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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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後編です。
妙にギャグっぽい方向になりかけたので後編を全面書き直しとかしているうちにこんなに遅く……なぜこのテーマでギャグに走るのか、最初の自分が不思議でなりません。
ブルーとハーレイを並べると、どうしてもハーレイに胃痛をプレゼントしたくなる悪癖を直さねば……と書き直したらハーレイがいなくなりました。悪癖直ってない!
検査結果が出るのが異様に早いのは未来だからです(便利な言葉)

それでは遅くなりましたが、リクエスト本当にありがとうございました!!



シャングリラに迎えられてからというもの外で遊ぶ機会がなくなったとはいえ、ジョミーはアタラクシアにいた頃は元気に外を走って遊びまわっていた。
健康的に日焼けしているといっても、ブルー自身やシャングリラの他の子供たちと比べてのことではあるが、それでも他の子供たちよりのような病的な白さではない。
だが、だからといって熱を出して上気した頬を見ても、それをただ可愛いと思って流してしまっていたとは。
後悔してもしきれない。
ジョミーのことはシャングリラに連れて来る以前からずっと見守っていたし、シャングリラに迎え入れてからは更にも増して様子を伺っていた。
だというのに、ジョミーの不調に気づかなかったなどと。
ブルーの焦燥を他所にドクターは落ちついたもので、それが慣れているからだとかブルーが大袈裟なのだろうと分かっていても、どうしても落ち着かずに苛立ってしまう。
病のジョミーの枕元で苛々とした気配を出しているのはいかにもよくないと医務室を出てきたが、様子が見えないとそれはそれで落ち着かない。
思念波でリオに知らせたのでジョミーの傍には彼がついていてくれるだろうとは思いつつも、人気のない方へと歩きながら気が付けば医務室へ向けて思念体を飛ばしていた。


ジョミーが気になるのなら医務室に行けばいい。なのにわざわざ思念体で様子を伺うなど、ドクターに不審がらそうだと思うと、自然とドクターたちには見えないようにと視覚には映らないようにしてしまった。
誰も医務室にいるブルーの思念体に気づかずに動いている様子を見ていると、なにやら余計に後ろめたいことをしている気になってくる。
「ああ、こりゃ風邪だな」
何かの検査をしていたらしいドクターは操っていた端末の画面を覗きながら顎を撫でると、看護士に薬の処方を言いつける。
ドクターはブルーからの報せを受けて医務室に駆けつけていたらしいリオを振り返って、手にしたペンの先で画面を指した。
「咳も鼻も出ていないがウィルスの活動が活発だ。ま、薬を飲んで大人しく寝ていればすぐに治るだろう」
『よかった……』
ほっと胸を撫で下ろすリオに、ドクターは解析機にはめ込んでいたシャーレを取り出しながら苦笑する。
「ソルジャーも君も大袈裟だな。ジョミーの生命力は強い。大抵のことなら心配などいらないさ」
『その元気な子が熱を出したから、何か大きな病気ではないかと心配なんです』
「わかったわかった」
リオは両手を上げて降参のポーズを取るドクターに溜息をつきながら礼を言うと、踵を返してカーテンを引かれたベッドのほうへと歩み寄った。ブルーも姿を消したまま、その後についていく。
『ジョミー』
カーテンを開けると、冷却シートを額に張り付けたジョミーが熱に潤ませた瞳をリオに向けた。
「聞えたよ。ほら、なんともなかったのに。リオもブルーも心配しすぎだよ」
『なんともなくはないでしょう。ちゃんと寝ていてくださいね』
「はぁい」
苦虫を噛み潰したような表情で拗ねた返事をするジョミーに、リオは苦笑を零す。
『では、僕は一旦持ち場に戻ります。後でまた様子を見に来ますが、一人でも大丈夫ですか?』
「え、一人?」
ジョミーは目を瞬いて、リオの肩越しの後ろに目を向けた。
しっかりと視線がぶつかって、ブルーが驚く様子にジョミーは更に首を傾げる。
「ああ、うん。大丈夫だよ。ちゃんと寝てる」
ジョミーの返答に微笑むと、リオは優しくその髪を撫でてカーテンの向こうへといってしまった。
それを見送って振り返ると、ジョミーはやはり不思議そうな顔をしてブルーを見上げる。
「ブルーも行っちゃうんじゃなかったの?」
「やはり、僕が見えているのか」
視覚には映らないようにブロックしているはずなのに、ジョミーには何の障害もなくブルーの思念体が見えている。
今の状態でサイオンのコントロールなど言っていられないはずだろう。恐らくは生来の強さが現れている。
「当たり前じゃないか。何お化けみたいなこと言ってるのさ」
馬鹿にされていると思ったのか、ジョミーが頬を膨らませるとちょうどカーテンが揺れた。
「薬を持ってきたわよ。飲んでね」
優しい微笑みで楽しくないことを告げる看護士に眉を寄せたジョミーは、彼女がブルーの身体を通り抜けてベッドの傍らに移動したことに息を飲んだ。
「どうしたの?大丈夫、苦くないわ」
硬直したジョミーに首を傾げた看護士は優しく抱き起こし、微笑みながらだが半ば強引にジョミーに薬と水を手にもたせる。
「え、あ、え……」
ブルーが人差し指を立てて静かにという仕草を見せると、ジョミーはようやくなんとなくの事情が判ったのか不機嫌そうな顔をして、薬を口に入れた。
ブルーに気を取られて何気なく言われた通りにしたらしいジョミーは、薬が口の中に広がるとぐっと喉を鳴らして慌てて水を飲む。
「苦いよ!」
「ちゃんと飲めたのね。えらいわ、ジョミー」
ジョミーの苦情に看護士は微笑みながらコップを受け取る。
騙されたとうな垂れる子供を手際よく寝かしつけると、看護士はカーテンの向こうへと姿を消した。
「慣れたものだな」
子供の相手が慣れているその様子にブルーが感心したように呟くと、ジョミーはじろりと睨みつける。
「大人って嘘ばっかり」
「僕のこれは嘘ではないよ。以前に教えただろう?思念体だよ」
ベッドの傍らに立って伸ばしたブルーの手が髪を撫でる。
撫でる、仕草をしただけだ。
見た目に反して触れられた感覚がなかったことが不思議なのか、ジョミーはまじまじとその手と、ブルーの顔を見上げた。
「変なの……みんなには見えないの?」
「今は見えなくしている。ジョミーに見えたことの方が驚きだ」
やはり君は素晴らしい。
そう続ける前に、ジョミーの素朴な疑問がそれを遮った。
「なんで見えなくしているの?」
当然の疑問だろう。だがブルーに説明できる言葉は無い。
ジョミーの様子が見たいが何か手が離せないのなら、思念波でドクターに聞けばいい。あるいは思念体を飛ばすにしても見えなくする必要は無い。
「………なんとなく」
「なにそれ。いたずら?」
ジョミーの熱は重大な病気ではないと分かったし、ドクターもするべきことをしてくれた。自分に対する悔恨は残っているが、病気のジョミーの傍にいて問題があるほどの負の感情はもう出さずに済むだろう。ならば生身で傍にいてもかまわないはずだ。
ブルーは内心を隠しながらにこりと微笑んで、触れられない手をジョミーの頬を撫でるように滑らせる。
「今から傍に行くよ」
告げると同時に、思念体を消して今度は医務室の扉の前へと一瞬で移動した。

「ドクター」
「ああ、ソルジャー。お戻りですか。ジョミーのことですが」
「リオに聞いた。大したことでなくてよかった」
あれだけ急かしておいて、きちんと職務を果たしたドクターを適当にあしらうことは少々申し訳なくは思ったが、早くジョミーに直接触れたくて頷くだけでベッドへ向かう。
カーテンを開けて中を覗くと、汗を滲ませた顔でそれでも楽しそうにジョミーが笑った。
「やっぱり大人は嘘つきだ」
聞いたのはリオにではなく、ドクターからなのに。
くつくつと喉を鳴らすジョミーに苦笑を返しながら、ベッドの傍らに移動したブルーは額に掛かるその前髪を払うようにそっと撫でる。
掌に汗ばんだジョミーの熱が伝わった。
「早く君に触れたかったからね」
様子を見るだけなら、思念体でもいい。けれどできることなら、こうして触れて感じたい。
掌に伝わる熱は相変わらず高くて、大人しく眠っていれば大丈夫なのだと分かっていても、胸がちくちくと痛む。
じっとブルーを見上げていたジョミーはいつの間にか笑顔を消していて、シーツに落としてた手を上げて、髪を撫でるブルーの手の甲に触れた。
「ぼくも、触りたかったよ。ブルーの手、冷たくて気持ちがいい」
触れているように見えるのに、触れた感覚がしないのはいやだ、と。
「ああ……そうだね。さあ、もう眠りなさい」
熱い息を吐きながら小さく呟いた愛し子の額に、ブルーはそっと口付けを落とした。
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