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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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ブルーが鈍すぎて思わず苦笑いです。こっちのブルーはまだ17年しか生きてないんだから300歳と一緒にしては気の毒なんですけれど。
みんなマイペースな人たちの中で、サムは気遣いの人。マツカもリオいないと一人で大変です(^^;)

実は書きあがり間近でうっかり一度全部消してしまいまして、書き直し分ですorz
大して変わり映えもしないのに、こういうときって消してしまったものの方がまだ少しは上手く書けていた気がするんですよね……証拠がないから特に(笑)


目次




「鞄持ちますってば」
「だから、必要ないと何度言えば君は理解するんだ」
後ろから手を伸ばされて、それを振り払う。ジョミーは手伝うつもりなのかもしれないが、どうにもじゃれてきているようにしか思えないのは、その仕草のせいだろうか。
肩紐に掛かった手をもう一度叩き落したところで、昨日を髣髴をさせるかのように、見知った少年と行く道を合流することになった。
昨日と違うことは、連れの少年がいたことと、まっすぐにこちらに向かってきたことだ。
「よおジョミー!おはよう」
「おはよう、サム。それにキースも」
「ああ、おはよう」
サムと呼ばれた少年は、昨日校庭でジョミーと肩を組んだあの少年だ。マツカの話では、確かキースの友人とのことだった。
「迎えに行ったら、おばさんにもう家を出たって言われて驚いたぜ」
「あー、今日はね」
笑顔の少年に、ジョミーも曇りのない笑顔を向ける。
ピリッとした痛みのような感覚が指先に走った。
キースはそんな様子には気づいた風もなくブルーを見て、何も言わずにそのままジョミーに向き直る。
「ブルーのことは気にするなと言っただろう。むしろ面倒がると」
どうせ邪険にされているのだろうという意図が見えたが、本当のことなので黙っておく。それにキースの言うことは正しい。
「そんなわけにはいかないよ。だって骨にヒビが入ってたんだよ!責任取らなきゃ!」
「ヒビ!?昨日の被害者の人なのか!?あ、す、すみません!俺、サムって言います。昨日は俺とジョミーのせいでどんなことに巻き込んじゃって……」
「キースも言った通り、気にしなくていい」
人の良さそうな、感じの良い少年に、なぜか苛立ちを覚える。
素っ気なく通り過ぎ様、視界の端にサムの腕がジョミーの首に回る様子が映って苛立ちは頂点に達した。

「お前さ、なんでそういう大事なことを俺に言わないんだよ」
「だってぼくが勝手に飛び降りなければ先輩を怪我させることもなかった。これはぼくの責任だ。だからブルー先輩のお世話はぼくがする」
「俺もするって」
一人先に歩き出したブルーを慌てて追ったからか、少年たちは声を潜めることを忘れているらしい。会話がすべて筒抜けだ。しかもブルーに取っては大変面白くない話が。
「どちらも必要ないのではないか?」
「キースの言う通りだ」
この際、ブルーの心情を理解したくなくともこういったことでは分かってしまうキースがいるうちに、はっきりさせておこうと振り返る。
ジョミーは昨日の校庭のときのようにサムと肩を組んで、顔を寄せ合ってひそひそ話の体勢だった。右の眉の角度を上げたブルーは、眉間のしわもそのままに二人を睨みつける。
「ヒビについては固定した。それでも痛むときは鎮痛薬も持っている。世話は必要ない!」
睨みつけられて僅かにおよび腰になったサムと、ほらみろと言わんばかりのキースに挟まれて、ジョミーだけは肩を組んだ友人に目を向けた。
「ほら、こう言ってるから、二人で押しかけたら余計にダメなんだって。ぼくがするから」
「どっちかがするなら、そりゃ俺だろ?お前は非力なんだし」
「非力って言うな!」
「僕は人数を減らせといっているのではなく、来るなと言っているんだ」
「大体、世話と言っても何をするつもりだ」
キース本人はこう言われるのは不本意に違いないが、いい助太刀だ。世話など必要ないと、言い含めてくれ。
そんなブルーの考えなど、何度も言われて知っているはずのジョミーがあっさりと無視をする。
「鞄持ちとか」
「持ってないだろう」
「だって先輩が渡してくれないんだもん」
ジョミーは拗ねた口調で唇を尖らせる。
「必要ないからだ」
何度同じことを言えばいいのか、うんざりとしてブルーはまた少年たちを置いて歩き出す。
鞄を肩に掛け直そうとして、動き方が悪かったのか肺の辺りが痛んだが、顔に出さないように奥歯を噛み締めた。

「え、えーと……それにしてもジョミー、お前がこんなに早く登校できるなんて珍しいな」
刺々しい空気が息苦しかったのか、後ろから付いて来ながらサムはいささか苦しい話題転換をする。
「だってお世話に行くのに寝坊してどうするのさ」
「やればできるんならいつもやれよ……昨日も遅刻寸前になったのは誰のせいだと……」
「ぼくにも色々あるんだよ。自分のためだったら起きられるもんか」
「開き直るな……」
とうとうキースも呆れた声で溜息をつく。
「そんなに朝が弱いなら無理をしなくて………待て、君。さっき家の前で待っていたな?一体いつからいた」
もう来るなと言い差して、再び足を止めて振り返る。
ジョミーが家の近くで待っていたことを思い出した。呼び鈴を鳴らされたわけでもなく、あるいはちょうどタイミング良くブルーが家を出た可能性もある。だが恐らくは違う。
「あなたが出てくる、ほんの少し前ですよ」
「だったらどうして呼ばなかった。僕が家を出るのがもっと遅れていたら」
「そうしたら、それまで待つだけで……」
「休む可能性は考えなかったのか?」
怪我をしているのだ。大したことはないと言い続けはしたが、急に休む可能性だってあるだろう。まさか出て行くまで呼びもせずに待っているつもりだったのかと驚けば、ジョミーは初めて気づいたように手を叩いた。
「それは考えてませんでした」
頭が痛い。
「……なぜ呼ばなかった」
額を押さえるブルーに、ジョミーはとんでもないと首を振る。
「だってぼくは先輩に不自由が少しでもないようにお世話するために行ってるんですよ?あなたのペースを乱すつもりはありません」
もう十分乱されている。
声を大にして叫びたい衝動を堪える代わりに、ブルーは深く息を吐き出した。おかげでまた胸が痛む。
世話に来ているのか、怪我に負担を掛けに来ているのかどっちだと問いたいくらいだ。
「……家の傍でずっと待たれるのは迷惑だ」
「すみません……」
近所の目などもあるのだと思ったのか、ジョミーはきゅっと唇を噛み締めて俯く。
「そんな待ち方をされるくらいなら、家まで押しかけられた方が幾分もマシだ」
恐らく、この少年には何を言っても無駄だ。これだけ言っても、少しも聞きはしない。
「……それって……」
弾かれたように顔を上げたジョミーの鼻先に、肩から降ろした鞄を突きつける。
「したいなら鞄持ちでもなんでもすればいいだろう」
「はいっ」
冷たく言われても何がそんなに嬉しいのか、ジョミーは鞄を受け取って笑顔を見せる。先ほど、サムに向けていたような、屈託のない笑顔。

結局、僕が妥協するのか。
空を見上げて息を吐いたブルーは、荷物のない身軽な様子で足を踏み出した。
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