日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.167 七夕(シャングリラ学園)
Category : 小話・短文
うっかり7日を忘れてちょっとオーバーしましたが……(^^;)
クリスマスのときにブルーが混ぜた行事が七夕だったので、学園の小話で七夕はしようと心に決めていたのでした。なんてどうでもいい決意(笑)
一応ブルーが卒業した後ということになっていますが、今後学園を書くときは在学中とかに平気で戻ることもありますので……ご都合!
ところで短冊に書くものですが、あれは元々願い事じゃなかったとかいう話なんですがその辺りは最近の風習の方でいってみました(^^;)
「僕はこの日を待っていた!」
唐突に開いた扉の向こう、芝居がかったセリフを口にしながら立っていた人物に目を向けると、ジョミーは慣れた様子ですぐに手許に視線を落とした。
「卒業したっていうのに相変わらずですね。一体なんですか」
もうすぐ期末試験だというのに、生徒会の仕事はなくならない。遊んでいる暇はないとろくな相手もせずに話を促したと言うのに、大学部からわざわざやってきた前生徒会長―――
「生徒会長ではありません、ソルジャーです」
「モノローグにまでツッコむなよ!そうだよ、ソルジャーでした!」
書記の机から上がった抗議にジョミーが机を叩くと、その目の前に掌サイズの短冊が差し出される。
思わず仰け反ったジョミーが見上げると、満面の笑みを浮かべた前ソルジャーが更に短冊を前へ突き出した。
「さあジョミー、これに君の願いを書いてくれ。僕が責任を持って笹の天辺に括りつけてあげるからね」
「ああ……七夕ですか。そんな張り切るほどの行事なのかすごい疑問なんですけど……」
ここで無視をしても粘られるだけなので、素直に差し出された短冊を受け取ったジョミーは、手にしたペンをくるりと回して書く願い事を考える。
ここはごく普通に『期末テストで良い点数が取れますように』あたりでお茶を濁してしまう方がいいだろうか。ブルーは不満を漏らしかねないけど……。
「いや、待て」
そんな願い事を書いてみろ、きっとブルーのことだ。
「だったら、僕の出番だね!僕が付きっ切りで勉強を教えてあげよう!」
とか何とか言って、家に上がりこんでくるか、逆にブルーの家に連れ込まれかねない。
いっそ『ブルーが大人しくしていますように』というのはどうだろう。
「僕が大人しくしているかどうか、確認のために僕の傍にいてくれたまえ!」
そんなブルーの声が聞こえたような気がして、ジョミーは重い頭痛を覚えたような気がして額を押さえた。
『ぼくに平穏な時間を』
「では僕がジョミーの平穏を守ってあげよう!」
『生徒会の仕事が早く終わりますように』
「心をこめてジョミーを応援するよ!」(と言って、傍にいるだけで手伝わない)
何を考えてもブルーが切り返してくる光景しか思い浮かばない。
ジョミーはぐったりとして椅子に背中を預けた。
デスクの前でわくわくとした表情を隠そうともせずに待っていたブルーは、そんなジョミーに首を傾げる。
「ジョミー?そんなに願い事がたくさんあるのかい?」
「………ひとつ、お尋ねしますけど」
疲れた気力を振り絞ってじろりと目を向けると、ブルーは微笑みながら頷く。
「なんだい?ジョミーの質問になら何でも答えるよ」
こうしているだけなら、とても、とてもまともな人に見えるのに……。
「この短冊に書く願い事は、普通に笹に吊るすだけですよね?あなたが願いを叶えようとかしないですよね!?」
七夕の行事でなぜこんな心配をしなくてはいけないんだと思いつつも強く確認すると、ブルーはにっこりと笑って頷くような、傾げるような、微妙な角度に首を曲げる。
「もちろん、笹に吊るすさ。ただ僕に叶えられることなら……」
思ったとおりの返答に、ジョミーはペンを握って短冊の上にさらさらと走らせた。
「今のぼくの、一番の願いです!」
白い短冊の上に一言。
『今すぐ帰れ』
短い、心からの願望を書いた短冊をブルーに突きつける。
突きつけられたブルーは目を瞬いて、それから困ったように微笑んだ。
「……随分冷たいことを言うんだね」
「こっちは忙しいんですよ。手伝ってくれるなら、せめてアドバイスとかをくれるなら歓迎しますけど……どうせ邪魔するだけでしょう?」
ブルーに短冊を無理やり押し付けるとそれ以上は相手にせずに生徒会の仕事に戻る。
どうやっても前向きに変換などできない願いをどうするのか、沈黙するブルーに目だけをちらりと向けると、ブルーは深い溜息をついた。
「……わかった。ではこれを笹に吊るしてこよう」
「は……?」
わざわざ笹に吊るすような願いではないだろうに。
おかしなことを言うブルーに思わず聞き返してしまったが、ブルーは寂しそうな笑みを見せて頷くだけで踵を返した。
「え……あ………ああっと……お願い、します……?」
願い通りに大人しく帰るということか。
ブルーの意図を理解して頷いたものの、本当に大人しくブルーが生徒会室もとい青の間を出て行くと今度は複雑な気分になった。
「………珍しい」
「と、いうことはブルーが騒ぐと思いながらあんな願い事を書いたのですか?」
苦笑を見せたリオの言葉に、ジョミーは眉を寄せてじろりと面白くない視線をそちらに向ける。
「別に……本心だし」
「まあ、あの方は仕事がはかどるようなことより、邪魔をされるとは思いますけれどね……」
処理の終わった書類を机に落として端を揃えながら、リオは肩を竦めた。
「ですが、少し可哀想でしたよ」
「う……」
まさかブルーがあんなに大人しく帰るとは思わなかったのだ。
ジョミーは一言もなく、窓の外の大学部棟の方へと目を向けた。
願い事を取り下げに行くべきか、けれどそうやってまたブルーがやってきても困るし。
そわそわと落ち着きなく書類と窓の外を見比べるジョミーに、溜息をついたリオが口を開きかけたところで、再び青の間の扉が大きく開いた。
「君の願いを吊るしてきたよ、ジョミー」
ちょうど窓に目を向けていたジョミーも、ジョミーを送り出そうとしていたリオも、まさか帰ってくるとは思わなかった人物の帰還に唖然として戸口を振り返る。
ブルーは最初に来たときほどに活き活きとはしていなかったが、戻ってきたことに対しては何の疑問もない様子でジョミーの前まで移動した。
「ちゃんと笹の一番上にね」
「え、あれ、本当に飾ったんですか?」
単に言われた通りに帰る口実にしたのかと思っていたのに。
それが本当なら、一番上に「帰れ」の文字を書いた短冊を飾った、まるで意味不明な笹の出来上がりだ。
「だって君の願いだろう?せっかく年に一度の逢瀬にすぐに帰れとは天帝のように厳しいとは思うけれど」
「………ん?」
何か思ったものとはまったく違う返答に、ジョミーは考えるように首を傾げて腕を組む。
一度帰ったことで願いを叶えたということだろうか。
しかしブルーは卒業してもたびたび生徒会室……青の間に訪ねてくるし、学外で会う機会も考えれば卒業から半年弱ですでに年に一度どころではなく会っている。
「……えっと……?」
「しかしあの短冊を見れば、牽牛と織姫も逢瀬に溺れて自らの役目を忘れて帰らないということもあるまい……」
「なんでこんなときばっかり本気で織姫と彦星なんですか!」
自分に向けられたとは思わないのか!
思わず机を叩いて立ち上がったジョミーの視界の端で、リオが額を押さえて溜息を零していた。
同感だ。まったく、この自己都合のいい人を相手に、無駄な心配をしたものだった。
(おまけ)
「……ブルー、短冊をもう一枚もらえますか?」
「うん?何かもうひとつ願い事があるのかい?」
「願い事の内容を取り替えます。せっかく久しぶりに逢えるのに、最初から時間に追われるなんてあんまりだ」
「うん、確かに。では僕らも今度の日曜日、学校も生徒会の仕事もないときに逢おうか?」
「……………はい」
クリスマスのときにブルーが混ぜた行事が七夕だったので、学園の小話で七夕はしようと心に決めていたのでした。なんてどうでもいい決意(笑)
一応ブルーが卒業した後ということになっていますが、今後学園を書くときは在学中とかに平気で戻ることもありますので……ご都合!
ところで短冊に書くものですが、あれは元々願い事じゃなかったとかいう話なんですがその辺りは最近の風習の方でいってみました(^^;)
「僕はこの日を待っていた!」
唐突に開いた扉の向こう、芝居がかったセリフを口にしながら立っていた人物に目を向けると、ジョミーは慣れた様子ですぐに手許に視線を落とした。
「卒業したっていうのに相変わらずですね。一体なんですか」
もうすぐ期末試験だというのに、生徒会の仕事はなくならない。遊んでいる暇はないとろくな相手もせずに話を促したと言うのに、大学部からわざわざやってきた前生徒会長―――
「生徒会長ではありません、ソルジャーです」
「モノローグにまでツッコむなよ!そうだよ、ソルジャーでした!」
書記の机から上がった抗議にジョミーが机を叩くと、その目の前に掌サイズの短冊が差し出される。
思わず仰け反ったジョミーが見上げると、満面の笑みを浮かべた前ソルジャーが更に短冊を前へ突き出した。
「さあジョミー、これに君の願いを書いてくれ。僕が責任を持って笹の天辺に括りつけてあげるからね」
「ああ……七夕ですか。そんな張り切るほどの行事なのかすごい疑問なんですけど……」
ここで無視をしても粘られるだけなので、素直に差し出された短冊を受け取ったジョミーは、手にしたペンをくるりと回して書く願い事を考える。
ここはごく普通に『期末テストで良い点数が取れますように』あたりでお茶を濁してしまう方がいいだろうか。ブルーは不満を漏らしかねないけど……。
「いや、待て」
そんな願い事を書いてみろ、きっとブルーのことだ。
「だったら、僕の出番だね!僕が付きっ切りで勉強を教えてあげよう!」
とか何とか言って、家に上がりこんでくるか、逆にブルーの家に連れ込まれかねない。
いっそ『ブルーが大人しくしていますように』というのはどうだろう。
「僕が大人しくしているかどうか、確認のために僕の傍にいてくれたまえ!」
そんなブルーの声が聞こえたような気がして、ジョミーは重い頭痛を覚えたような気がして額を押さえた。
『ぼくに平穏な時間を』
「では僕がジョミーの平穏を守ってあげよう!」
『生徒会の仕事が早く終わりますように』
「心をこめてジョミーを応援するよ!」(と言って、傍にいるだけで手伝わない)
何を考えてもブルーが切り返してくる光景しか思い浮かばない。
ジョミーはぐったりとして椅子に背中を預けた。
デスクの前でわくわくとした表情を隠そうともせずに待っていたブルーは、そんなジョミーに首を傾げる。
「ジョミー?そんなに願い事がたくさんあるのかい?」
「………ひとつ、お尋ねしますけど」
疲れた気力を振り絞ってじろりと目を向けると、ブルーは微笑みながら頷く。
「なんだい?ジョミーの質問になら何でも答えるよ」
こうしているだけなら、とても、とてもまともな人に見えるのに……。
「この短冊に書く願い事は、普通に笹に吊るすだけですよね?あなたが願いを叶えようとかしないですよね!?」
七夕の行事でなぜこんな心配をしなくてはいけないんだと思いつつも強く確認すると、ブルーはにっこりと笑って頷くような、傾げるような、微妙な角度に首を曲げる。
「もちろん、笹に吊るすさ。ただ僕に叶えられることなら……」
思ったとおりの返答に、ジョミーはペンを握って短冊の上にさらさらと走らせた。
「今のぼくの、一番の願いです!」
白い短冊の上に一言。
『今すぐ帰れ』
短い、心からの願望を書いた短冊をブルーに突きつける。
突きつけられたブルーは目を瞬いて、それから困ったように微笑んだ。
「……随分冷たいことを言うんだね」
「こっちは忙しいんですよ。手伝ってくれるなら、せめてアドバイスとかをくれるなら歓迎しますけど……どうせ邪魔するだけでしょう?」
ブルーに短冊を無理やり押し付けるとそれ以上は相手にせずに生徒会の仕事に戻る。
どうやっても前向きに変換などできない願いをどうするのか、沈黙するブルーに目だけをちらりと向けると、ブルーは深い溜息をついた。
「……わかった。ではこれを笹に吊るしてこよう」
「は……?」
わざわざ笹に吊るすような願いではないだろうに。
おかしなことを言うブルーに思わず聞き返してしまったが、ブルーは寂しそうな笑みを見せて頷くだけで踵を返した。
「え……あ………ああっと……お願い、します……?」
願い通りに大人しく帰るということか。
ブルーの意図を理解して頷いたものの、本当に大人しくブルーが生徒会室もとい青の間を出て行くと今度は複雑な気分になった。
「………珍しい」
「と、いうことはブルーが騒ぐと思いながらあんな願い事を書いたのですか?」
苦笑を見せたリオの言葉に、ジョミーは眉を寄せてじろりと面白くない視線をそちらに向ける。
「別に……本心だし」
「まあ、あの方は仕事がはかどるようなことより、邪魔をされるとは思いますけれどね……」
処理の終わった書類を机に落として端を揃えながら、リオは肩を竦めた。
「ですが、少し可哀想でしたよ」
「う……」
まさかブルーがあんなに大人しく帰るとは思わなかったのだ。
ジョミーは一言もなく、窓の外の大学部棟の方へと目を向けた。
願い事を取り下げに行くべきか、けれどそうやってまたブルーがやってきても困るし。
そわそわと落ち着きなく書類と窓の外を見比べるジョミーに、溜息をついたリオが口を開きかけたところで、再び青の間の扉が大きく開いた。
「君の願いを吊るしてきたよ、ジョミー」
ちょうど窓に目を向けていたジョミーも、ジョミーを送り出そうとしていたリオも、まさか帰ってくるとは思わなかった人物の帰還に唖然として戸口を振り返る。
ブルーは最初に来たときほどに活き活きとはしていなかったが、戻ってきたことに対しては何の疑問もない様子でジョミーの前まで移動した。
「ちゃんと笹の一番上にね」
「え、あれ、本当に飾ったんですか?」
単に言われた通りに帰る口実にしたのかと思っていたのに。
それが本当なら、一番上に「帰れ」の文字を書いた短冊を飾った、まるで意味不明な笹の出来上がりだ。
「だって君の願いだろう?せっかく年に一度の逢瀬にすぐに帰れとは天帝のように厳しいとは思うけれど」
「………ん?」
何か思ったものとはまったく違う返答に、ジョミーは考えるように首を傾げて腕を組む。
一度帰ったことで願いを叶えたということだろうか。
しかしブルーは卒業してもたびたび生徒会室……青の間に訪ねてくるし、学外で会う機会も考えれば卒業から半年弱ですでに年に一度どころではなく会っている。
「……えっと……?」
「しかしあの短冊を見れば、牽牛と織姫も逢瀬に溺れて自らの役目を忘れて帰らないということもあるまい……」
「なんでこんなときばっかり本気で織姫と彦星なんですか!」
自分に向けられたとは思わないのか!
思わず机を叩いて立ち上がったジョミーの視界の端で、リオが額を押さえて溜息を零していた。
同感だ。まったく、この自己都合のいい人を相手に、無駄な心配をしたものだった。
(おまけ)
「……ブルー、短冊をもう一枚もらえますか?」
「うん?何かもうひとつ願い事があるのかい?」
「願い事の内容を取り替えます。せっかく久しぶりに逢えるのに、最初から時間に追われるなんてあんまりだ」
「うん、確かに。では僕らも今度の日曜日、学校も生徒会の仕事もないときに逢おうか?」
「……………はい」
別に願い事を叶えるのは織姫と牽牛ではないそうですが。
わかっててとぼけるブルーと、とぼけていることがわかっていて
そういうことにしてくれたのにホッとしているジョミーでした。
傍で見てるリオはやってらんないぜ!(笑)
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