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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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本編に戻ります。
ブルーが避けがちなのでジョミーからアプローチするしかない、というのは新鮮です(^^;)
14歳頃のジョミーなら、友達になりたいと思った相手には積極的にアプローチするか、あるいは自然に仲良くなった、の方かと思うのですが、以前の記憶があってブルーが相手となるとなかなか微妙な感じに。


目次





「おはようございます、ブルー先輩」
玄関を開けた先で待っていた少年の姿に、ブルーは早くも扉を閉じたくなった。
また明日とは言っていたが、今朝になってみれば訪ねて来る気配がなかったので油断していた。
「鞄持ちます」
「結構だ」
にっこり微笑み両手を差し出したジョミーににべもなく言い捨てると、さっさと学校へ向かって歩き出す。
ジョミーの母親を前に一応は取り繕った昨日とは違い、明らかに嫌がったのは分かっているはずなのに、ジョミーは気にした様子もなく小走りですぐ後ろについてきた。
「でも、鞄も結構重いでしょう?」
「たかが通学鞄ひとつがそんなに負担になるほど、僕が虚弱に見えるということか?」
ジョミーの意思を挫くつもりの嫌味のはずが、口にしてみると本当に腹が立ってくる。確かにブルーはお世辞にも逞しいとは言えず、ジョミーは単に怪我のことを気にしているだけだと分かっていても、辛うじて人並み程度という体力と筋力の無さはブルーにとってコンプレックスになっている。
ましてジョミーだって大して大柄ではない……いやむしろブルーよりも背が低く、腕だって細いのに、手を貸すと言われるのは不愉快だ。
「そんなこと言ってません。でも傷に響きませんか?」
「薬が効いている。いいから君はもう気にするな。明日も来なくていい」
「そんなわけには行きません。ママにだって叱られるし、ぼくを助けると思って世話されてくださいよ」
「どうして僕が譲歩しなければならないんだ!」
いちいち癪に障る。律儀に答えず、すべて無視してしまえばいい加減にジョミーとて諦めて離れるだろうにと思うと更に苛立つ。うるさい連中に纏わりつかれても無視することなど慣れているはずなのに、どうして。

振り返らずに、気配だけで後ろを探る。
振り回されて苛立っているはずなのに、ジョミーの気配が傍にあることは不快にはならない。
子供の頃に散々病院で身体中を触られ、ESPチェックでは身体の内側までもを探られるような感覚に晒されたせいか、ブルーは人肌も、近すぎる人との距離も気に障る。
特に苦手なのは大人の、それも白衣を着た医者や、あるいは研究者といったタイプの人々なので、病院と検査が愉快ならざるものとして深層意識に刷り込まれたのかもしれない。その点で言えば、ブルーよりも小さな、学生のジョミーは条件には当てはまらないが、それにしたって。

「お願い、待って」
後ろから腕を掴まれて、考え込んでいた意識が浮上して、足が止まった。
視線を落とすと、手首を掴んだ手の甲が見える。一年次生ということはブルーより4つ年下のはず。まだ子供だ。だがそれにしたって柔らかい掌。
「ぼくの顔を見たくないくらいに嫌い?」
そうだと言えばいい。今まで何度となく言ってきた言葉だ。ブルーの周りに纏わりつく女生徒たちを散々冷たくあしらった。あれと同じだ。
無言のブルーにそれが了承の意だと思ったのか、ジョミーの表情が曇った。
けれどジョミーはすぐに俯いてその表情を隠す。
「……ごめんなさい。しつこくし過ぎた」
手首を掴んだ指から力が抜ける。
あれだけ押しかけてきたのに、随分とあっさりと退くものだ。
手首から離れる指を、掌を、目が追う。
掴まれて手首を覆っていた熱は、すぐに消えた。

「別に嫌いだとは言っていない」
何を、言っているのだろう。せっかく相手が諦めそうだったのに。
弾かれたように顔を上げたジョミーの丸められた瞳に、ブルーの眉間に知らず皺が寄る。
「ただなんでもないことにまで口出しをされることが煩わしいだけだ」
「嫌って、ないの……?本当に?」
「聞いているのか?」
「聞いてる!ちゃんと聞いてる。よかった、だって嫌われていても仕方がないと思っていた」
本当に聞いているのだろうか。
零れるような笑顔を見せるジョミーを疑いながら、どうして完全に諦めさせるように更に突き放さなかったのか、自分がよく分からない。
「あー本当によかった!これで気兼ねなく渡せる。えっと……」
ジョミーは鞄の中から紙を取り出すと、サラサラと何かを書き付けてそれを差し出してくる。
「はい、ブルー先輩」
「……これは?」
思わず受け取ってしまったそれを見て、ブルーの声が低くなる。
見れば聞くまでも無い。番号は、各個人で持っているはずの携帯端末の番号だ。こういった紙を差し出されたことは幾度となくあるが、咄嗟とはいえ受け取ったのは初めてだった。
「なにかあったらそれで呼び出してください。あなたからのコールならいつでも駆けつけます」
「そこまでしなければならないほどの怪我か!?」
渡された紙を突き返そうとしても、ジョミーは両手を身体の後ろに回してそれを拒絶する。
「朝と放課後は必ずお迎えに上がります。それ以外で必要なことがあれば、ってことで」
「朝と帰りの迎えも必要ない!君の番号も必要ない!しかも今、『気兼ねなく』と言ったか?もしかして僕が君を嫌っていようと押し付ける気だったのか!?」
「だって、嫌ってるなら顔も見たくないだろうから、少しお迎えに上がる回数を減らしたほうがいいかと思って。それがあれば、頻繁に顔を出さなくても何かあったときに呼び出せるでしょう?」
「嫌っているなら番号も見たくないものではないのか?」
「治療費のこととか、話があるときにあなたからぼくへの連絡の取り方を探させるほうが失礼じゃないですか」

離れると思ったのだ。
ブルーに嫌われていると思い込んだ彼が、自分からようやく離れてくれるのだと。
……引き止めるまでもなく、初めからあちらにそんな意図はなかったらしい。
何を、やっているのだろう。いなくなってくれれば、少なくとも少し距離をとってくれるだけで、すっきりしたはずなのに。
もうすでに冷えた手首。
伏せられた、あの時の表情。
「先輩?学校行かないんですか?」
まるで小動物のように小首を傾げて伺うジョミーを見下ろしても、答えは出ない。
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