日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.98 安からな眠りと楽しい目覚め
Category : 小話・短文
ジョミシンの合間のちょっとした息抜き(記事の頭に別ジャンルのあの話題というのもあれですし^^;)
連載は先のことまで考える余裕が今はないので突発小話。
……というかですね、別ジャンルのサイト様の義理親子にうっかり萌えちゃっただけなんですが(笑)
ああいう付かず離れずな徐々に階段を昇って仲良くなっていく素敵な話は書けないので、10段くらい抜かした捏造親子。
ジョミーがブルーの養子になるパラレルです。
書き終わってみたら、あんまり義理親子である意味がなかったことに気づきました。またか……。
突発なんで唐突に始まり、続きません。
「ジョミー、おめでとう!」
「この家からシャングリラ侯爵家の養子が選ばれるなんて、こんな名誉なことはありませんよ!」
「幸せになってね、ジョミー」
「手紙書けよ!」
アルテメシアにある『心の平穏の家』からそんな風に送り出されたのは三年前、十一歳のことだった。
馬車に揺られて遠ざかる住み慣れた『家』。
これから先への期待と不安に胸をいっぱいにしながら振り返ったそのときだけは、別離の寂しさにほんの少しだけ涙した。
久々に友人たちやお世話になった先生たちを夢に見たジョミーは、薄暗い部屋で目を擦った。どうやら夜中に目が覚めてしまったらしい。手の甲を濡らすものに驚いて瞬きを繰り返す。
泣いているのは郷愁か。
そんなもの、感じる暇もないくらいに愛されているというのに。
つい寝返りを打ってしまって、身を固くする。傍らで眠る人を起こしていないだろうかと恐る恐ると伺うと、規則正しい静かな寝息が聞えた。
ほっと息をついて、己を囲うようにして眠る男の寝顔を見上げる。
薄暗い部屋では元より色なんてはっきりとは判別できないにしても、彼の真紅の瞳が今は白い瞼に覆われていることがひどく残念だった。
朝になればその瞳を見ることも出来ると、もう一度眠りに就こうとしてはたと気づく。
今日はこの人は隣の市へ泊りがけで出かけて帰らないと聞いていて、だからこそ久々にこの人の寝室ではなく自分の寝室へ引き取ったはずだった。
どうしてここにいるのだろう。
ジョミーが養父であるこの人と一緒に眠る習慣は、この邸に迎えられた日からずっと続いていることなので、このときジョミーが抱いた疑問は、いないはずの人が邸に帰ってきていたという一点についてのみのことだった。
邸に迎えられた当日、胸が張り裂けそうなほどの緊張で訪れた先の主は、急用で不在だった。
出迎えてくれた執事のハーレイは、主が非常に残念がっていたとだけ伝えたが、それをより詳しく説明してくれたのは、その後ジョミーを部屋まで先導してくれた使用人のリオと言う青年だ。
「ソルジャーはあなたを自ら出迎えることができなくなるから、行かないとわがままを仰られたくらいだったのですよ」
この家では、主のことを旦那様でもご主人様でもなく、敬愛を以って「ソルジャー」と呼ぶのだと教えられたのもこのときだ。
「え、えっと……」
それは光栄ですというべきなのか、子供じゃないんだからと呆れるべきか、そもそも大の大人が行きたくないだなんて駄々を捏ねる姿が想像不可能で、会ったことのない養父の人物像がジョミーの中で迷走していた。
結果としてこのときジョミーが結論付けたのは、リオがジョミーの緊張を解そうと大袈裟に茶目っ気を利かせたのだろうということだった。
シャングリラ侯爵がジョミーを歓迎しているのだと、そういう意味なのだろうと。
そんな風に話すリオの表情を見ているだけで、侯爵の人となりが見えてくるようでジョミーの中のある種の恐れは小さくなった。
「明日にはお帰りの予定です。それまでジョミー様はゆっくりとお寛ぎください。今日は長旅の疲れもおありでしょう」
結局そんなリオの気遣いは無用だったかのように、ジョミーは疲れなど微塵も感じさせることなく、主が不在の邸を案内してもらって、新しい家の広大さに眩暈を起こしそうになってその日は終わった。
用意されていたジョミーの部屋だという、やたらと広い部屋のやたらと広いベッドに飛び込む。
部屋もベッドも広すぎて落ち着かない。どうにかもう少し普通の部屋に替えて貰えないだろうかと明日、養父にお願いしてみようか。けれど好意を無にしたと不愉快にさせたらどうしようと、明日のことに思いを馳せているうちに、落ち着かないなりに眠りに落ちた。
緊張があったからか、夜中に目が覚めた。
月明かりだけの部屋でベッドの傍らに人影が見えたが、孤児院の大部屋で生活していたジョミーは夜中の人影に驚かない。
「……トォニィ……?それともタージオンか?そんなところでどうした?」
夜中に目が覚めたと彼らがジョミーのベッドに狭いのに無断で潜り込んでくることはよくあったことで、ジョミーは何の疑問も持たずにブランケットを捲くった。
「ほら、来いよ。恐い夢でも見たのか?」
人影は戸惑うように揺れただけで、ベッドに入ってこようとはしない。
兄弟同然で育った年少者たちには珍しい遠慮に、ジョミーは欠伸を噛み殺して自らの傍らを叩いた。
「早くしろって。寒いだろ。入らないなら、自分のベッドに戻れ」
「………入って、いいのかい?」
半ば以上寝惚けていて、遠慮がちの声が聞き覚えのないものだとは気づきもしない。そうして、やはり寝惚けていたから、孤児院ではありえなかったことを口にしても疑問にも思わなかった。
「いいよ。このベッド広すぎてひとりだと落ち着かない。眠れないなら、ぎゅっとしてやるから……」
そうベッドを軽く叩くと、人影が闇に馴染むようにすぐ隣に滑り込んできた。
やってやると口にしたから、トォニィたちが喜ぶようにと、ぎゅっと抱き締める。
「………なんか、お前も大きくなったな……」
トォニィかタージオンがタキオンがコブか分からないけれど。髪の手触りからするとタキオンだろうか……。
うつらうつらとしながら、ジョミーは抱き寄せた髪に顔を埋めた。
「それに、いい匂い……あー……なんか、ぼくのほうが落ち着……」
「おはよう、ジョミー」
目を開けると、カーテンの隙間から入る朝の優しい陽射しの中で、養父の優しい笑顔がすぐ傍にあった。
留守のはずの人がいることに疑問を持ったまま、もう一度眠ったらしい。
「おはようございます……ブルー……」
目を擦りながらもぞもぞと身動きをすると、軽く額に口付けを贈られる。
くすぐったそうに身を竦めながら、ジョミーはくすくすと笑いを零して養父に強く抱きついた。
「お帰りなさい。昨日はいつ頃に帰って来たんですか?夜中に目が覚めたら隣にいて、びっくりした」
「ただいま。ジョミーに会いたくて、夜を徹して戻ってきたんだ。広いベッドだと落ち着かないだろう?」
そう笑ったのは、ブルーも初めて会った朝のことを思い出したからだろう。
朝、目を覚ますと知らない男を抱き締めていたなんてこと、きっと人生最初で最後の経験に違いない。
知らない、けれど見たこともないほどに綺麗な男は、寝乱れた姿も絵画のようで、驚いて声も出ないジョミーに微笑み挨拶をした。
「おはよう、ジョミー。よく眠れたようで何よりだ。僕も君の心音を聞きながら穏やかに眠ることができたよ」
「え?ええ?あ、あれ?え!?」
乱れた寝癖もそのままに、首を傾げ、左右を見回して居場所を確かめ、また首を傾げるジョミーに男は楽しげに笑う。
「初めまして、僕のジョミー。僕はブルー。書類上は少し前から、そして今日から本当の君の家族になる。君が来てくれる日を心待ちにしていたんだよ」
「…………へ?」
明日からあなたのお父上はブルー・シャングリラ侯爵になるのですよ。
そう言い聞かされていて、しかも目の前で挨拶をされたというのに、それでもジョミーはその若すぎる侯爵を前に、ただ呆然と目を瞬いていた。
「それとも、もうさすがに広いベッドにも慣れてしまっただろうか?」
広すぎて落ち着かないなら慣れるまで僕の部屋で一緒に眠ろう……三年前、当たり前のように告げたブルーは、本当にその日の夜からジョミーを自分の寝室へと連れ込んだ。
結局それが習慣となってしまって、以来三年。ジョミーは自分の部屋では数えるほどしか夜を過ごしていない。
「慣れようがないですよ。だってずっとあなたと眠ってるのに」
「そうか。では今日も僕の部屋へおいで。一緒に眠ろう」
十四歳にもなって、と眉を潜めるのは教育係のエラとゼルで、養父はちっともジョミーを一人で寝かせるつもりはないらしい。
「夜の話はあとで。今は朝ですよ」
まずは一緒にご飯を食べましょう。
そうジョミーが誘いかけると、ブルーは嬉しそうに微笑んだ。
連載は先のことまで考える余裕が今はないので突発小話。
……というかですね、別ジャンルのサイト様の義理親子にうっかり萌えちゃっただけなんですが(笑)
ああいう付かず離れずな徐々に階段を昇って仲良くなっていく素敵な話は書けないので、10段くらい抜かした捏造親子。
ジョミーがブルーの養子になるパラレルです。
書き終わってみたら、あんまり義理親子である意味がなかったことに気づきました。またか……。
突発なんで唐突に始まり、続きません。
「ジョミー、おめでとう!」
「この家からシャングリラ侯爵家の養子が選ばれるなんて、こんな名誉なことはありませんよ!」
「幸せになってね、ジョミー」
「手紙書けよ!」
アルテメシアにある『心の平穏の家』からそんな風に送り出されたのは三年前、十一歳のことだった。
馬車に揺られて遠ざかる住み慣れた『家』。
これから先への期待と不安に胸をいっぱいにしながら振り返ったそのときだけは、別離の寂しさにほんの少しだけ涙した。
久々に友人たちやお世話になった先生たちを夢に見たジョミーは、薄暗い部屋で目を擦った。どうやら夜中に目が覚めてしまったらしい。手の甲を濡らすものに驚いて瞬きを繰り返す。
泣いているのは郷愁か。
そんなもの、感じる暇もないくらいに愛されているというのに。
つい寝返りを打ってしまって、身を固くする。傍らで眠る人を起こしていないだろうかと恐る恐ると伺うと、規則正しい静かな寝息が聞えた。
ほっと息をついて、己を囲うようにして眠る男の寝顔を見上げる。
薄暗い部屋では元より色なんてはっきりとは判別できないにしても、彼の真紅の瞳が今は白い瞼に覆われていることがひどく残念だった。
朝になればその瞳を見ることも出来ると、もう一度眠りに就こうとしてはたと気づく。
今日はこの人は隣の市へ泊りがけで出かけて帰らないと聞いていて、だからこそ久々にこの人の寝室ではなく自分の寝室へ引き取ったはずだった。
どうしてここにいるのだろう。
ジョミーが養父であるこの人と一緒に眠る習慣は、この邸に迎えられた日からずっと続いていることなので、このときジョミーが抱いた疑問は、いないはずの人が邸に帰ってきていたという一点についてのみのことだった。
邸に迎えられた当日、胸が張り裂けそうなほどの緊張で訪れた先の主は、急用で不在だった。
出迎えてくれた執事のハーレイは、主が非常に残念がっていたとだけ伝えたが、それをより詳しく説明してくれたのは、その後ジョミーを部屋まで先導してくれた使用人のリオと言う青年だ。
「ソルジャーはあなたを自ら出迎えることができなくなるから、行かないとわがままを仰られたくらいだったのですよ」
この家では、主のことを旦那様でもご主人様でもなく、敬愛を以って「ソルジャー」と呼ぶのだと教えられたのもこのときだ。
「え、えっと……」
それは光栄ですというべきなのか、子供じゃないんだからと呆れるべきか、そもそも大の大人が行きたくないだなんて駄々を捏ねる姿が想像不可能で、会ったことのない養父の人物像がジョミーの中で迷走していた。
結果としてこのときジョミーが結論付けたのは、リオがジョミーの緊張を解そうと大袈裟に茶目っ気を利かせたのだろうということだった。
シャングリラ侯爵がジョミーを歓迎しているのだと、そういう意味なのだろうと。
そんな風に話すリオの表情を見ているだけで、侯爵の人となりが見えてくるようでジョミーの中のある種の恐れは小さくなった。
「明日にはお帰りの予定です。それまでジョミー様はゆっくりとお寛ぎください。今日は長旅の疲れもおありでしょう」
結局そんなリオの気遣いは無用だったかのように、ジョミーは疲れなど微塵も感じさせることなく、主が不在の邸を案内してもらって、新しい家の広大さに眩暈を起こしそうになってその日は終わった。
用意されていたジョミーの部屋だという、やたらと広い部屋のやたらと広いベッドに飛び込む。
部屋もベッドも広すぎて落ち着かない。どうにかもう少し普通の部屋に替えて貰えないだろうかと明日、養父にお願いしてみようか。けれど好意を無にしたと不愉快にさせたらどうしようと、明日のことに思いを馳せているうちに、落ち着かないなりに眠りに落ちた。
緊張があったからか、夜中に目が覚めた。
月明かりだけの部屋でベッドの傍らに人影が見えたが、孤児院の大部屋で生活していたジョミーは夜中の人影に驚かない。
「……トォニィ……?それともタージオンか?そんなところでどうした?」
夜中に目が覚めたと彼らがジョミーのベッドに狭いのに無断で潜り込んでくることはよくあったことで、ジョミーは何の疑問も持たずにブランケットを捲くった。
「ほら、来いよ。恐い夢でも見たのか?」
人影は戸惑うように揺れただけで、ベッドに入ってこようとはしない。
兄弟同然で育った年少者たちには珍しい遠慮に、ジョミーは欠伸を噛み殺して自らの傍らを叩いた。
「早くしろって。寒いだろ。入らないなら、自分のベッドに戻れ」
「………入って、いいのかい?」
半ば以上寝惚けていて、遠慮がちの声が聞き覚えのないものだとは気づきもしない。そうして、やはり寝惚けていたから、孤児院ではありえなかったことを口にしても疑問にも思わなかった。
「いいよ。このベッド広すぎてひとりだと落ち着かない。眠れないなら、ぎゅっとしてやるから……」
そうベッドを軽く叩くと、人影が闇に馴染むようにすぐ隣に滑り込んできた。
やってやると口にしたから、トォニィたちが喜ぶようにと、ぎゅっと抱き締める。
「………なんか、お前も大きくなったな……」
トォニィかタージオンがタキオンがコブか分からないけれど。髪の手触りからするとタキオンだろうか……。
うつらうつらとしながら、ジョミーは抱き寄せた髪に顔を埋めた。
「それに、いい匂い……あー……なんか、ぼくのほうが落ち着……」
「おはよう、ジョミー」
目を開けると、カーテンの隙間から入る朝の優しい陽射しの中で、養父の優しい笑顔がすぐ傍にあった。
留守のはずの人がいることに疑問を持ったまま、もう一度眠ったらしい。
「おはようございます……ブルー……」
目を擦りながらもぞもぞと身動きをすると、軽く額に口付けを贈られる。
くすぐったそうに身を竦めながら、ジョミーはくすくすと笑いを零して養父に強く抱きついた。
「お帰りなさい。昨日はいつ頃に帰って来たんですか?夜中に目が覚めたら隣にいて、びっくりした」
「ただいま。ジョミーに会いたくて、夜を徹して戻ってきたんだ。広いベッドだと落ち着かないだろう?」
そう笑ったのは、ブルーも初めて会った朝のことを思い出したからだろう。
朝、目を覚ますと知らない男を抱き締めていたなんてこと、きっと人生最初で最後の経験に違いない。
知らない、けれど見たこともないほどに綺麗な男は、寝乱れた姿も絵画のようで、驚いて声も出ないジョミーに微笑み挨拶をした。
「おはよう、ジョミー。よく眠れたようで何よりだ。僕も君の心音を聞きながら穏やかに眠ることができたよ」
「え?ええ?あ、あれ?え!?」
乱れた寝癖もそのままに、首を傾げ、左右を見回して居場所を確かめ、また首を傾げるジョミーに男は楽しげに笑う。
「初めまして、僕のジョミー。僕はブルー。書類上は少し前から、そして今日から本当の君の家族になる。君が来てくれる日を心待ちにしていたんだよ」
「…………へ?」
明日からあなたのお父上はブルー・シャングリラ侯爵になるのですよ。
そう言い聞かされていて、しかも目の前で挨拶をされたというのに、それでもジョミーはその若すぎる侯爵を前に、ただ呆然と目を瞬いていた。
「それとも、もうさすがに広いベッドにも慣れてしまっただろうか?」
広すぎて落ち着かないなら慣れるまで僕の部屋で一緒に眠ろう……三年前、当たり前のように告げたブルーは、本当にその日の夜からジョミーを自分の寝室へと連れ込んだ。
結局それが習慣となってしまって、以来三年。ジョミーは自分の部屋では数えるほどしか夜を過ごしていない。
「慣れようがないですよ。だってずっとあなたと眠ってるのに」
「そうか。では今日も僕の部屋へおいで。一緒に眠ろう」
十四歳にもなって、と眉を潜めるのは教育係のエラとゼルで、養父はちっともジョミーを一人で寝かせるつもりはないらしい。
「夜の話はあとで。今は朝ですよ」
まずは一緒にご飯を食べましょう。
そうジョミーが誘いかけると、ブルーは嬉しそうに微笑んだ。
ブルーはジョミーの成長を待っているのでもいいですし、
本当にいい父親のつもりでいてもいいと思います。
前者なら美味しく導きそうですが、
後者なら後々ジョミー以上に戸惑いそう(笑)
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