、もう触っていたね」
今更断る必要もないだろう、と言ったように取られた。
「そうじゃなく……てっ」
眼鏡の奥の赤い瞳がゆっくりと降りてきて、近付く顔にジョミーは硬直する。
綺麗だなんて調べたいなら、自分の顔を鏡で見ればいいじゃないか!
思わず身を竦めて強く目を閉じたジョミーの頬に、ブルーの髪が柔らかく触れる。
次いで、柔らかな物で耳朶を軽く挟まれた。
なんだろうと目を開けようとしたところで、軽く食むように擦られたそれが唇であると気がついた。
一体なにをしてるんだ、この人!
指で捏ねられる右の耳と、唇で弄ばれる左の耳。ブルーの暖かい吐息が奥にまで伝わり、背筋を走る感覚に力が抜けそうになる。
目なんて到底開けられない。
震える膝に力を入れて、抱えていた本を強く抱き締めて。
両手が塞がっていたって、いっそ体当たりすればよかったのだと後で気がついたが、このときは覚えのない感覚に押し流されそうになることに抗うことだけで必死だった。
だというのに、新たな感覚を与えられる。
「ひっ……」
ぬるりと熱いものが耳を這う。
ブルーの舌が、耳朶を舐めた。
「いや………だ……」
全身から力が抜ける。身体が熱くなる。
「ジョミー……」
鼓膜を直接震わせる熱い吐息と共に、掠れるほどに小さな声で優しく名前を囁かれて、血が逆流するかと思った。

両手から抱えていた本が滑り落ちた音で、沈みかけていた意識が浮上する。
「も……いい加減にしてくださいっ」
本を取り落としてしまったが、そのお陰で両手が自由になって力を込めてブルーの身体を押し返した。
今度はブルーも逆らわなかった。
「いきなりなんですか!」
「だから君の耳のその造形美の謎に迫ろうと……」
「舐めてなにが分かるんですか!?」
数値だの云々言っていたくせに、実際にやったことといえば指で遊んで唇で挟み、舌で舐めただけ。
左耳を手で押さえると、ブルーの唾液が掌にもついた。
耳の奥。
もう聞えないはずの舌の辿る濡れた音と、柔らかな熱い囁きが、まだ残っているかのようで。
かっと全身が熱を発したかのように熱くなる。
妙に恥ずかしくて赤くなった顔で目の前の、それこそ神秘の美しさを誇るような麗人を睨み付けると、ブルーは軽く指先で顎を擦った。
「味、かな」
「ぜんぜん数値と関係ないじゃないですかーっ!」
ジョミーが思わず繰り出してしまった拳を掌で止めて、ブルーは掴んだ手を軽く引く。
本気ではなかったとはいえ殴りかかろうとしたジョミーは、その軽い誘導でも前へとバランスを崩して、ブルーの腕の中に収まってしまう。
「だが、美味しかったよ」
ごちそうさま。
再び耳に吐息を掛けられて、ジョミーは顔も上げられずにブルーの白衣を握り締めて額を胸に押し付けた。

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