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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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またダブルパロ(^^;)
緋色の椅子パロ。ジョミシン書きたい……とか思ったら我慢できなくなりました。
いや、ブルジョミなんですが、緋色パロだとジョミシンっぽくもあっていいよね、と……。
前後編の前編。続きはすぐに。



ぼくはブルーがいてくれたら他には何もいらなかった。
ブルーが傍に居て、笑ってくれるならそれだけで、お腹一杯の食事も、綺麗な服も、薪の量を気にしない赤々と火を灯した暖かい部屋も、いらなかった。
ただブルーがいてくれたら。
そんなこと、いつでも言えると思っていたんだ。
ずっと隣にいたから。


「ジョミー……ここでお別れだ」
後ろに背の高い体格の良い男を従えて、ブルーはまっすぐにジョミーを見て言った。
ジョミーは激しい動悸に胸を押さえて服を握り締める。
ブルーの瞳に迷いはない。
偶然聞いてしまった話。
ブルーの後ろに立つ男は、ハーレイとその名を名乗ると、ブルーの前に膝を着いて頭を垂れて言った。
「お迎えに上がりました、ブルー様。あなたこそ、国王陛下の血を引く唯一のお方。どうぞ私と一緒に王都へ。そして緋色の玉座をその手に」
ブルーは辺境の片田舎のアタラクシアでジョミーと一緒に育った、ただの子供のはずだ。だが纏う雰囲気が、他の誰とも違い気高く清廉であったことも、否定できない。
赤ん坊を抱えてひとり村に流れ着いたブルーの母親。
では、父親は?
木陰で偶然話を聞いてしまったジョミーは、声もなく立ち尽くしていたのに、ブルーはまるで初めからそこにジョミーがいることを知っているように振り返り、そして言った。


荷車に揺られてうとうとと居眠りをしていたジョミーは、五年前の記憶の夢から目を覚ました。
「おーい坊主、もうすぐ王都だぞ」
目を覚ましたところで、前の粗末な御者台から声を掛けられる。途中で道行が同じだからと、荷台に乗せてくれた男の声に、ジョミーは髪についた藁を払い落としながら起き上がる。
「……随分賑やかだ。さすが王都だな」
王都が近くなった道中は、行き交う人も多くジョミーが乗せてもらっている他にも幌をつけた立派な荷馬車がたくさん走っている。
「最近はな。以前は王都周辺も荒れたもんだったよ。この間即位した新国王が、王位継承者として現れてから良くなったのさ」
新国王。
夢に見たばかりのことに、ジョミーは胸を震わせる。
「しかしいい時期に来たな、坊主。もうすぐブルー陛下のお披露目がある。この日ばかりは俺たち民草にも姿をお見せくださるから、上手くすれば坊主も一目だけでも拝見できるかもしれないぞ」
「………うん、そうだね」
ジョミーは涙を堪えて頷いた。

彼は約束を守った。本当に即位を果たした。
五年前、村を出るときに彼は言った。
「ジョミー、僕は王都へ行く。行って必ず緋色の椅子を手に入れる。そして君の元まで、僕の名前を伝えてみせるよ」
ジョミーは開放された王宮の前庭に進みながら、果たされた約束に小さく笑みを浮かべた。
王宮のバルコニーから国民に顔を見せるという、たった一瞬。その一瞬のためにここまで来た。
五年間、王都までの旅費を貯めるために必死に働いたのも、剣の腕を磨いて村の小さな武術大会の大した額でもない賞金も貯めたことも、すべてはこの一瞬のため。
彼が王となり、この王宮で幸せに暮らすのだと確認したら、それでもう満足だ。村に居たとき、ブルーはそんなに身体が丈夫ではないのにいつもジョミーを守ってくれた。
だから、彼が幸せになるならそれでいい。

人の押し合う前庭で、ジョミーがそっと微笑んでいると周囲がわっと騒がしくなる。
「陛下だ、新王陛下だ!」
「ブルー陛下万歳っ!」
次々と周囲から上がる歓声に、ジョミーはゆっくりと顔を上げる。一目ブルーの顔を見たら、すぐにアタラクシアへ帰ろう。もう、手の届かない人なのだから。
あの美しい銀の髪と赤い瞳を求めてバルコニーを見上げたジョミーの目に映ったのは、自分と同じ金の髪と緑色の瞳をした青年の姿だった。
ブルーではない青年が、王の服を纏い、微笑みを浮かべて手を振って歓声に応えている。後ろに控えているのはあの時村にブルーを迎えに来たハーレイだ。
「だ………っ」
ジョミーの背中を、駆け抜けた激情。
「誰だ、お前えぇーっ!!」


「くそっ!どういうことだっ!」
歓声にかき消されたはずのジョミーの声を、青年は確かに捉えた。
一瞬だけだが、確かにジョミーをまっすぐに見て、そして顔色を変えた。間違いない、彼はジョミーに気づいていた。
ブルーの名を騙る偽物に詰め寄ってやりたくても、王宮の前庭に集まった民衆は王のお披露目が終わると例外なく追い出され、隙を突くことすらできなかった。
王宮の周りをぐるぐると徘徊しながら、どうにか忍び込めないかと隙を探すが、当たり前だがそんな隙など見つけるはできない。
「ジョミー」
耳に残る優しい声。
繋いだ手の暖かさを覚えている。
ジョミーと同じように泥まみれで働いていても、綺麗な人だった。銀の髪も、赤い瞳も大好きだった。
―――ブルー。君が幸せになると信じたから、あの時見送ったのに。
滲みかける涙を拭い、必ず真意を確かめると城を見上げる。
仇を射るように城を睨み付けるジョミーは、大きく息を吐いてもう一度城に忍び込む手を捜すために踏み出した。
「ジョミー」
低い男の声に、驚いて振り返る。
聞き覚えがあると思った通り、立っていたのはブルーを迎えに来て、偽のブルーの傍に立っていた男。
「ハーレイさん……」
「……陛下がお待ちです。こちらへ」
それは誰のことだ。
ジョミーが強く睨みつける視線に、ハーレイは目を伏せて何も言わずに先に立って歩き出した。
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