日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.161 太陽の花33
Category : 転生話
久々すぎて、どこまで書いたのか忘れそうな転生話の続きです。す、すみません…。
よりによって前回、サイオン能力に勝手なパターンを作っていたところで終わっていたんでした。ギャース!
サイオンの基本能力はテレパスですし、カリナの出産のときに痛みを共有したりもあったので、その応用みたいなものだと思っていただければと(^^;)
しかし久々の更新で、番外編にしようかと迷ったブルーが出ない話です(……)
目次
ジョミーが自覚のないミュウの可能性だとか、急におかしなことを訊ねてきた上級生が一人思考に沈むと、シロエはジョミーたちの後を追ってセンターに足を向けた。
今日もジョミーと一緒に登校してきたのかと思えばムカムカと苛立ちを覚える相手に、律儀に疑問に答えたのだから十分だろう。
建物内部に続く自動扉をくぐると、ホールの入口でジョミーと弟が押し問答をしていた。
「だからいいって!ちょっと擦り剥いただけで大した怪我じゃないし」
「消毒なんてすぐに済むよ!時間だってまだ大丈夫だろう?なんでそんなに急いでるのさ!」
「連れがいるんだよ。急がないとブルーが行っちゃうかも……」
「一緒にいた人?友達だったらもうすぐ兄さんと一緒に来るんじゃないの?」
「そ、それは……」
言葉に詰まったジョミーは、建物に入ってきたシロエに気づいて、そしてその周囲を視線で探ってがっかりとした様子で眉を下げた。
「友達っていうか……と、とにかくもう行かないと」
ブルーがいないことに落胆したとはわかっているが、自分では期待外れだと言われたようで少し腹が立つ。
ちょっと友達甲斐がないんじゃないのと嫌味を言うより先に、タージオンが爆発した。
「やっとジョミーに会えたのに!そんなにすぐに行っちゃうことないじゃないか!ジョミーはぼくのことなんてどうでもいいんだ!」
「お、おいタージオン!な、何も泣かなくても……」
拳を握り締めて、俯いて涙を零すタージオンを前に、ジョミーは慌ててしゃがみ込んで俯いたタージオンを下から覗きこむようにして、その頬を優しく撫でる。
「そんなこと言ってないよ。ただあの人に、先に行ってもらうとか、待っていてください……はちょっと言い辛いか。一言もなく置いてきちゃったからさ。それが気になっただけなんだ。タージオンに会えるのをぼくも楽しみにしてたよ」
「嘘だ。あんなにすぐにどっかに行きたそうにしてたのに」
「嘘じゃないって」
「………せっかく……せっかく久しぶりに会えたのに……ノアに来てから全然センターに来てくれないし……」
「ノアについてすぐには来たよ。アルテラの登録が必要だったしさ。入れ違いになってただけだ。でも、ごめんな。そんなにぼくに会うのを楽しみにしてくれたなんて思わなくて……」
ジョミーがそっと抱き寄せると、タージオンはその肩にしがみつくようにして顔を埋める。
子供は素直に我が侭を言えて羨ましい。
編入早々に事件があったからとはいえ、せっかく同じ学校の、しかも一緒のクラスになれたのに、ジョミーは何かと上級生の所へと行ってしまう。
だがまさかタージオンのようにそれが寂しいと癇癪を起こせるはずもない。
ジョミーと初めて会ったのは、タージオンのサイオンが強くなりすぎて抑制が上手くいかなくなった頃のことだ。
強すぎるサイオンに振り回される弟をどうにか手助けしようとシロエが精神感応を試みると、瞬発的なサイオンを持つシロエまでそれに影響されるという始末だった。
そんなとき、アルテメシア星のセンターにミュウではないのに下手なミュウ以上に、強いサイオンを収められる子供がいると言われ、ものは試しにと兄弟でアタラクシアのセンターに送られた。
そこにいたのがジョミーだ。
ジョミーは時に不安定になる妹のアルテラと、友人の弟であるコブという二人のサイオンの強い子供に深い信頼を寄せられていた。
ミュウの力は想いの力。
シロエは初め、ジョミーの話は単に兄妹だとか、知り合いだとか、そんなことが影響しているだけだろうと期待もしていなかった。兄である自分が弟を守れないのに、たまたまアルテラ、コブとサイオンの強いミュウと付き合いの深いというだけのジョミーになにができると反発した部分もあったのかもしれない。
タージオンが先に馴染んだのも同じミュウであるアルテラで、その延長でジョミーと付き合い始めたようなものだった。
そうやって打ち解け始めると、ジョミーが周囲の人たちとは少し違うことがわかり始める。彼女は感情も思考も、隠そうともしない。他のセンターの職員達とは違い、感情を晒そうと努力するのではなく、あくまで自然に、あるがままで。
人の感情に触れることを恐れるのは、人間もミュウも同じだ。触れられるほうだって嫌な思いをするかもしれないが、人があえて表に出さない感情を拾ってしまう方だってつらい。それは時に家族であっても。
だがジョミーの感情はあまりにも率直で、それが怒りのようなものであっても触れてつらいという感覚はなかった。
ジョミーとアルテラが「兄妹」ではなく「姉妹」だと知ったのも、誰から聞いたのでもなくジョミーの思考を読んでのことだ。失礼なくらいに驚いたシロエを、ジョミーは笑うだけで少しも怒らなかった。
その傍が心地よいと、そう気づけば、心に強く左右されるミュウにとって心が惹かれるのは道理だ。
彼女が妹と友人の弟に信頼されたのは、その関わりに拠ったものではなく、ジョミーがジョミーらしくあり続けたから、信頼されるような関わりになったのだ。
皮肉なことに、タージオンがジョミーに懐きサイオン値が安定すると、それが別れの期限でもあった。
ジョミーたちがノアに来ると聞いたときは、兄弟揃ってどれほど喜んだことか。
ジョミーに会える、アルテラに会える、コブにも会えると家の中を飛び回る弟に両親は苦笑していたが、落ち着いて見せていたシロエだって嬉しくて跳ね回りたいくらいだった。
それなのに。
「なのにあいつが……」
会えることを心待ちにしていたジョミーは、ブルーに掛かりきりだ。怪我をさせた負い目があるのがわかるから少し寂しくても仕方がないと思っていたのに。
いくらジョミーが加害者だからって、ブルーのあの態度はなんだ。そんなに気に入らなければジョミーをとことん突き放せばいいのに、中途半端に突き放すだけで結局世話をさせて、ジョミーを独占する。
「ジョミーの気が引きたいだけなんじゃないのか?」
シロエが小さく吐き捨てた声に被せるように、ようやく落ち着いたタージオンの背中を軽く叩きながらジョミーがおずおずと訊ねた。
「あのさシロエ……ブルー先輩は……」
「さあ?先に行ったんじゃない?」
「そっか……」
ジョミーが溜息を零す後ろに、救急箱を手にしたコブがアルテラと駆け戻ってくる姿が見えた。
「あー!タージオン、ずるい!」
ジョミーに抱きついているタージオンに遠くから抗議が上がると、泣きついたところを見られた気恥ずかしさからか、タージオンはジョミーからすぐに離れて飛びのいた。
「ち、違うよ!泣いてなんかない!」
聞かれてもいないことを叫んで言い訳する弟にシロエが呆れる中、ジョミーは微笑ましいとでもいうように笑うだけだ。
「そういえばさ」
駆けつけたアルテラたちと、誰がジョミーの怪我を消毒するかで揉める弟を放っておいて、シロエはジョミーに目を向けた。
「さっきあいつが変なこと言ってたよ」
「あいつって……シロエ、ブルーは年上なんだから……」
「ジョミーにファントムペインが使えるかって」
溜息をついていたジョミーは、不審そうに眉を寄せる。
「……なんで?」
「さあ?あいつがどうしてそんなことを考えたのかなんて、ボクは知らない」
「シロエはなんて答えたの?」
「ジョミーはミュウじゃないから無理だって」
「………だよね」
大きく頷いたジョミーは、何かを考えるような様子で黙る。
けれどそのすぐあとに、アルテラに不意打ちのようにいきなり掌の傷に消毒液を塗られた痛みに悲鳴を上げた。
よりによって前回、サイオン能力に勝手なパターンを作っていたところで終わっていたんでした。ギャース!
サイオンの基本能力はテレパスですし、カリナの出産のときに痛みを共有したりもあったので、その応用みたいなものだと思っていただければと(^^;)
しかし久々の更新で、番外編にしようかと迷ったブルーが出ない話です(……)
目次
ジョミーが自覚のないミュウの可能性だとか、急におかしなことを訊ねてきた上級生が一人思考に沈むと、シロエはジョミーたちの後を追ってセンターに足を向けた。
今日もジョミーと一緒に登校してきたのかと思えばムカムカと苛立ちを覚える相手に、律儀に疑問に答えたのだから十分だろう。
建物内部に続く自動扉をくぐると、ホールの入口でジョミーと弟が押し問答をしていた。
「だからいいって!ちょっと擦り剥いただけで大した怪我じゃないし」
「消毒なんてすぐに済むよ!時間だってまだ大丈夫だろう?なんでそんなに急いでるのさ!」
「連れがいるんだよ。急がないとブルーが行っちゃうかも……」
「一緒にいた人?友達だったらもうすぐ兄さんと一緒に来るんじゃないの?」
「そ、それは……」
言葉に詰まったジョミーは、建物に入ってきたシロエに気づいて、そしてその周囲を視線で探ってがっかりとした様子で眉を下げた。
「友達っていうか……と、とにかくもう行かないと」
ブルーがいないことに落胆したとはわかっているが、自分では期待外れだと言われたようで少し腹が立つ。
ちょっと友達甲斐がないんじゃないのと嫌味を言うより先に、タージオンが爆発した。
「やっとジョミーに会えたのに!そんなにすぐに行っちゃうことないじゃないか!ジョミーはぼくのことなんてどうでもいいんだ!」
「お、おいタージオン!な、何も泣かなくても……」
拳を握り締めて、俯いて涙を零すタージオンを前に、ジョミーは慌ててしゃがみ込んで俯いたタージオンを下から覗きこむようにして、その頬を優しく撫でる。
「そんなこと言ってないよ。ただあの人に、先に行ってもらうとか、待っていてください……はちょっと言い辛いか。一言もなく置いてきちゃったからさ。それが気になっただけなんだ。タージオンに会えるのをぼくも楽しみにしてたよ」
「嘘だ。あんなにすぐにどっかに行きたそうにしてたのに」
「嘘じゃないって」
「………せっかく……せっかく久しぶりに会えたのに……ノアに来てから全然センターに来てくれないし……」
「ノアについてすぐには来たよ。アルテラの登録が必要だったしさ。入れ違いになってただけだ。でも、ごめんな。そんなにぼくに会うのを楽しみにしてくれたなんて思わなくて……」
ジョミーがそっと抱き寄せると、タージオンはその肩にしがみつくようにして顔を埋める。
子供は素直に我が侭を言えて羨ましい。
編入早々に事件があったからとはいえ、せっかく同じ学校の、しかも一緒のクラスになれたのに、ジョミーは何かと上級生の所へと行ってしまう。
だがまさかタージオンのようにそれが寂しいと癇癪を起こせるはずもない。
ジョミーと初めて会ったのは、タージオンのサイオンが強くなりすぎて抑制が上手くいかなくなった頃のことだ。
強すぎるサイオンに振り回される弟をどうにか手助けしようとシロエが精神感応を試みると、瞬発的なサイオンを持つシロエまでそれに影響されるという始末だった。
そんなとき、アルテメシア星のセンターにミュウではないのに下手なミュウ以上に、強いサイオンを収められる子供がいると言われ、ものは試しにと兄弟でアタラクシアのセンターに送られた。
そこにいたのがジョミーだ。
ジョミーは時に不安定になる妹のアルテラと、友人の弟であるコブという二人のサイオンの強い子供に深い信頼を寄せられていた。
ミュウの力は想いの力。
シロエは初め、ジョミーの話は単に兄妹だとか、知り合いだとか、そんなことが影響しているだけだろうと期待もしていなかった。兄である自分が弟を守れないのに、たまたまアルテラ、コブとサイオンの強いミュウと付き合いの深いというだけのジョミーになにができると反発した部分もあったのかもしれない。
タージオンが先に馴染んだのも同じミュウであるアルテラで、その延長でジョミーと付き合い始めたようなものだった。
そうやって打ち解け始めると、ジョミーが周囲の人たちとは少し違うことがわかり始める。彼女は感情も思考も、隠そうともしない。他のセンターの職員達とは違い、感情を晒そうと努力するのではなく、あくまで自然に、あるがままで。
人の感情に触れることを恐れるのは、人間もミュウも同じだ。触れられるほうだって嫌な思いをするかもしれないが、人があえて表に出さない感情を拾ってしまう方だってつらい。それは時に家族であっても。
だがジョミーの感情はあまりにも率直で、それが怒りのようなものであっても触れてつらいという感覚はなかった。
ジョミーとアルテラが「兄妹」ではなく「姉妹」だと知ったのも、誰から聞いたのでもなくジョミーの思考を読んでのことだ。失礼なくらいに驚いたシロエを、ジョミーは笑うだけで少しも怒らなかった。
その傍が心地よいと、そう気づけば、心に強く左右されるミュウにとって心が惹かれるのは道理だ。
彼女が妹と友人の弟に信頼されたのは、その関わりに拠ったものではなく、ジョミーがジョミーらしくあり続けたから、信頼されるような関わりになったのだ。
皮肉なことに、タージオンがジョミーに懐きサイオン値が安定すると、それが別れの期限でもあった。
ジョミーたちがノアに来ると聞いたときは、兄弟揃ってどれほど喜んだことか。
ジョミーに会える、アルテラに会える、コブにも会えると家の中を飛び回る弟に両親は苦笑していたが、落ち着いて見せていたシロエだって嬉しくて跳ね回りたいくらいだった。
それなのに。
「なのにあいつが……」
会えることを心待ちにしていたジョミーは、ブルーに掛かりきりだ。怪我をさせた負い目があるのがわかるから少し寂しくても仕方がないと思っていたのに。
いくらジョミーが加害者だからって、ブルーのあの態度はなんだ。そんなに気に入らなければジョミーをとことん突き放せばいいのに、中途半端に突き放すだけで結局世話をさせて、ジョミーを独占する。
「ジョミーの気が引きたいだけなんじゃないのか?」
シロエが小さく吐き捨てた声に被せるように、ようやく落ち着いたタージオンの背中を軽く叩きながらジョミーがおずおずと訊ねた。
「あのさシロエ……ブルー先輩は……」
「さあ?先に行ったんじゃない?」
「そっか……」
ジョミーが溜息を零す後ろに、救急箱を手にしたコブがアルテラと駆け戻ってくる姿が見えた。
「あー!タージオン、ずるい!」
ジョミーに抱きついているタージオンに遠くから抗議が上がると、泣きついたところを見られた気恥ずかしさからか、タージオンはジョミーからすぐに離れて飛びのいた。
「ち、違うよ!泣いてなんかない!」
聞かれてもいないことを叫んで言い訳する弟にシロエが呆れる中、ジョミーは微笑ましいとでもいうように笑うだけだ。
「そういえばさ」
駆けつけたアルテラたちと、誰がジョミーの怪我を消毒するかで揉める弟を放っておいて、シロエはジョミーに目を向けた。
「さっきあいつが変なこと言ってたよ」
「あいつって……シロエ、ブルーは年上なんだから……」
「ジョミーにファントムペインが使えるかって」
溜息をついていたジョミーは、不審そうに眉を寄せる。
「……なんで?」
「さあ?あいつがどうしてそんなことを考えたのかなんて、ボクは知らない」
「シロエはなんて答えたの?」
「ジョミーはミュウじゃないから無理だって」
「………だよね」
大きく頷いたジョミーは、何かを考えるような様子で黙る。
けれどそのすぐあとに、アルテラに不意打ちのようにいきなり掌の傷に消毒液を塗られた痛みに悲鳴を上げた。
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