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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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ちょっと話が進む。
トォニィたちシャングリラのメンバーがノアに帰りつくまでにクリアしなければならないことが多々あるんですが、どれだけ詰め込む気だと今更思いました。
というか、いつになったらトォニィやフィシスの出番がくるんだ……。


目次


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『地球を離れ再びノアへと航行中のシャングリラからの通信によると―――』
音声読み上げ機能でニュース記事を聞きながらコーヒーを口にしてたブルーは、呼び出しを告げる電子音に思わず溜息をついた。
怪我が良くなってからでも好きにしたらいいと伝えたことで、ジョミーにとっても送り迎えの時間は特に貴重なものではなくなったはずだった。
そう話した当日の放課後は返すものがあると伝えていたから教室の前で待っていたことに不思議はなかったが、結局今朝も迎えが来たようだ。
律儀なことだと苦笑を零しながら立ち上がったブルーは、呼び鈴に応じようとインターフォンの画面に手を伸ばす母親を制する。
「僕の迎えだから」
「迎え?」
「怪我をさせたことに対する詫びだそうだよ」
「あら……それじゃあ……」
インターフォンから手を引きながら言葉を濁す母親に、ブルーの機嫌は一気に下降した。ジョミーがミュウではないと言われても、あのときのやりとりがまだ彼女の中には残っているのだろう。
この人のこんな行動は今更だ。だが自分に向けられるものなら慣れたとしても、それを友人に向けられることはまた別の不快がある。
ブルーの咎めるような視線に気づいたのか、母親は気まずそうに顔を逸らし、ブルーもまたそれ以上は何も言わずにリビングを後にした。
玄関の扉を開けると、門扉の外で待っていたジョミーが満面の笑みを見せる。
「あ、おはようございます!」
「ああ……」
門扉までの短い道を歩く間にも、外で待つジョミーは尻尾を振らんばかりの様子で待ち構えている。
その笑顔を見ていると、先ほど母親に覚えた苛立ちが消えてなくなるような気がした。
ああ、まったくそうだ。あの人のあれは今に始まったことではない。いちいち気にしても消耗するだけだ。
門扉を開けようと手をかけたブルーは、ジョミーの後ろから黒髪を揺らしてひょっこりと顔を出した少女に驚いて一瞬、手を止めた。
「おはようございます。ミスター・イリアッド」
「……おはよう」
「ごめんなさい、今日は途中までアルテラも一緒に行くんですけど、だめでした?」
「いや、構わない」
予想外のことで驚いたのと、いよいよ母親が対応しなくてよかったと思っただけだ。
「だがジュニアスクールとは道が違うんじゃなかったか?」
「今日はスクールの前に支援センターに寄る事になって。通り道だからぼくが送ることになったんです」
門扉を出たブルーに、ジョミーが自然な動作で手を差し出した。ブルーも鞄を渡そうと肩紐に手を掛けると、ジョミーの腕にぶら下がっていたアルテラがぐいと強く引いてジョミーが後ろによろめく。
「おい、アルテラ!」
「構わない。彼女が一緒なのだから、今日は彼女と手を繋いであげるといい」
「でもそれじゃなんのためにぼくが来たのか……」
「鞄を持つのは口実なんだろう?」
半ば揶揄するように昨日のジョミーの告白を口にすると、途端にジョミーは顔を真っ赤に染めた。
「それは……その」
「責めているわけじゃない。だから彼女の手を取っていればいいと言っただけだ」
小さく笑みを零すブルーを、ジョミーの腕に取り付いたアルテラがじっと見つめていた。

「しかし休日でもないのに、センターに行くというのは穏やかではないな。どこか具合が悪いのか?」
思念の扱いに苦心する目覚めたばかりのミュウの年少者たちには、それを指導するためのセンターがある。参加は自由意志に任されるが、思念を扱いきれないことに一番苦痛を覚えるのは本人なので、ほとんどの者が一時期はお世話になるという。
しかしあくまで支援が目的の場所なので、大抵は放課後であったり休日であったり、通常の日常生活に障りのない時間を選んで通うとリオからは聞いている。
歩きながらでもジョミーの腕を放さないアルテラに目を向けると、正面から視線がぶつかった。ジョミーを挟んでずっとブルーを見ている様子に、観察されているような気がして少し不愉快になる。
「いえ、アルテラは他の子よりサイオンが強いから、少し調子が悪いと一応検診しておこうってだけのことなんです。な?」
ジョミーが目を向けると、アルテラはブルーを見つめたまま頷いた。
一度会ったことがあるだけだが、以前はもっと物怖じしない様子に見えたのに、今日は随分と避けるものだと疑問を抱いていると、どうやらブルーの感じたことは間違っていなかったらしい。ジョミーも首を傾げている。
「どうしたアルテラ?やっぱり具合が悪いのか?」
「……別に」
首を振るだけで何も言わないアルテラに、ジョミーは肩を竦めてブルーに目を向けた。
「気にしないで下さい。照れてるだけだと思います」
どちらかといえば警戒しているのではないかと思いながら、仲の良い様子の兄妹に苦笑する。
「ち、違うわよ!ジョミーの馬鹿!ミスター・イリアッド、行きましょう!」
抱きついていたジョミーの腕を振り払ったと思うと、少し前に出たアルテラは突然ブルーの手を握って足を速めた。
「あっ!おい、アルテラ!ブルーは怪我をしてるんだぞ!」
小走りのアルテラの速度は、ブルーにとっては少し早く歩く程度のものだ。昨日に続いて大して傷も痛まないのでそれは構わないが、それよりも繋がれた手の方が気になる。
「おい……」
「そのまま聞いて」
ブルーの手を引きながら振り返ったアルテラは、静かにするようにと立てた指を唇に当てると、ブルーの後ろから慌てて追いかけてくるジョミーを気にするように少しだけ目を動かした。
「昨日からジョミーの様子が少し変なの。ジョミーはなんともないって言うんだけど、思念を完全に閉ざしてる」
ジョミーに追いつかれる前にと急いで早口で告げるアルテラに、ブルーは眉を寄せた。
「家族であろうと、許可がない相手の思念を読むことは禁止されているはずだ」
「だから、ジョミーはわたしには許可をくれるの。ううん、何を考えているかまでは読まないわ。でもなんとなく感じていることとか、今の大体の気分とか、曖昧な感覚には触れさせてくれるの。でも昨日からはまったく何も感じない。ジョミーが閉ざしてしまっているんだわ」
「誰だって触れられたくないときくらいあるだろう」
閉ざしているというからには、ジョミーは思念を自由意志で閉ざすことができるようだ。あの年の人間には珍しいことだが、家族にミュウがいるならある程度は思念の扱いに慣れるのかもしれない。
だが陽気で明るく笑うジョミーが思念を閉ざす術を完璧に身につけているというのは少し意外だった。思念に触れることを妹に許可しているというように、漠然とした感覚までならオープンにしているタイプに見える。
「分かってる。でもおかしいような気がするの。お願い、ジョミーのこと見ててあげて。わたしには絶対に弱い顔は見せてくれないの」
家族としての違和感か、それともミュウの鋭い感受性か、どちらにしろアルテラの危惧は分かったがそれを託されたことに困惑せずにはいられない。
「なぜ僕にそんなことを」
ジョミーの友人ならサムがいる。
ジョミー自身ともそこまで親しくもなく、アルテラにとっても一度しか会ったことのないブルーに頼るより、アルテメシアからの知り合いのサムに頼むほうが筋だろう。
ブルーの疑問に、アルテラは溜息をついて首を振る。
「サムはだめ。正直すぎるからジョミーに直接聞いちゃうわ」
「だが僕は……」
家族にすら微かな違和感しか抱かせないことに気づけるほど、ジョミーとは親しくない。
そう言いかけたブルーに微笑みを見せて、アルテラは繋いだ手に力を込めた。
「でもあなたなら、きっと大丈夫。……ジョミーのこと、好きになってくれてありがとう」
この少女が何を言ったのか、最後の言葉が一切理解できなかった。

ムスカ氏のこのセリフはある意味、神(笑)
一旦停滞と言ってから復活までと大して変わらない更新とはどういうことだと心の底から思います。悔しいなあ!
急に忙しくなって帰りが毎日確実に1、2時間くらいは遅くなっているんですが、普段がそんなに大変というわけではないので、これで人並みくらいかとは思います。
思いますが、書く時間が削られることが我慢なりません。ぐおー!
おまけにお茶を飲む暇もないくらい詰め詰めでパソコンを打ち続けていると、指関節と目が痛くなります(タイトルのムスカ氏) トイレにも行けないorz
早く休み来いな心境ですが、休みの前後は倍率ドン、更に倍で仕事が増えるので、19日と21日は戦々恐々。
つい先日辞めた人がいて、新人さんが入ることになって勤務日が増えた上にあちこち時間を移動されてごっちゃごっちゃになっていることもキツイです。ぐおー!今まで週休二日だったのになあ。
忙しい時期に辞めてごめんねーと言われましたが、まあ人には事情がありますから……でもあと二ヶ月、二ヶ月どうにかならなかったのかと……!うむ、言っても詮のないことです。週末の楽しみを糧にがんばろー。

他ジャンルの感想を記事の頭にしているのもアレなんで、久々にネタの呟き。
首が痛いとパソコンに触れず悶々としていたとき、何がきっかけか忘れたんですが出てきたのが「とりかへばや物語」でした。
しかしとりかへばや物語だと女の子のジョミーがえらいことになるので(^^;)、それよりぐっと現代向けになった少女漫画「ざ・ちぇんじ」でいけばいいじゃないかと。(漫画原作の小説のほうは未読……)しかし漫画のほうもずっと昔に読んだっきり、どこへ行ったのか行方不明なんでうろ覚え。あわわ。
そんな感じで怪しげな記憶に頼ってネタ。

文中、姉と兄、弟と妹の単語が入り乱れますが、どっちも本当は「姉」「弟」です。兄や妹というのは世間的に見られている立場です(^^;)
思い入れが強いのか、ネタなのに妙に原作展開の説明が長くなりました(苦笑)

配役でいうと、
綺羅の中将(姉)=ジョミー
綺羅姫(弟)=ジョミー
主上(帝)=ブルー(大人)
東宮=やっぱりブルー(少年)
宰相中将=キース
権大納言(二人の綺羅の父)=ハーレイ
三の姫=シロエ(女の子だからスウェナが妥当かもしれませんが)

こんな感じ。
兄妹に関しては原本のとりかえへばやでは逆だったと思うんですが、漫画では姉さまと呼んでいたので、女の子の方を姉にします。
ついでに言うとこの東宮は本当は、主上に子供がいないため一時的に東宮に上げられている主上の妹という、女東宮です。でもこれも趣味で弟でいきます(笑)
本当は東宮はトォニィあたりが適役だと思うのですが、ブルーが分裂したのも趣味で。

ここでざ・ちぇんじのあらすじ。
権大納言家では二人の妻が、同じ年に男の子と女の子を出産。成長した二人はそれぞれが父方の祖母に似て、双子のようにそっくりの容姿に育つ。
けれど快活な姉は男の子の格好を好み、母はそれを好きにさせ、気弱な弟は極端に信心深い母に健康に育つためと女の子の格好で育てられた、いわば逆転姉弟。
さすがに元服や裳儀は父が許さなかったものの、美しいと評判の綺羅姫を見たい帝から、姫にそっくりという兄の綺羅を出仕させよとの命令が下り、あっちの綺羅が元服するならうちの綺羅も裳儀をさせるという妻の要望のために綺羅姫も女の子として成人することに……。

と、これが導入。
原本とは違い、マンガ版では姉と帝は出仕の前に先に会ってます。
こっからパロの方に名前を入れ替え。
北嵯峨の別荘近くの湖で水浴びしていたところ、見知らぬ公達に裸を見られた姉のジョミーは、咄嗟に「意に添わぬ結婚を父に迫られて入水自殺をしようとした」と嘘をつく。
その公達が実は政務から息抜きに来ていた帝ブルー。
「可憐で儚い姫」に一目惚れしたブルーは、周囲に聞いた話から、あれは権大納言家の妹姫だと誤解をして、姫にそっくりという兄にせめて会ってみたいと元服を命じた……それが本当は出会った本人だとも知らずに……という経緯があります。

ブルーは最初、兄を通じてそっくりだという妹のことを見ているつもりだったのに、そのうち清廉で快活で気持ちのよい人物である兄のジョミーに惹かれていく。
一方姉のジョミーも、優しくて立派な帝のことを尊敬して、敬愛するようになる。
ところがちょっとした勘違いから後に引けなくなり、ジョミーは従妹に当たる三の姫・シロエと結婚することに。
嫉妬で怒り心頭なブルーは、自分は元より妹のジョミーと会いたかったのだと自分を納得させて、妹のジョミー姫を尚侍として宮廷に出仕させるように父親であるハーレイに命令を下す。
そこで弟のジョミーがついた役職は、我侭放題の東宮ブルーの世話係だった。

こんなかんじで逆転姉弟がそれぞれ元の性別の格好に戻って、帝と東宮とハッピーエンドに至るまで繰り広げられるドタバタ劇。
キースの役である宰相中将は、最初姉のジョミーのライバルだったものの、直接知り合ってからは親友になった、という人。
途中からは男と思っている同僚のジョミーに恋をしてしまい、あやしの恋(同性愛)だと思い悩むことに(^^;)
最終的にこの人は三の姫(シロエ)と結婚します。

だから原作漫画ではちゃんと、男女のカップルが3組できあがるんですよ~。
このパロだと男女なのは帝ブルーと姉ジョミーのカップルだけですが(笑)
(いや、この話だとシロエも女の子になるから、ここも男女カップルか)

そういえば、帝には既に二人の妻がいるんですが、ひとりはフィシスとしても、もう一人が思い浮かばない……。(ちなみにそのうちの一人はシロエ(三の姫)の姉。なのに帝がシロエのことも入内させるという噂が立って、姉妹で寵を競わせるなんて!と怒ったジョミーが三の姫とは先に結婚の約束をしていると帝に言っちゃったのが結婚のきっかけだったり)

この話にすると、帝である兄のブルーは歌姫のブルーくらいマダオ。二人の妻に圧倒されっ放しのハーレイもやっぱりマダオ(笑)
ハーレイの二人の妻って、姉ジョミーの母である豪快な方はブラウとしても、弟ジョミーの母である神経質な人はエラくらいしか適役がいないかな。


……部屋を捜索しても見つからなかったら、漫画のざ・ちぇんじを買いに行こうかな……。久々に読みたくなった。
え~、毎回毎回やってますがまたガンダム00のことです。
テラサイトのくせにいっつも感想が長くなるので今回は短く。
……というか、長く書けないです。兄貴……orz


緊迫した状況が続く中、コーラは毎回笑いを提供してくれます。いい奴だ。
あんな高性能なモビルスーツに乗っていながら、破片にぶつかって体勢を崩してそのまま流れて行くっていうのはどうなんだ、AEUの模擬戦エース!
きっちりエースらしい働きを見せても「ここぞ」というときはこれか。

トランザムシステムの理屈は分かるような分からんような、分かるわけない理屈でした。つーか、太陽炉とGN粒子なるものが何か分からないんだから理解しようがない(笑)
通常の三倍って、赤い機体って、どこのシャアか。

兄貴……。
あの、目の再生手術を拒んだときから、ある程度は覚悟してたんですけどね……。
やっぱりこうなったかあ……。
ロックオンはフェルト、ティエリアと人に心を開くことがなかなか出来ないで居る人たち(あー、刹那も含めて)の心を柔らかくする手助けができた優しく貴重な人だったのに。
戦いしかないソレスタルビーイングの中で、心の奥底に深い思いを抱えているにしても、一番バランスの取れた人が居なくなってしまうなんて……。
しかもあれ、アリーは倒せてないんですよね、たぶん。スローネの機体は大破させたようだけど。
「罰は戦争根絶を実現してから受ける」なんていうからには、自分の行為を罪として感じていたんだと思うとつらいです。
家族の復讐と、その先に希望を見出すためとはいえ自分は罪を重ね続ける行為と、どちらも背負うには重い気持ちだっただろうな……。

刹那がKPSAに所属していたことを知ってそれを詰問したとき、「俺が死んでもあんたが戦争根絶をやってくれる」と刹那が言った言葉が、そっくりロックオンに移ったのかと思うと……泣ける。
ラッセが言ったように、戦争根絶なんて本当にできるとは思わない、の答えは最終回までには出るんでしょうけれど、せめてそれを心から願ったマイスターたちの想いが少しでも報われる結果が出ればいいなと思います。
最後にハロがずっとロックオンを呼び続けた声が悲しかった。フェルトの涙も。
No.122 理解不能
ホワイトデー更新その2。教授ブルーと学生ジョミーの話をば。
一応バレンタインデーの話からの続き。(バレンタイン話
やっぱり3月14日当日より数日前の話から始まります。



「お兄ちゃん、ホワイトデー楽しみにしてるから」
笑顔で告げた妹のレティシアに、ジョミーは僅かに頬を引きつらせた。
「……三倍返しとかは、将来の彼氏に期待しろ」
「えー!別にすごいものをねだってるんじゃないのに」
「ホテルシャングリラのケーキなんて十分高い!」
しかもレティシアがねだったのはカットケーキではなく、ホールでだ。
指で軽く額を突くと、嫌がって避けながらレティシアは可愛らしく頬を膨らませた。


妹へのホワイトデーのお返しは、ホールケーキとまではいかないまでも希望通りホテルのケーキを用意するつもりで、ジョミーはふと最近懇意になった大学の教授のことを考えた。
ブルーには先月の14日、壊滅的な味覚音痴お勧めの店とは思えないような料理の美味しいレストランで、バレンタインデー限定のお勧めメニューをご馳走になった。
カップルが溢れる店内で、男同士でバレンタインメニューは少々気恥かしかったけれど、この日限りと言われるとつい限定メニューを頼みたくなると言ったブルーの気持ちもよく分かる。
最初は値の張りそうな外観と内装に緊張で硬くなっていたが、いざ運ばれてきた食事に手を付けると、あまりの美味しさに思わず笑みを零してしまったほどだ。
……そんな料理にすら、ブルーは調味料を惜しげもなく振りかけたけれど。
何かお返しをしたほうがいいのだろうか。
あれに釣り合うお返しは無理だとしても、せめて心ばかりのものでも。
けれどあれは別にバレンタインの贈り物でもないのだから、ホワイトデーに何か返すのもおかしな気がする。
腕を組んでしばらく考えたジョミーは、まだ日付に余裕もあるし、明日弁当を届けに行ったときにそれとなく話を向けてみようと結論付けた。

「ジョミー、14日に予定はあるかい?」
弁当を届けに行くと、こちらから訊ねるよりも先に予定を聞かれてしまった。ジョミーの予定を尋ねるということは、ブルーは空いているのだろう。バレンタイン当日もジョミーと過ごしていたのだから今更だが、これは本格的に恋人などいないのだろう。女性受けは良さそうな人なのに。
ジョミーは弁当の包みをデスクに置きながら、荒れ放題の研究室を見回した。
もっとも、この部屋の有様を見たら百年の恋も冷めるかもしれない。
「ジョミー?」
「あ、はい。大丈夫です。空いてますけど、何かご用ですか?」
「いや、この間のレストランで今度はホワイトデー限定メニューがあってね。あの店は君も気に入ったようだから、また食事でもどうかと思って」
「そんな!この間ご馳走になったばかりなのに、悪いですよ!」
「気にすることはない。僕の我侭だ。考えてもみたまえ。14日にあの店で一人で食事をするのは空しい気がしないか?」
言われて想像してみる。
カップルの溢れる高級レストランで、一人で食事。普通の日の普通の食事ならともかく、ホワイトデー限定メニューを一人で食べるとなると……ともすればフラれたようにも見えるだろう。男二人でも楽しげに食事をしていれば限定メニュー目当てと正当に解釈されるとも思う。
「でも……奢ってもらってばかりじゃ悪いし……他に誘う人とか、いないんですか?」
わざわざ知り合い程度のジョミーを誘うくらいだからいないのかもしれないけれどと、一応訊ねてみてもブルーは肩を竦めるだけだ。
いないのかと思えば、ブルーは眼鏡を外しながら苦笑を零す。
「僕は君と行きたいんだよ」
レンズを隔てずに赤い瞳と目が合うと、胸の奥で大きく鼓動が跳ねた。
それが一体なんだったのか、思わず胸に手を当て言葉を捜すジョミーに微笑みながら、ブルーは軽くレンズを拭って眼鏡を掛け直す。
「ジョミーが付き合ってくれたら嬉しい」
あのレストランの料理は美味しかった。ブルーは食べに行きたがっている。一人で行くには敷居が高いという気持ちもよく分かる。
けれど、先月に奢ってもらったのに今月もということがどうしても気になる。いくらお返しといっても、まさかジョミーが奢ることが出来るような店でもない。
「えっと……」
「駄目かな?」
「駄目って……言うか……」
レンズの向こうの赤い瞳が僅かに陰って、ジョミーは慌てて手を振った。
「だって、ホワイトデーってあの量のお返しもあるんでしょう?その上ぼくが奢ってもらうなんて悪いし……」
先月の14日、一緒に食事に出かける前にこの部屋を訊ねたとき、デスクの上に山積みになっていた包みを見た。正確には数えていないが、かなりの数があったはずだ。賄賂代わりのチョコはともかく、事務の人たちとか、個人的な知り合いにはお返しをするだろう。
まさか賄賂のチョコが半分もあるとは思えないから、義理返しとはいえあれは相当な額になるに違いない。
「まあ……それなりに数はあるが、どうせ大した物を返すわけでも……ああ、そうだ」
ブルーは両手を組んでその上に顎を置くと、にっこりと綺麗に微笑んだ。
ジョミーだっていい加減、それが何かを企んでいる笑顔だとくらいは悟れる。
「君がお返しの菓子を作ってくれないか?」
「……はあ!?なんでぼくが!?」
どうしてそんな話になるのかと思わず裏返った声を上げて自分を指差せば、ブルーはわざとらしく重々しい様子を作って頷く。
「そうすれば僕の出費も押さえられ、君も僕に何か返した形になるから一緒に食事に行っても、正当な報酬だと思えるだろう?」
「え、でも、義理とはいえホワイトデーのお返しですよ?」
「手作りなんて心が篭っているじゃないか」
それはあなたが作って返した場合では。というか、バレンタインならともかくホワイトデーに手作りでお返しなんてあまり聞いたことがない……。
心の中ではそう呟いていたのだが、名案とばかりに目を輝かせるブルーにそうと正面から言えなくて、ジョミーは溜息を零した。

しかしジョミーが本当に驚いたのは、無事に件のレストランでブルーと差し向かいで14日のホワイトデー限定メニューに舌鼓を打った、その翌日のことだった。
正当な報酬とは言われたけれど、奢ってもらったお礼にと連日で弁当を持参した、その通りすがりの事務室から聞えてきた会話に思わず足を止める。
「ブルー教授に恋人が居たなんて、ショックだよねー」
開けっ放しのドアから僅かに見える光景からすると、どうやらお茶の時間のようだ。姿が見えたのは一人だけだったものの、その女性が摘んでいるのは一昨日ジョミーがブルーに渡しておいた、ホワイトデーのお返しのクッキーだった。
せっかく作ったからついでにとレティシアにもクッキーでお返しをして、手抜きだと怒られたそれだ。
それにしても、ブルーに恋人がいたとは何の話だろう。バレンタインもホワイトデーもブルーはジョミーと過ごした。それなのに恋人がいるのだろうか。
「えー、やっぱりそういうこと?」
「当たり前よ。こんな手作りクッキーでお返しって……思い切り牽制されたようなものじゃない。『私の男に手を出すな』ってことでしょ。包装まで可愛くしちゃって」
それはレティシアに手抜きだと怒られたから、せめて見た目だけでも整えようとしただけのことで。
誤解だと事務室に乱入したいけれど、ジョミーはまだこの学校の正式な学生ではないのに敷地に入っている身だし、第一ホワイトデーのお返しに本人ならまだしも、他の人の手作りお菓子だっただなんて勝手に公言するのもどうだろう。
「それに教授も、いかにも恋人がいることをアピールしてるみたいなお返しを、それは嬉しそうに渡してきたでしょ?あれは恋人自慢も入ってるわね」

「教授!大変な誤解をされてますよ!誤解を解かないと!」
慌てて階段を駆け上がって研究室に飛び込むと、経緯を説明されたブルーは、別に慌てた様子も、気を悪くした様子も見せずに、逆に笑顔で首を傾げる。
「どうしてだい?」
「どうしてって……だって、恋人がいるなんて誤解されてたら、本当の恋人ができませんよ?」
「構わないさ。いっそ君を恋人だと公言したいくらいだね」
「はあ!?」
「ああ……でももうすぐ入学するのに、それはさすがに良くないかな。せっかくジョミーが入学するのに、学生に手を出したと職を追われたらもったいない」
もったいないどころの話ではないと思う。大体、一万歩譲って女子学生ならまだしも、男子学生に手を出したなんて言われては大問題だと思うのだが。
冗談だと言うどころか、公表するとしたら卒業してからだね、なんて冗談を重ねる理解不能な相手に、ジョミーは頭痛を覚えて額を押さえながら溜息を零した。
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