日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.164 Continuation
Category : 小話・短文
寝入りっぱなに「これいい!」と思ったネタを目が覚めたら忘れているのはよくあります。
………が、「書きてえええ!!」と思わず叫ばずにはいられなかったはずのネタを忘れたのはさすがに初めてです。あああ……すっごい気になる。一体どんなネタを書きたかったんだ自分orz
とりあえず、もっと普通に女の子らしい女の子ジョミーの話も書いてみたいと近頃色々考えていたので、女の子で記憶の底をさらっていたらできた話。
ということで、女の子ジョミーの現代パロ。ブルーとジョミーがいつもと反転した感じになりました。
しかし二人がちっとも絡んでいないという……。話の出だしみたいですが、続きません。
そして忘れたネタは未だに思い出せません。
「大きくなったら、ぼくのお嫁さんにしてあげる!」
昔そう言ったのは、3歳下の隣家の子供だった。
懐かしい夢を見た。
カーテンの隙間から差し込む光で目覚まし時計が鳴るより先に目が覚めたブルーは、その光に夢に見た金色の髪を思い出して目を細める。
両親同士の仲が良く、まるでほんとうの兄弟のように過ごしたブルーの後ろばかりをついて回ったあの子は、ブルーが学校へ上がるようになると公園で他の子供たちとすぐに親しくなっていた。
それでも一番好きなのはブルーだと、下校するブルーを見つけるとすぐに飛んできて手を繋いで家路についた。
友達から、大きくなったら兄弟なんてバラバラになるんだと聞かされて、ずっと一緒にいるのは「ふーふ」なんだと知ったときの宣言が、あれだった。
「僕の方がお嫁さんというのがね」
いつも泥だらけになって転げまわって、本当の弟のようだった可愛い子。
小さく笑いながら起き上がったブルーは、寝乱れた髪を掻きあげてカーテンを開けた。
「懐かしいな……ジョミー」
太陽の光に透けるような、金の髪が本当に綺麗だったことを、覚えている。
「今お嫁さんにして欲しいと言ったら、どんな顔をするかな」
笑いながらさすがにもう女の子には見えない自分の身体を見下ろして、もうずっと以前に引っ越してしまった懐かしい少年の姿を思い出す。
今頃は面影もないくらいに逞しく成長しているだろうか。それとも、あの頃のように元気で腕白な可愛い少年になっているだろうか。
窓を開いて桟に腰を掛けるのと、隣の空家の前に一台のトラックが止まった様子が見えた。
「ジョミー!転校するって本当!?」
職員室の扉を潜ったところで、周囲を憚らない大声に呼び止められてジョミーは溜息をついた。
「トォニィ、廊下は走るな」
窓から入ってきた風に靡いた長い髪を耳に掛け、駆けつけた勢いのまま飛びつこうとした少年の額に手をついて押し返す。
「だってさ!信じられない話を聞いたから……嘘だよね?転校だなんて嘘だよね?」
「嘘じゃない。今度引っ越すことになった」
「そんな!だって僕やっとジョミーに追いついて一緒の学校に通えるようになったのにっ」
「そんな理由でスキップするなよ、お前は……」
指先で弾かれた額を押さえたトォニィは、その指の合間から向けられた背を見て慌てて追いかける。
「だって大人しく待ってたら、僕が入学するときはジョミーは卒業しちゃってるじゃないか。それよりジョミー、転校って、引越しって……っ」
「……そうなんだ……三つの差って、ちょうど入れ違いになっちゃうんだよなあ……」
通りかかった窓枠に手を掛けて、遠くを眺めて溜息をついたその横顔に見惚れかける。
風に靡いた金の髪が手の甲を掠めて、慌てて首を振って呆けかけた意識を取り戻した。
「いいよ!だっからまた追いかけるから!ジョミーはどこに転校するの!?」
物思いに耽っていたジョミーは、拳を握り締めて決意を新たにする赤い髪の少年を振り返り、怪訝そうに眉を寄せる。
「追いかけるって、無茶言うなよ」
「ジョミーが行くなら、どこまでだって追いかけるよ!」
「いや、そうじゃなくて……」
いつの間にか自分よりも背の高くなってしまった従弟の少年の頭を撫でて、ジョミーは軽く首を傾げた。
「あのさトォニィ、ぼくが今度転校するところは、女の子しか入れないんだ」
「………え?」
「女子校なんだって。パンフレットをみたらさ、制服とか清楚ででもすっごく可愛くて、よく似合いそうだなって……」
頬染めてそんなことをいうジョミーが可愛いよ!
そう叫びたい衝動を堪えて、清楚で可愛い制服を着て、長い金の髪を揺らして手を振る従姉の姿を想像する。
「トォニィ」
微笑みながら、その細い手が伸ばされて……。
「うん、ジョミーによく似合うよ」
たぶん。
どんな制服かも知らないままに、想像だけでジョミーになら似合うと断言すると、きょとんと目を瞬いたジョミーは、次いでおかしそうに声を上げて笑い出した。
「ジョミー?」
「ち……違う違う、ぼくが似合いそうだって言ったのは、ブルーのことだよ」
「……またその話……?」
見たこともない相手だけど、その話は聞き飽きた。
ジョミーが大好きだった、昔住んでいた家の『隣のお姉さん』。
活発に動くことが好きなジョミーが、動きにくいといいつつ髪を伸ばしているのも「隣のお姉さん」がその髪を好きだと言ったからで、赤はあまり好きではないといいつつ髪をまとめるときに赤いリボンを使うのも、「隣のお姉さん」がジョミーには赤い色が似合うと昔言ったからだ。
「あんなに可愛かったんだから、きっと今頃美人になってるだろうな……ブルーの銀の髪は月の光みたいに目に柔らかで優しくて、赤い瞳はキラキラして綺麗で、それに笑顔がとっても可愛くてね!」
「僕は太陽みたいに輝くジョミーの髪の方が綺麗だと思うし、笑顔が可愛いのはジョミーだよ!」
こんなに可愛いのに、別の女のことばっかり誉めることが気に食わなくて強く割り込むと、ジョミーは目を瞬いて、頭を掻きながら苦笑する。
「ごめんごめん、知らない人のことを聞いても、トォニィは面白くないよな。でも一目ブルーを見たら、トォニィも絶対に納得するって。お姉様なんて呼びたくなるかもしれないよ?あー、早く会いたいな」
わかっていないジョミーに苛々と舌打ちをしかけたトォニィは、最後の言葉を聞き咎めて眉を寄せる。
「早く会いたい?なに、次に引っ越すところにそいつがいるの?」
「え、言ってなかったっけ?ぼく、アタラクシアに戻るんだよ。しかも最高なことに、前の家がちょうど空いてからそこに戻れるんだって!」
浮かれて喜ぶジョミーを見ていると、こんなに一緒にいたいと訴えていることをどう思っているのだと面白くない。どうせジョミーは弟のようにしか見てくれていないとわかっていても。
「そいつが引っ越してないといいね」
「……え?」
うっとりと隣のお姉さんの成長した姿を色々想像していたジョミーは、拗ねたような声を聞いて振り返る。
「だってジョミーだって何度も引越ししてるじゃないか。十年変わらずに、そいつがそこに住んでるとも限らないだろ」
「そ………」
言葉に詰まり、大きくよろけたジョミーが窓枠に縋りつくように寄りかかる。
「そんなこと……考えてもみなかった……」
思った以上の反応が返ってきたことに、少し意地悪をするくらいのつもりだったトォニィは慌てて前言を翻して大きく手を振った。
「で、でもさ、ジョミーのパパみたいに転勤を繰り返してるわけじゃないなら、まだそこにいるかも!三つ年上なら、まだ学生だし自宅通学の可能性が高いし!」
「そ……そうだよな……そうだよ、きっとあの家に引っ越したらまたブルーに会える。………ぼくとの約束、覚えてくれてるかな……」
少しの不安を残している様子で、それでも気を取り直したジョミーの呟きに、トォニィは天井を見上げて溜息をつく。
「覚えてても無効だと思ってると思うよ……」
女の子が女の子にプロポーズされたなんて話。
ジョミーがどれだけブルーを慕っていても、相手が女の子だから聞いていられたんだ。これで『ブルー』が男だったりしたら、確実に抹殺してやる。
そんな不穏なことを考えるトォニィの横で、ジョミーは来週の引越しを楽しみに遠い町を望んで窓の外へと視線を向けた。
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ブルーはジョミーを少年だと思っていて、ジョミーはブルーを少女だと勘違いしたままお姉様に憧れている、と。
ブルー←ジョミーな感じですが、多分再会したら逆転します。
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