忍者ブログ
忍者ブログ / [PR]
日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
[109]  [108]  [107]  [106]  [105]  [104]  [102]  [100]  [99]  [98]  [97
No. [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

予定したこところまで進んでなかったのを忘れていた(汗)
ようやく本編で彼の登場です。


目次




結果的にキースに押し付けられた形になったローラー靴を鞄に押し込めて、ブルーは愉快ならざる気持ちで教室へ上がった。
教室で次の授業の用意をしていたリオは、遅刻してきたブルーが不機嫌であることにすぐに気づいたようだったが、特に何も言ってくることはなかった。もしかすると薬が原因が、それとも嫌いな病院に行かざるを得なかったせいだと思っていたのかもしれない。
だが今日は大した痛みに悩まされることもなく、薬を飲んでいないので眠気に襲われることもない。
ただし、眠気はなくとも意識の大半は鞄に押し込めたローラー靴の持ち主へ持っていかれていたから、あまり授業はまともには聞いていなかった。
不思議な夢を見た翌日に、ブルーが痛めた箇所と同じ部分をジョミーも痛めているらしい……。
偶然にしてはあまりにも不自然と思えるが、しかし偶然というより他に言いようがない。
頬杖をついて、ぼんやりと外を眺める。
窓の外を眺めている視線が、いつの間にか別館の校舎の方へと向いていることにブルーは気づいていなかった。

その金の髪を視界の端に捉えたのは、リオと共に昼休みに食堂に向かう途中でのことだった。
ジョミーは校庭を挟んだ向こうの渡り廊下を友人と歩いていた。進行方向からいってあちらも食堂に向かっているらしい。
ではそこで会うだろうから、キースの話していたことを訊ねてみようと、珍しくブルーの方から声を掛けるつもりで食堂に入った。
注文のためにカウンターに並びながら入口を気にしていると、渡り廊下の向こうでジョミーと一緒に歩いていた一年生たちが入ってくる。だがその中にジョミーに姿は見当たらない。
「ブルー?」
同行者に断りもなく列を離れたことで不思議そうに声を掛けられたが、そのまま一年生の集団の方へ歩み寄る。
「すまない、少しいいかな」
盆を手に取り何を食べるかと話していた一年生たちは、揃って振り返って同時に驚愕したようにびくりと震える。
「なんでしょうか」
急に上級生に声を掛けられて驚き固まっていた一年生たちの中で、ブルネットの髪とアメジスト色の瞳が印象的な少年だけが落ち着いた様子で答えを返す。どうやら彼はブルーが上級生だということを特に気にもしていないようだ。
「君たちは先ほど、ジョミーと一緒にいたと思うのだが、彼は食堂へ来ないのか?」
少年の眉が僅かに動いた。
それが不快の表情であったことにブルーが驚いていると、応対したはずなのに答えない少年に友人たちが顔を見合わせて、そのうちの一人が代わって食堂の入口を指差す。
「ジョミーなら、今日は腹が痛いから食べるのはやめておくって。さっき廊下で別れたんですけど」
「そうか……分かった、ありがとう」
放課後まで待てばどうせジョミーの方からやってくる。
そうと分かっていても、どうにも気になる。
今朝もジョミーは腹痛だと言っていたが、本当に痛めている箇所は胸だとキースは言っていた。どうしてジョミーが痛む箇所を誤魔化すのか分からない。あるいはキースが勘違いしているだけだろうか。
「ブルー」
次に順番がきていたようで、振り返るとリオがカウンター上のメニューボードを指差している。
何を頼むのか尋ねる友人に、手を振っていらないと示すと食堂を出ようと背を向けた。
「あ、ブルー!」
急な行動にさすがに驚いてはいたようだが、リオはブルーの気まぐれに慣れている。それ以上引き止められるはずもなかったのだが、意外なところから呼び止められた。
「あんまりジョミーを煩わせないで欲しいな」
いかにも気に食わないという態度を隠そうともしない不快を滲ませた声にブルーが首を巡らせると、先ほどのブルネットの少年が目を細めて顎を逸らすようにしてブルーを睨めつける。
「……煩わせる?僕が、か?」
「そう。ここにあなた以外にジョミーに手を掛けさせている人が他にいますか?」
「お、おいシロエ」
上級生に向かってはっきりと批判してみせた少年に、友人たちが慌てたように少年の腕を掴む。
「ならそれは彼に言えばいい。僕が頼んでいるわけではない」
少年の眉が再び震えて、大きな瞳には敵愾心が顕わになる。
「ジョミーのこと、何も見えていないくせに。ジョミーの興味だけは引っ張って行く。性質が悪い」
「おいシロエ!」
言うだけ言うと、ふいと背を向けてカウンターに向かう少年に、友人たちは慌てたように少年の背中と、表情を綺麗さっぱりとなくしたブルーを交互に見て、慌てて友人を追い掛ける。
不愉快を隠そうともしない少年に、ブルーも気分が悪くなってさっさと食堂を後にした。

ジョミーの友人だかなんだか知らないが、あんなことをブルーが言われる筋合いはない。
送り迎えも鞄持ちも必要ないと言っているのに、何かと世話を焼きたがるのは罪悪感に駆られたジョミーが勝手にすることだ。むしろブルーは何度も断っている。
ムカムカと腹の底から湧きあがる不快感に壁を蹴りつけたくなったが、それで足を痛めでもしたら馬鹿馬鹿しい。
蹴りつけるように荒い足取りで砂を僅かに舞い上げたブルーは、怒りのあまりどこに向かうか考えもしないで歩いていたことにようやく気づいた。
適当に歩いているうちに本館と別館の間の人気の少ない小さな中庭に出ている。
後から建てた別館との兼ね合いで出来たデッドスペースに、木を植えてその下にベンチを置いただけのそこは、いつでも日陰になっていて人がくることはほとんどない。
そのベンチに俯き加減に腰を掛けていた金の髪の少年が、人の気配にゆっくりと顔を上げた。
ジョミーがどこにいくかも知らなかったのに、どういう偶然だろう。
探していた姿を見つけたのにそこにぼうっと立ち尽くすブルーと視線を合わせると、ジョミーは驚いたように目を丸めた。
PR
Name
Title
Color
Mail
Web
Message
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
10
・・
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
・・
12