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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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No.173 疲労困憊

ひさびさの更新でこれはないだろう!と言われそうな馬鹿馬鹿しいSS。
い、いや、なんだろう、続きものの続きはもうちょっと落ち着いてから、とは思っていたんですが、思った以上に上手く書けないことに悩んでいたら、なぜかこういう話に。
一応、ばらいろすみれいろのパロ、魔性の男のジョミーとブルーの小話。
たまにはハーレイが苦労しない話も書きたいです(苦笑)


 


エレベーターに乗り込むと、僅かな浮遊感の後に箱が動き出してハーレイは軽く息をついてネクタイを緩めた。
今日は妻役――妻役として一緒に地上に降りてきて、実際に事実婚状態になった妻役――のブラウは、息子……ということになっているブルーの同級生の母親たちと食事会と言う名の飲み会に行くとのことで、夜まで出ているという。
地上に馴染む必要があったとはいえ、馴染み過ぎではないだろうかとほんの少しだけ思いながら溜息をつくと、買ってきた食材の入ったレジ袋がカサリと音を立てた。
今日は自分で食事を作るので素麺にしておいた。壊滅的に家事ができない息子と、その息子が過保護なまでに甘やかす同居人に食事の用意を期待してはいけない。
ジョミーもブラウの手伝いくらいはするらしく、またブラウの手伝いなら特に何も言わないブルーは、なぜかハーレイがジョミーに頼みごとをすると面白くないという態度を見せるのだ。
夕食に素麺だといえばあまりいい顔はしないだろうが、それくらいは勘弁してもらおうとエレベーターから降りて呼び鈴も鳴らさず自分で自宅の鍵を開けて扉を開けると、ジョミーの怒声が響き渡った。

「ブルーの馬鹿ーっ!」
「ジョミー!」
「ぼくがちょっと目を離した隙に……ひどい!手が早すぎるよ!」
「手が……その使い方はどうかと……ああいや、ジョミー、そんなに怒らないでくれ。もうしないから」
思わず扉を閉めたくなった。
どうにも誤解しそうな口論だが、それが誤解で実際はくだらない内容だなんてこと、ハーレイもいい加減に学習している。だがくだらない喧嘩なら、それはそれで酷い脱力感を覚えるはめになるということも学習している。
だから喧嘩というか、ジョミーの怒りが収まる(ブルーが収める)まで外で待っていようかと思った。そう長く掛からない。
もともとジョミーはさっぱりとした性格で長々と怒りを引きずらないし、あれでいてブルーに弱い。
そしてブルーもそのことを承知の上でそれを利用することに長けている。
見た目的に近い年頃に見える二人に、仲の良い兄弟だなと兄弟喧嘩のようで済むのならハーレイにダメージはないに違いないのだが。
振り返ると残照に赤く染まる空が見える。蜩の鳴く声を聞きながら額に汗が伝った。
他の食材はともかく、卵はあまりこの残暑の中で置いておきたくない。
諦めの心境でもう一度溜息をつくと、ハーレイは扉を潜った。

「怒らないでくれ、ジョミー。本当にわざとじゃないんだ。僕が君を悲しませるようなことをすると思うかい?」
「わざとじゃないのはわかってるよ!だからどうして一言先に声をかけてくれなかったのかって怒ってるんじゃないかっ」
リビングの扉を開けると、より一層二人の声がはっきりと聞こえる。
ジョミーが手にしている物が目に入り、説明を受けずともすべてを悟ったハーレイはいっそ無視をしてほしいと願ったのだがそれは叶わなかった。
「あ、ハーレイお帰り。聞いてよ、ブルーがひどいんだ!」
駆け寄ってきたきたジョミーの手にあった、オレンジ色の塗装も眩しい、艶やかな細身の缶は明らかに中身が空になっているようだ。
「……ジュースひとつでそこまで喧嘩するものでも……」
「喧嘩ではなくて、これは僕がジョミーに叱られているんだ」
そちらの方が情けなくないだろうか。
鋭く訂正を入れてきた息子に目を向けて、その赤い瞳と視線がぶつかり目を逸らす。
「そうだよ、ぼくが風呂上りにってとっておいたジュースを勝手に飲んだブルーが悪いんだから、喧嘩じゃないよ」
「だけどジョミー、君は帰宅したときも一本飲んでいただろう?だから今日はもういいかと思ったんだよ」
「そのつもりなら二本も買ってこないよ。風呂上りの一杯はまた別!」
どこぞの酒飲みの妻を彷彿とさせるジョミーの主張に、ハーレイは無言でそろりと移動して食材をキッチンへと運ぶ。
「わかった。……そうだね、君に確認を取らなかった僕が悪かった。ちゃんと明日、またジョミーのためにジュースを買ってこよう。いや、今から行ってくるよ」
「え……?えっと、謝ってくれたら……うん、謝ってくれたらそれでいいよ。今からなんてそんな面倒なことしなくていい。ブルーだってもうお風呂入ったでしょ?」
早々に和解してくれたのは結構だが、一言謝ればジョミーの気は済むのに、その前に誤解を解こうとかなんとかするから、しばらく喧嘩……叱られるはめになるのではなかろうか。
そんなことを承知していない息子ではないと思うが、ではなぜしばらくジョミーを怒らせておくのかというと、理由がない。ないだろう、ないはずだ。
なんとなく確認することが躊躇われたので、ハーレイの中でそれは「息子の若さ故の未熟である」という結論で片付けられることとなった。





怒ったジョミーも可愛いだなんてのろけ、聞きたくありません

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