日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.45 太陽の花14(転生話)
Category : 転生話
ちと遅れましたが30日分の更新です。31日分はまた夜に…できればいいな…。
ブルーさん家の家庭の事情……が詳しく出るのはもうちょっと先です。でもその一端はでているかと。
ブルーをつらい状況に追い込むのが好きなわけじゃないはずなんですが、かといって幸せに満たされた生活をしているブルーという想像があまりできないのも事実。ひ、酷いこと言うなあ……。
目次
ジョミーの母に送られて帰宅したブルーに、母は困惑した様子で玄関まで出てきた。
「このたびはうちのジョミーが大変なことを」
「いいえ、そんな……運の悪い事故だったと聞いています。顔を上げてください」
腰を直角に曲げるほどに深々と、親子で並んで頭を下げられて、母はジョミーの母親とジョミーの肩にそっと触れる。
「これ、お詫びにもなりませんけれど……」
顔を上げたジョミーの母親は、子供に預けていた紙袋を手にすると、そのまま母にぐいっと差し出す。
「まあ、そんな!わざわざこんなことまでしていただかなくても……」
「いいえ。事故と言いましてもうちの子供の不注意ですから。もちろん治療費はうちのほうで。それから」
母親に頭を押されて、半分よろめいたジョミーがブルーのすぐ目の前に押し出された。
「登下校や他に何か不自由なことがあったら、この子のことをどんどん使ってくださいね」
「マ、ママ……手…」
「黙らっしゃい!」
頭を押さえつけられたジョミーが僅かに顔をしかめるが、ジョミーの母親は眉を吊り上げる。ともすれば頭に角でも生えて見えそうだ。ジョミーの妹はそれを見て肩を竦めている。まるで、見慣れた光景だとでも言うように。
しかしブルーはそうはいかない。ジョミーがトラブルを起こしやすい生活をしていようと、それとこれとは別の話だ。ブルーはとにかく、傍にいられると調子を崩すジョミーとはあまり関わりたくないのだ。
「ジョミーくんはこちらへ越してきたばかりだと聞きました。自分のことだけでも大変でしょう。僕のことは気にしないでください」
「そんなこと。この子はそんなに繊細ではないし」
「確かに、ミュウなら相手の気持ちを察することに長けているかもしれませんが、その分繊細だと聞き及んでいます。本当に、僕のことは気にしないでください」
ブルーはしれっとして、母がジョミーを敬遠するようなことを口にした。
ミュウ、と。
その言葉でその場にいた全員の表情が変わった。
母は思惑通り強張った。ミュウを嫌う母はそれだけで僅かに一歩後ろに下がる。彼らは心を読まないと決められているのに、まだ心の中を読まれることを恐れているのだ。
だがシン親子は共にきょとんと目を瞬いた。
「あの……あなたの身の回りのお世話をするのはジョミーで、アルテラではないのだけれど」
「え……」
そんなことは言われなくても分かっている。そうではなくて、まるでそれでは。
「ぼく、ミュウじゃないよ?」
ジョミーは自分を指差して軽く首を傾げた。
「ミュウじゃない?」
「うん。一度でもそんなこと言ったっけ……じゃなくて、言いましたっけ?リオ先輩もそんなこと言ってたけど。ESPチェックは悉く空振りで、検査官の人に無駄足だって嘆かれたくらいだし」
「だけど君、僕は名乗ってもいないのに、僕の名前を知っていた……っ」
「リオ先輩が呼んだじゃないですか。『大丈夫ですか、ブルー!』って」
「……そ、う……だったかな……」
あまりにも意外な答えに、ブルーは額を押さえて思い出そうとする。そう言われてみれば、そんな声を聞いた気もする。
あのとき、見上げてきた、鮮やかな新緑色。
あの目、が。
「そうですよ。じゃないとぼくにあなたの名前が分かるはずないじゃないですか。それにたとえぼくがミュウだったとしても、口にされていないことを読むのは禁じられているし、禁じられていなくても勝手に人の心の中を読んだりしませんよ」
ジョミーは呆れたように肩を竦めて同時に首を振るという器用なことをやってみせる。
思い出した瞳に、引き込まれるように思考がそこで完全に止まっていたブルーは、すぐに慌てて頭を振って気持ちを切り替えようとする。
「リオ先輩と友達なのに、ちょっとミュウに偏見がないですか?」
咎めるというよりは、心底不思議そうに首を傾げられてバツが悪くなって目を逸らした。
嫌っているのだからちょっとどころではない偏見だ。そうと自覚のあるブルーは少々居心地悪く、特にジョミーの母親の言葉からミュウだと分かったジョミーの妹のほうは見ることができない。
「そういうつもりでは、なかったんだが」
「ま、いいですよ。嫌ってたらリオ先輩と友達なはずはないし。とにかく、ぼく明日から迎えに来ますね」
「待て、何の話だ?」
「だって鞄を持つのも大変でしょう?」
「まったく大変じゃない。鎮痛薬も処方されたし、固定もしているから然したる痛みは……」
「じゃあまた明日!」
人の話を聞きもしない。ジョミーは明るくブルーにそう言い放つと、ブルーの母に対して母親と共にもう一度丁寧に頭を下げて、ブルーの自宅を辞去した。
「……さっきの子、本当にミュウではないのね?」
「本人がそう言ったならそうなんだろう」
ブルーは玄関まで運ばれた鞄を手に、家に上がる。これを部屋まで運ぶと上がり込まれなくて本当によかった。
「あなた、まだリオ君と一緒にいるのね。連絡もあの子がしてくれたけれど……」
ミュウかもしれないと思えばこの態度だ。こんな母に接すれば、本人が違うとしても妹がミュウのジョミーは嫌な思いをすることになっただろう。どうやら母はあの妹のほうがミュウだということに気づいていない。ジョミーの母親の言葉をしっかりとは聞いていなかったのだろう。幸いだ。
ブルーは母と顔を合わせようともせず、そのまま横を通り過ぎた。どうせ目を向けても母もブルーを見ていない。
だがブルーが横を通るとき、母は少し怯えたように横へと避けた。顕著な反応を示したのは久しぶりだ。ジョミーを遠ざけようと、ミュウの話題を持ち出したりしたからだろう。
自分の子供がミュウかどうかなんて、散々ESPチェックに付き添って、よく知っているだろうに。
「心配しなくても、僕はミュウではないし、いくらミュウでも電話では相手の心まで読めやしないさ」
リオからの電話に対して、感謝よりも怯えるのが先かと冷ややかな目を向けると、見るも分かり易く青褪めていた。さすがに自分の行いを恥じるだけの心はあるようだ。
そんな母を冷たく一瞥するだけで、まっすぐに自分の部屋へと向かおうと階段に足をかけたところで、自分の行動を思い返して顔をしかめた。
実際は違ったから意味をなさなかったが、ミュウであることを利用して母に敬遠させてジョミーを遠ざけようとした自分の行いを恥じたからではない。
その部分もないわけではないが、それ以上にそんなことをしておきながら、母の態度でジョミーがあれ以上の嫌な思いをしなくてよかった、だなんて。
こんな矛盾した話はない。
ブルーさん家の家庭の事情……が詳しく出るのはもうちょっと先です。でもその一端はでているかと。
ブルーをつらい状況に追い込むのが好きなわけじゃないはずなんですが、かといって幸せに満たされた生活をしているブルーという想像があまりできないのも事実。ひ、酷いこと言うなあ……。
目次
ジョミーの母に送られて帰宅したブルーに、母は困惑した様子で玄関まで出てきた。
「このたびはうちのジョミーが大変なことを」
「いいえ、そんな……運の悪い事故だったと聞いています。顔を上げてください」
腰を直角に曲げるほどに深々と、親子で並んで頭を下げられて、母はジョミーの母親とジョミーの肩にそっと触れる。
「これ、お詫びにもなりませんけれど……」
顔を上げたジョミーの母親は、子供に預けていた紙袋を手にすると、そのまま母にぐいっと差し出す。
「まあ、そんな!わざわざこんなことまでしていただかなくても……」
「いいえ。事故と言いましてもうちの子供の不注意ですから。もちろん治療費はうちのほうで。それから」
母親に頭を押されて、半分よろめいたジョミーがブルーのすぐ目の前に押し出された。
「登下校や他に何か不自由なことがあったら、この子のことをどんどん使ってくださいね」
「マ、ママ……手…」
「黙らっしゃい!」
頭を押さえつけられたジョミーが僅かに顔をしかめるが、ジョミーの母親は眉を吊り上げる。ともすれば頭に角でも生えて見えそうだ。ジョミーの妹はそれを見て肩を竦めている。まるで、見慣れた光景だとでも言うように。
しかしブルーはそうはいかない。ジョミーがトラブルを起こしやすい生活をしていようと、それとこれとは別の話だ。ブルーはとにかく、傍にいられると調子を崩すジョミーとはあまり関わりたくないのだ。
「ジョミーくんはこちらへ越してきたばかりだと聞きました。自分のことだけでも大変でしょう。僕のことは気にしないでください」
「そんなこと。この子はそんなに繊細ではないし」
「確かに、ミュウなら相手の気持ちを察することに長けているかもしれませんが、その分繊細だと聞き及んでいます。本当に、僕のことは気にしないでください」
ブルーはしれっとして、母がジョミーを敬遠するようなことを口にした。
ミュウ、と。
その言葉でその場にいた全員の表情が変わった。
母は思惑通り強張った。ミュウを嫌う母はそれだけで僅かに一歩後ろに下がる。彼らは心を読まないと決められているのに、まだ心の中を読まれることを恐れているのだ。
だがシン親子は共にきょとんと目を瞬いた。
「あの……あなたの身の回りのお世話をするのはジョミーで、アルテラではないのだけれど」
「え……」
そんなことは言われなくても分かっている。そうではなくて、まるでそれでは。
「ぼく、ミュウじゃないよ?」
ジョミーは自分を指差して軽く首を傾げた。
「ミュウじゃない?」
「うん。一度でもそんなこと言ったっけ……じゃなくて、言いましたっけ?リオ先輩もそんなこと言ってたけど。ESPチェックは悉く空振りで、検査官の人に無駄足だって嘆かれたくらいだし」
「だけど君、僕は名乗ってもいないのに、僕の名前を知っていた……っ」
「リオ先輩が呼んだじゃないですか。『大丈夫ですか、ブルー!』って」
「……そ、う……だったかな……」
あまりにも意外な答えに、ブルーは額を押さえて思い出そうとする。そう言われてみれば、そんな声を聞いた気もする。
あのとき、見上げてきた、鮮やかな新緑色。
あの目、が。
「そうですよ。じゃないとぼくにあなたの名前が分かるはずないじゃないですか。それにたとえぼくがミュウだったとしても、口にされていないことを読むのは禁じられているし、禁じられていなくても勝手に人の心の中を読んだりしませんよ」
ジョミーは呆れたように肩を竦めて同時に首を振るという器用なことをやってみせる。
思い出した瞳に、引き込まれるように思考がそこで完全に止まっていたブルーは、すぐに慌てて頭を振って気持ちを切り替えようとする。
「リオ先輩と友達なのに、ちょっとミュウに偏見がないですか?」
咎めるというよりは、心底不思議そうに首を傾げられてバツが悪くなって目を逸らした。
嫌っているのだからちょっとどころではない偏見だ。そうと自覚のあるブルーは少々居心地悪く、特にジョミーの母親の言葉からミュウだと分かったジョミーの妹のほうは見ることができない。
「そういうつもりでは、なかったんだが」
「ま、いいですよ。嫌ってたらリオ先輩と友達なはずはないし。とにかく、ぼく明日から迎えに来ますね」
「待て、何の話だ?」
「だって鞄を持つのも大変でしょう?」
「まったく大変じゃない。鎮痛薬も処方されたし、固定もしているから然したる痛みは……」
「じゃあまた明日!」
人の話を聞きもしない。ジョミーは明るくブルーにそう言い放つと、ブルーの母に対して母親と共にもう一度丁寧に頭を下げて、ブルーの自宅を辞去した。
「……さっきの子、本当にミュウではないのね?」
「本人がそう言ったならそうなんだろう」
ブルーは玄関まで運ばれた鞄を手に、家に上がる。これを部屋まで運ぶと上がり込まれなくて本当によかった。
「あなた、まだリオ君と一緒にいるのね。連絡もあの子がしてくれたけれど……」
ミュウかもしれないと思えばこの態度だ。こんな母に接すれば、本人が違うとしても妹がミュウのジョミーは嫌な思いをすることになっただろう。どうやら母はあの妹のほうがミュウだということに気づいていない。ジョミーの母親の言葉をしっかりとは聞いていなかったのだろう。幸いだ。
ブルーは母と顔を合わせようともせず、そのまま横を通り過ぎた。どうせ目を向けても母もブルーを見ていない。
だがブルーが横を通るとき、母は少し怯えたように横へと避けた。顕著な反応を示したのは久しぶりだ。ジョミーを遠ざけようと、ミュウの話題を持ち出したりしたからだろう。
自分の子供がミュウかどうかなんて、散々ESPチェックに付き添って、よく知っているだろうに。
「心配しなくても、僕はミュウではないし、いくらミュウでも電話では相手の心まで読めやしないさ」
リオからの電話に対して、感謝よりも怯えるのが先かと冷ややかな目を向けると、見るも分かり易く青褪めていた。さすがに自分の行いを恥じるだけの心はあるようだ。
そんな母を冷たく一瞥するだけで、まっすぐに自分の部屋へと向かおうと階段に足をかけたところで、自分の行動を思い返して顔をしかめた。
実際は違ったから意味をなさなかったが、ミュウであることを利用して母に敬遠させてジョミーを遠ざけようとした自分の行いを恥じたからではない。
その部分もないわけではないが、それ以上にそんなことをしておきながら、母の態度でジョミーがあれ以上の嫌な思いをしなくてよかった、だなんて。
こんな矛盾した話はない。
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