日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.179 上邪
Category : 小話・短文
昨日呟いていた怪談ものパロ……のはずが、シャン学の二人になったリサイクルもの小話。いつものパターンです。
ブルーが在学中に戻っていますがお気になさらずに(笑)
そして再び文化祭に戻っていますが、それもお気になさらずに(おい)
「今度の文化祭で生徒会の出し物は怪談演劇に決定しました」
クラスのホームルームが長引いて、遅れて青の間に入ったジョミーはにこやかなリオに言われて扉に手を掛けたまま目を瞬いた。
「え?そうなんだ……というか生徒会でも出し物なんてやるの?当日は役員の仕事だけで忙しいんじゃないの?」
今まさにクラスの出し物の決定を話し合いをしてきたばかりのジョミーは、渋面を作って一同を見渡す。
クラスと生徒会の仕事、それに加えて更に生徒会でも演劇?
「大丈夫だよ、ジョミー。心配しなくていい」
ブルーは奥のテーブルに両肘をついて組んだ手に顎を乗せ、笑顔で安請け合いをする。きっと去年も両立させたのだろう。先人の自信満々の笑みにジョミーは軽く息をついた。
ブルーにできたからといって、ジョミーに同じようにできるとは限らない。既に目が回るほどの忙しさを覚悟していたのに、それにまだ上乗せされるのか……。
それでも慣例なら生徒会でも出し物をするしかないだろう。それにしても、もっと簡単な展示物などにすれば楽なのに、なにも手の掛かる演劇を選ばなくたっていいと思う。
「でも、どうして怪談なんですか?怪談ってよっぽど凝って作らないと白けるだけのような気もするんですけど」
「いやなに、説話や名作といった類の話で夫婦といえば、大抵主人公の両親だったり、既に落ち着いた仲だったりするだろう?童話などは恋人関係が最後に成立して終わりなどだしね」
「ああ、夫婦役がやりたいんですか」
そう言うからにはブルーは夫役をするつもりだろう。だとすれば妻役はフィシスになる。ならジョミーは端役で済むかと気楽に頷く。
「でも怪談の夫婦って、それも大抵ひどいラストになると思うんですけど……」
「いや、これも夫婦の約束をするというものだが、牡丹灯篭なんてどうだろうと思ってね」
「牡丹灯篭……というと、死んだ人が毎晩やってきて、お札を貼って隠れていたけど最後に剥がしてしまうっていう、あの?」
「そう、想う人と死してなお添い遂げた、その話だ」
いや、連れて行かれた方からしたら、かなり迷惑な話だと思うけど。
連れて行かれる役のブルーがそう言うなら、それでいいのだろう。
恋人が死んだと知らずに逢瀬を重ねる男がブルーで、幽霊になっても通う女がフィシスだとして、話の前後をかなり省略して有名な場面だけに限っても明らかに人数が足りない。
女の明り取りをする、やはり既に死人となっている女中と、男に札を渡す和尚、通ってきている女が幽霊だと気づき忠告をする隣家の男。この三人がいる。
「うーん……削るとしたらやっぱり女中役かな?寺の和尚がリオで、隣の家の男がぼく、ってところですか?」
「何を言っているんだジョミー。君は僕の恋人お露役だろう」
「はあ?」
どうしてそこで、フィシスがいるのに男同士で恋人役なんだ。
「通ってくるのは女性なんですから、普通に考えてフィシスじゃないですか」
「まあジョミー、そんなはずはありませんわ」
当然同じ意見だろうと思っていた当フィシスに否定されて、ジョミーは眉をひそめる。
「ブルーの恋人だなんてそんな面ど……幸せな役は、ジョミーにしか務まりません」
「いま面倒って言わなかった?ねえフィシス!やっぱりあなたこの人のこと面倒だって思ってるんでしょう!?」
「ふむ、女性役が嫌だということかい?だったら君が新三郎で僕がお露をやってもいい」
「いや、そういう話じゃなくてですね……」
話がかみ合わない。どうして何の疑問もなくその配役になるのか不思議でならないのに、ブルーはさも当然だという顔で、逆にジョミーの不満が分からないとでもいうように首を傾げている。
「待つ男が僕、通う女がジョミー……ここは逆でもいいけれどね。札を渡す役はフィシスに、隣家の男はリオ、身分違いの二人の結婚を反対して生前の仲を引き裂く女の父にキース、とすれば完璧じゃないか」
「どこがですか。しかも勝手にキースを加えてますよ!いいんですか!?」
「気にしなくていい。古典作品ならば演劇に協力してもいいという話は取り付けてある」
「こんなときばっかり手際いいですね!」
普段はすぐに倒れたふりをするくせに、やりたいことに関してだけは素早く動くのだから腹立たしい。
もう燃え尽きるなんて絶対嘘だ。
ジョミーは深い溜息をついて、ふと目に入ったブルーの手許の紙を覗き込んだ。
「……なんですか、この買い物リスト。羽毛布団って」
「うん?それはそうだろう。学校のマットで代用では硬くて背中が痛いし、あれでは床を共にしたという雰囲気が出ない。おまけに掛けるものがないと……」
「古典作品の怪談で羽毛布団のほうが可笑しいでしょう!?こんな経費の無駄遣いは却下!」
「そんな……!ではジョミーは、僕達の睦み合いを筒抜けにしたいというのかい!?」
「あんた舞台でなにやるつもりだーっ!」
ブルーが演劇に牡丹灯篭を選んだのは、そういうシーンがあるから、
という辺りを書ききれませんでした。
生徒会で演劇ってそれなんてグリーンウッド?(笑)
ちなみに「上邪」とは読み人知らずの漢詩です。
諸説あるようですが、ともかく
「この世がある限り私は君を愛すると天に誓う!」
というノリで愛を捧げる歌だとか。
このブルーなら天地が崩壊しても、とか言いそうですが…(^^;)
ブルーが在学中に戻っていますがお気になさらずに(笑)
そして再び文化祭に戻っていますが、それもお気になさらずに(おい)
「今度の文化祭で生徒会の出し物は怪談演劇に決定しました」
クラスのホームルームが長引いて、遅れて青の間に入ったジョミーはにこやかなリオに言われて扉に手を掛けたまま目を瞬いた。
「え?そうなんだ……というか生徒会でも出し物なんてやるの?当日は役員の仕事だけで忙しいんじゃないの?」
今まさにクラスの出し物の決定を話し合いをしてきたばかりのジョミーは、渋面を作って一同を見渡す。
クラスと生徒会の仕事、それに加えて更に生徒会でも演劇?
「大丈夫だよ、ジョミー。心配しなくていい」
ブルーは奥のテーブルに両肘をついて組んだ手に顎を乗せ、笑顔で安請け合いをする。きっと去年も両立させたのだろう。先人の自信満々の笑みにジョミーは軽く息をついた。
ブルーにできたからといって、ジョミーに同じようにできるとは限らない。既に目が回るほどの忙しさを覚悟していたのに、それにまだ上乗せされるのか……。
それでも慣例なら生徒会でも出し物をするしかないだろう。それにしても、もっと簡単な展示物などにすれば楽なのに、なにも手の掛かる演劇を選ばなくたっていいと思う。
「でも、どうして怪談なんですか?怪談ってよっぽど凝って作らないと白けるだけのような気もするんですけど」
「いやなに、説話や名作といった類の話で夫婦といえば、大抵主人公の両親だったり、既に落ち着いた仲だったりするだろう?童話などは恋人関係が最後に成立して終わりなどだしね」
「ああ、夫婦役がやりたいんですか」
そう言うからにはブルーは夫役をするつもりだろう。だとすれば妻役はフィシスになる。ならジョミーは端役で済むかと気楽に頷く。
「でも怪談の夫婦って、それも大抵ひどいラストになると思うんですけど……」
「いや、これも夫婦の約束をするというものだが、牡丹灯篭なんてどうだろうと思ってね」
「牡丹灯篭……というと、死んだ人が毎晩やってきて、お札を貼って隠れていたけど最後に剥がしてしまうっていう、あの?」
「そう、想う人と死してなお添い遂げた、その話だ」
いや、連れて行かれた方からしたら、かなり迷惑な話だと思うけど。
連れて行かれる役のブルーがそう言うなら、それでいいのだろう。
恋人が死んだと知らずに逢瀬を重ねる男がブルーで、幽霊になっても通う女がフィシスだとして、話の前後をかなり省略して有名な場面だけに限っても明らかに人数が足りない。
女の明り取りをする、やはり既に死人となっている女中と、男に札を渡す和尚、通ってきている女が幽霊だと気づき忠告をする隣家の男。この三人がいる。
「うーん……削るとしたらやっぱり女中役かな?寺の和尚がリオで、隣の家の男がぼく、ってところですか?」
「何を言っているんだジョミー。君は僕の恋人お露役だろう」
「はあ?」
どうしてそこで、フィシスがいるのに男同士で恋人役なんだ。
「通ってくるのは女性なんですから、普通に考えてフィシスじゃないですか」
「まあジョミー、そんなはずはありませんわ」
当然同じ意見だろうと思っていた当フィシスに否定されて、ジョミーは眉をひそめる。
「ブルーの恋人だなんてそんな面ど……幸せな役は、ジョミーにしか務まりません」
「いま面倒って言わなかった?ねえフィシス!やっぱりあなたこの人のこと面倒だって思ってるんでしょう!?」
「ふむ、女性役が嫌だということかい?だったら君が新三郎で僕がお露をやってもいい」
「いや、そういう話じゃなくてですね……」
話がかみ合わない。どうして何の疑問もなくその配役になるのか不思議でならないのに、ブルーはさも当然だという顔で、逆にジョミーの不満が分からないとでもいうように首を傾げている。
「待つ男が僕、通う女がジョミー……ここは逆でもいいけれどね。札を渡す役はフィシスに、隣家の男はリオ、身分違いの二人の結婚を反対して生前の仲を引き裂く女の父にキース、とすれば完璧じゃないか」
「どこがですか。しかも勝手にキースを加えてますよ!いいんですか!?」
「気にしなくていい。古典作品ならば演劇に協力してもいいという話は取り付けてある」
「こんなときばっかり手際いいですね!」
普段はすぐに倒れたふりをするくせに、やりたいことに関してだけは素早く動くのだから腹立たしい。
もう燃え尽きるなんて絶対嘘だ。
ジョミーは深い溜息をついて、ふと目に入ったブルーの手許の紙を覗き込んだ。
「……なんですか、この買い物リスト。羽毛布団って」
「うん?それはそうだろう。学校のマットで代用では硬くて背中が痛いし、あれでは床を共にしたという雰囲気が出ない。おまけに掛けるものがないと……」
「古典作品の怪談で羽毛布団のほうが可笑しいでしょう!?こんな経費の無駄遣いは却下!」
「そんな……!ではジョミーは、僕達の睦み合いを筒抜けにしたいというのかい!?」
「あんた舞台でなにやるつもりだーっ!」
ブルーが演劇に牡丹灯篭を選んだのは、そういうシーンがあるから、
という辺りを書ききれませんでした。
生徒会で演劇ってそれなんてグリーンウッド?(笑)
ちなみに「上邪」とは読み人知らずの漢詩です。
諸説あるようですが、ともかく
「この世がある限り私は君を愛すると天に誓う!」
というノリで愛を捧げる歌だとか。
このブルーなら天地が崩壊しても、とか言いそうですが…(^^;)
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