日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.43 太陽の花12(転生話)
Category : 転生話
強引に行く重要さを(前世で)教えたのは最長老様なので、諦めてください(苦笑)
そんな感じの12話目。本当はリオのハンカチから広げようかと思っていたのはここだけの話。
さすがにそれじゃ弱かった(^^;)
目次
「あら……まあ……」
大人しくしない生徒の怪我の具合を連続で診て少し不機嫌の様子だったエラ校医は、小さく声を漏らして呆れたようにブルーに目を向ける。
「よくこれで大したことがないなんて。呼吸をするだけでも痛むでしょう。あなた、友人の忠告はきちんと聞かないといけませんよ」
「え、え?どうしたんですか、先生」
ジョミーが不安に満ちた声でエラの白衣を引っ張り、ブルーは嫌な予感に眉を潜めた。
リオの忠告を聞けといい、大したことないというのが間違いなら、その推測が当たっていたということか。
思わぬ不運の怪我も痛むし面倒だし不愉快だが、それ以上に今にも泣き出しそうな新入生を見ている方が不快だった。
ジョミーに状態を説明しようと口を開いたエラの邪魔をするように、ブルーはベッドに手をついて起き上がる。一瞬痛みに息が詰りかけたが、どうにか堪えた。
「わかりました、すぐに病院に行ってみます。君はもうすぐ入学式だろう。行け」
「いやだ!」
ジョミーは大きく首を振って、追い払うように振ったブルーの手を掴む。
「あなたが怪我をしたって分かってて、向こうに行けって言われたって絶対に行かない!絶対に!」
今までの態度から反論は受けるだろうと思っていた。だがジョミーの反応は予想を上回るほど激しい。
柳眉を逆立て怒鳴りつけられて、怪我をさせられたのはこちらの方なのに、どうしてだか悪いことをした気にさせられる。
ああ、そうか。
ブルーは握られた手にちらりと視線を送った。
ジョミーの手が、僅かに震えているからだ。
もう一度見上げた翠の瞳は、力強く睨みつけているはずなのに、ブルーには涙を堪えているようにしか見えなかった。
その強い視線に、吸い寄せられる。
まるで、澄んだ湖底の深い色。
伸ばしかけた自由の利く手を、ブルーは眉を寄せて握り込んだ。
「あ……『あなた』に……ぼくが怪我をさせるなんて……」
その声が僅かに上擦ったように聞えたのは気のせいだろうか。
ジョミーは深く息をつく。
「サムの安全のことばかりに気を取られて、人がいると気づけないなんて情けない。……ごめんなさい……」
「もう十分に謝ってもらった」
どうしてだろう。彼が落ち込む様子を見るのは、常にないほど苛立つ。
なぜ君が謝る―――怪我をさせたからだ。
どうしてそんなに悲しそうな顔をする―――僕が跳ねつけるからか?
馬鹿馬鹿しい。たかが骨の一本や二本、―――がしたことに比べれば……。
「………誰だ?」
「え?」
痛ましい目をしたまま、ジョミーが聞き返すように首を傾げた。
ブルーは思考の底から意識を戻して、はっと背を伸ばす。途端に痛みが胸に響いた。
「っ……」
「ブルー!」
ジョミーがブルーの手を握り締めた両手に力を込める。
「痛い?苦しい?ごめんね、ごめんなさい。ぼくのせいだ……ぼくはまた……」
握り締める手に、更に力が篭る。
見上げたジョミーの瞳は、悔恨よりも違う色が大きくなっていく。
「エラ先生」
「え、ええ。何かしら?」
「ブルーの怪我は酷いんですか?」
「そうね……きちんと検査したわけではないからはっきりとは言えないけれど、長くてもひと月もあればヒビも完治すると思うけれど」
やっぱりヒビが入っていたのか。
暴力的に人が降ってきたとはいえ、その衝撃をそのまま受けることしかできない筋力のなさが情けない。
ブルーが呆れたのは自分に対してで、このとき既にジョミーに対する怒りや苛立ちはない。
だというのに、ジョミーは両手でブルーの手を握り締めたまま、ずいと身を乗り出す。
「じゃあそれまでの間、ぼくがあなたの身の回りのことをお手伝いします!」
「なぜそうなる」
ブルーは思い切り不賛同を表したというのに、ジョミーはぎゅうぎゅうと握り締めた手から力を緩めようともしない。
「だって、ぼくのせいで怪我をしたんだから、当然でしょう!」
「少しも当然だとは思わない。別に腕や足を骨折したわけじゃない。日常生活に障りはない」
「じゃあまず病院に行きましょう。ぼく付き添います。治療費のこともあるし……そうだ、ママに連絡しなくちゃ」
「わかった、治療費を払うというなら、後でまとめて請求する。謝罪も受けた、もうそれでいい!」
出逢って僅か数十分。接触した時間に直せばたかが数分。
たったそれだけで、ジョミーには調子を狂わされてばかりいる。これ以上関わるなんてごめんだ。
そんなブルーの切実な叫びは、使命感に燃える少年にあっさりと聞き流された。
「リオ先輩、ブルー……先輩の家へ連絡したいんですけど、番号わかりますか?」
「ええ、わかりますよ。僕が連絡しておくから、君はブルーを病院へ連行してください」
「連行ってなんだ、リオ!」
「その人、病院がすごく嫌いなんですよ。逃がさないでくださいね」
「わかりました!」
どうして君たちが連携するんだ。
納得できないままジョミーに手を引かれてベッドから降りる。
やることを決めたことでジョミーは気落ちを払えたようで、それだけがブルーの苛立ちを小さくさせた。
そんな感じの12話目。本当はリオのハンカチから広げようかと思っていたのはここだけの話。
さすがにそれじゃ弱かった(^^;)
目次
「あら……まあ……」
大人しくしない生徒の怪我の具合を連続で診て少し不機嫌の様子だったエラ校医は、小さく声を漏らして呆れたようにブルーに目を向ける。
「よくこれで大したことがないなんて。呼吸をするだけでも痛むでしょう。あなた、友人の忠告はきちんと聞かないといけませんよ」
「え、え?どうしたんですか、先生」
ジョミーが不安に満ちた声でエラの白衣を引っ張り、ブルーは嫌な予感に眉を潜めた。
リオの忠告を聞けといい、大したことないというのが間違いなら、その推測が当たっていたということか。
思わぬ不運の怪我も痛むし面倒だし不愉快だが、それ以上に今にも泣き出しそうな新入生を見ている方が不快だった。
ジョミーに状態を説明しようと口を開いたエラの邪魔をするように、ブルーはベッドに手をついて起き上がる。一瞬痛みに息が詰りかけたが、どうにか堪えた。
「わかりました、すぐに病院に行ってみます。君はもうすぐ入学式だろう。行け」
「いやだ!」
ジョミーは大きく首を振って、追い払うように振ったブルーの手を掴む。
「あなたが怪我をしたって分かってて、向こうに行けって言われたって絶対に行かない!絶対に!」
今までの態度から反論は受けるだろうと思っていた。だがジョミーの反応は予想を上回るほど激しい。
柳眉を逆立て怒鳴りつけられて、怪我をさせられたのはこちらの方なのに、どうしてだか悪いことをした気にさせられる。
ああ、そうか。
ブルーは握られた手にちらりと視線を送った。
ジョミーの手が、僅かに震えているからだ。
もう一度見上げた翠の瞳は、力強く睨みつけているはずなのに、ブルーには涙を堪えているようにしか見えなかった。
その強い視線に、吸い寄せられる。
まるで、澄んだ湖底の深い色。
伸ばしかけた自由の利く手を、ブルーは眉を寄せて握り込んだ。
「あ……『あなた』に……ぼくが怪我をさせるなんて……」
その声が僅かに上擦ったように聞えたのは気のせいだろうか。
ジョミーは深く息をつく。
「サムの安全のことばかりに気を取られて、人がいると気づけないなんて情けない。……ごめんなさい……」
「もう十分に謝ってもらった」
どうしてだろう。彼が落ち込む様子を見るのは、常にないほど苛立つ。
なぜ君が謝る―――怪我をさせたからだ。
どうしてそんなに悲しそうな顔をする―――僕が跳ねつけるからか?
馬鹿馬鹿しい。たかが骨の一本や二本、―――がしたことに比べれば……。
「………誰だ?」
「え?」
痛ましい目をしたまま、ジョミーが聞き返すように首を傾げた。
ブルーは思考の底から意識を戻して、はっと背を伸ばす。途端に痛みが胸に響いた。
「っ……」
「ブルー!」
ジョミーがブルーの手を握り締めた両手に力を込める。
「痛い?苦しい?ごめんね、ごめんなさい。ぼくのせいだ……ぼくはまた……」
握り締める手に、更に力が篭る。
見上げたジョミーの瞳は、悔恨よりも違う色が大きくなっていく。
「エラ先生」
「え、ええ。何かしら?」
「ブルーの怪我は酷いんですか?」
「そうね……きちんと検査したわけではないからはっきりとは言えないけれど、長くてもひと月もあればヒビも完治すると思うけれど」
やっぱりヒビが入っていたのか。
暴力的に人が降ってきたとはいえ、その衝撃をそのまま受けることしかできない筋力のなさが情けない。
ブルーが呆れたのは自分に対してで、このとき既にジョミーに対する怒りや苛立ちはない。
だというのに、ジョミーは両手でブルーの手を握り締めたまま、ずいと身を乗り出す。
「じゃあそれまでの間、ぼくがあなたの身の回りのことをお手伝いします!」
「なぜそうなる」
ブルーは思い切り不賛同を表したというのに、ジョミーはぎゅうぎゅうと握り締めた手から力を緩めようともしない。
「だって、ぼくのせいで怪我をしたんだから、当然でしょう!」
「少しも当然だとは思わない。別に腕や足を骨折したわけじゃない。日常生活に障りはない」
「じゃあまず病院に行きましょう。ぼく付き添います。治療費のこともあるし……そうだ、ママに連絡しなくちゃ」
「わかった、治療費を払うというなら、後でまとめて請求する。謝罪も受けた、もうそれでいい!」
出逢って僅か数十分。接触した時間に直せばたかが数分。
たったそれだけで、ジョミーには調子を狂わされてばかりいる。これ以上関わるなんてごめんだ。
そんなブルーの切実な叫びは、使命感に燃える少年にあっさりと聞き流された。
「リオ先輩、ブルー……先輩の家へ連絡したいんですけど、番号わかりますか?」
「ええ、わかりますよ。僕が連絡しておくから、君はブルーを病院へ連行してください」
「連行ってなんだ、リオ!」
「その人、病院がすごく嫌いなんですよ。逃がさないでくださいね」
「わかりました!」
どうして君たちが連携するんだ。
納得できないままジョミーに手を引かれてベッドから降りる。
やることを決めたことでジョミーは気落ちを払えたようで、それだけがブルーの苛立ちを小さくさせた。
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