日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.40 天人とクリスマス(魔性の男)
Category : 小話・短文
短編、魔性の男(ばらいろ すみいれいろパロの話)のクリスマス小話。
ブルーはやっぱり騙してます。色々と……(笑)
「ジョミー、ジョミー!」
ジョミーの姿を探して家中の扉を開けて回ると、ブルーの部屋でベッドにうつ伏せに寝そべりながら両手に顎を置いてマンガを読んでいるところを発見した。
「あ、お帰りブルー」
ゆらゆらと揺れていた足がベッドに落ちて、ベッドに手をつきながら振り返る、その仕草にブルーは緩みそうになる頬をどうにか保つ。
このまま上から覆い被さりたいのは山々だが、今日は別の目的がある。
「ただいま、ジョミー」
腰を屈めてその頬にキスを落とすと、くすぐったそうに片目を閉じたジョミーは、手を伸ばしてブルーを引き寄せ頬にキスを返してくれる。
頬に当てられた唇の感触にブルーは更に機嫌を良くしながら、脱いだコートを椅子にかけてネクタイを解く。
これが「いってらっしゃい、いってきます」と「おかえりなさい、ただいま」の挨拶なのだと教えると、ジョミーはなんの抵抗もなく受け入れた。
嘘は言っていない。この国ではあまり一般的ではないが、家族同士の挨拶である国だってあるのだから。
始め、養父のハーレイは、息子の所業に頭が痛いと額を押さえてよろめいたが、ブラウは喜んで協力してくれた。
つまり、ジョミーが地上に降りてきてからというもの、ハーレイとブラウも挨拶として頬にキスを贈りあう習慣を、ブラウによって定められたのだ。
ブルーとジョミーの視線を気にして抵抗したハーレイは、二人の姿が見えない玄関先でなら、という条件で結局妥協したらしい。
実は嬉しいくせに、とは思っていても口しない自分はできた息子だと思う。
ちなみに妻ではない女性には手の甲にするようにと教えているので、ジョミーがブラウに挨拶をするのは手の甲へのキスで、ハーレイは妻に操を捧げているという言い訳でキスの挨拶は拒絶した。むろん、息子からのプレッシャーに負けてのことだ。
ブルーは制服と学校指定のコートをクローゼットに仕舞いながら、今度は私服のコートを引っ張り出す。
「ジョミー、出かけよう」
「出かけるって、どこへ?」
「どこでも。君が行きたいところはないか?君はいらないといったけど、やっぱり僕は君にプレゼントを贈りたい。今思いつかなくても、街角を見て回れば欲しいものがあるかもしれないよ?」
起きがってベッドに胡座をかいていたジョミーは、軽く首を傾げて頬に指先を当てる。
「でも……ぼくは何も返せないし……」
「別にそんなことを気にしなくても。君はいつも僕にトレーニングをしてくれるのだから、そのお礼と思ってくれたら」
「それだよ。よくわからないけど、くりすます、だっけ?あれのせいでどこに行っても人だらけじゃないか。ブルーの訓練はまだ途中で、ときどきコントロールが効かなくなるだろう?人込みに行って大丈夫?」
ジョミーの危惧に、ブルーはにっこりと微笑む。
実はジョミーはまだ気づいていないけれど、ブルーの力のコントロールは至極順調に進んでいる。
順調でないのは、その振りをしているからだ。
少なくとも、道端を歩いていて突然バラの花束と共に見知らぬ男にプロポーズされたり、電車の中で杖をついたおばあさんに背後から抱きつかれて愛の告白をされたり、通りすがりの園児に離れたくないと腕にしがみ付いて大泣きされるなどという目には遭わなくなった。
ジョミーに落ち零れと思われるのはとても悔しいけれど、コントロールが上手く行くようになったのなら、天上へ行こうとジョミーにせがまれるはめになる。
ブルーはジョミーに詰め寄られて下から上目遣いでお願いされることには弱い。
だったら、最初からせがまれないようにしよう、というのがブルーの狙いで、今のところは上手くいっている。
そういうわけで、ジョミーが訊ねてくる前ほどブルーは人込みも苦手ではなくなっているのだが……。
「大丈夫だよ、ジョミー。君が一緒なら」
「もー!それじゃあブルーの訓練にならないじゃないか!」
ジョミーは頬を膨らませて不平を鳴らすが本気で怒っている様子ではない。
力をコントロールする方法として、ジョミーは初めにブルーと手を繋いだ。
ブルーに触れて力の方向の定め方を、同調して感覚で教えるためとのことで、指を絡めて、心を委ねるようにと言いながら。
以来ブルーはコントロールが苦手な人ということになっている。
「ジョミー」
ブルーが笑顔で手を差し出すと、ジョミーは膨れながらもベッドから降りて手を重ねた。
「クリスマスデートだね」
ブルーが微笑みかけると、ジョミーは軽く首を傾げる。
「くりすますって、家族で過ごす日だって言ってなかった?」
「うん。家族とか、友達とか……恋人とかの日なんだよ」
そうしてそんな日に、指を絡め合って寄り添って、ふたりで歩くのだ。
傍目にどう見えるのかなんて、ジョミーにはわからないかもしれないけれど。
ブルーは手を繋いで一緒に部屋を出ながら、腰を屈めてジョミーの頬にキスをした。
「なに?」
突然のキスに瞬きをするジョミーのにこりと微笑む。
「いってきますのキス」
「一緒に出かけるのに?」
「うん。だからいってらっしゃいのキスを僕からも贈るから」
君からも。
そう言ってもう一度頬にキスをすれば、やっぱりジョミーは背伸びをしてブルーの両の頬にキスを贈ってくれた。
ブルーはやっぱり騙してます。色々と……(笑)
「ジョミー、ジョミー!」
ジョミーの姿を探して家中の扉を開けて回ると、ブルーの部屋でベッドにうつ伏せに寝そべりながら両手に顎を置いてマンガを読んでいるところを発見した。
「あ、お帰りブルー」
ゆらゆらと揺れていた足がベッドに落ちて、ベッドに手をつきながら振り返る、その仕草にブルーは緩みそうになる頬をどうにか保つ。
このまま上から覆い被さりたいのは山々だが、今日は別の目的がある。
「ただいま、ジョミー」
腰を屈めてその頬にキスを落とすと、くすぐったそうに片目を閉じたジョミーは、手を伸ばしてブルーを引き寄せ頬にキスを返してくれる。
頬に当てられた唇の感触にブルーは更に機嫌を良くしながら、脱いだコートを椅子にかけてネクタイを解く。
これが「いってらっしゃい、いってきます」と「おかえりなさい、ただいま」の挨拶なのだと教えると、ジョミーはなんの抵抗もなく受け入れた。
嘘は言っていない。この国ではあまり一般的ではないが、家族同士の挨拶である国だってあるのだから。
始め、養父のハーレイは、息子の所業に頭が痛いと額を押さえてよろめいたが、ブラウは喜んで協力してくれた。
つまり、ジョミーが地上に降りてきてからというもの、ハーレイとブラウも挨拶として頬にキスを贈りあう習慣を、ブラウによって定められたのだ。
ブルーとジョミーの視線を気にして抵抗したハーレイは、二人の姿が見えない玄関先でなら、という条件で結局妥協したらしい。
実は嬉しいくせに、とは思っていても口しない自分はできた息子だと思う。
ちなみに妻ではない女性には手の甲にするようにと教えているので、ジョミーがブラウに挨拶をするのは手の甲へのキスで、ハーレイは妻に操を捧げているという言い訳でキスの挨拶は拒絶した。むろん、息子からのプレッシャーに負けてのことだ。
ブルーは制服と学校指定のコートをクローゼットに仕舞いながら、今度は私服のコートを引っ張り出す。
「ジョミー、出かけよう」
「出かけるって、どこへ?」
「どこでも。君が行きたいところはないか?君はいらないといったけど、やっぱり僕は君にプレゼントを贈りたい。今思いつかなくても、街角を見て回れば欲しいものがあるかもしれないよ?」
起きがってベッドに胡座をかいていたジョミーは、軽く首を傾げて頬に指先を当てる。
「でも……ぼくは何も返せないし……」
「別にそんなことを気にしなくても。君はいつも僕にトレーニングをしてくれるのだから、そのお礼と思ってくれたら」
「それだよ。よくわからないけど、くりすます、だっけ?あれのせいでどこに行っても人だらけじゃないか。ブルーの訓練はまだ途中で、ときどきコントロールが効かなくなるだろう?人込みに行って大丈夫?」
ジョミーの危惧に、ブルーはにっこりと微笑む。
実はジョミーはまだ気づいていないけれど、ブルーの力のコントロールは至極順調に進んでいる。
順調でないのは、その振りをしているからだ。
少なくとも、道端を歩いていて突然バラの花束と共に見知らぬ男にプロポーズされたり、電車の中で杖をついたおばあさんに背後から抱きつかれて愛の告白をされたり、通りすがりの園児に離れたくないと腕にしがみ付いて大泣きされるなどという目には遭わなくなった。
ジョミーに落ち零れと思われるのはとても悔しいけれど、コントロールが上手く行くようになったのなら、天上へ行こうとジョミーにせがまれるはめになる。
ブルーはジョミーに詰め寄られて下から上目遣いでお願いされることには弱い。
だったら、最初からせがまれないようにしよう、というのがブルーの狙いで、今のところは上手くいっている。
そういうわけで、ジョミーが訊ねてくる前ほどブルーは人込みも苦手ではなくなっているのだが……。
「大丈夫だよ、ジョミー。君が一緒なら」
「もー!それじゃあブルーの訓練にならないじゃないか!」
ジョミーは頬を膨らませて不平を鳴らすが本気で怒っている様子ではない。
力をコントロールする方法として、ジョミーは初めにブルーと手を繋いだ。
ブルーに触れて力の方向の定め方を、同調して感覚で教えるためとのことで、指を絡めて、心を委ねるようにと言いながら。
以来ブルーはコントロールが苦手な人ということになっている。
「ジョミー」
ブルーが笑顔で手を差し出すと、ジョミーは膨れながらもベッドから降りて手を重ねた。
「クリスマスデートだね」
ブルーが微笑みかけると、ジョミーは軽く首を傾げる。
「くりすますって、家族で過ごす日だって言ってなかった?」
「うん。家族とか、友達とか……恋人とかの日なんだよ」
そうしてそんな日に、指を絡め合って寄り添って、ふたりで歩くのだ。
傍目にどう見えるのかなんて、ジョミーにはわからないかもしれないけれど。
ブルーは手を繋いで一緒に部屋を出ながら、腰を屈めてジョミーの頬にキスをした。
「なに?」
突然のキスに瞬きをするジョミーのにこりと微笑む。
「いってきますのキス」
「一緒に出かけるのに?」
「うん。だからいってらっしゃいのキスを僕からも贈るから」
君からも。
そう言ってもう一度頬にキスをすれば、やっぱりジョミーは背伸びをしてブルーの両の頬にキスを贈ってくれた。
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