気がするだけとも……。
目次
支援センターへ向かうジョミーの友人の背中を見送りながら、後に続くか迷ったのはほんの数秒のことだった。
ここで待つという選択肢もある。ブルーに一言も告げる暇なく引きずられて行ったのだから、ジョミーなら慌ててすぐにでも帰ってくるかもしれない。
だがそれを待つより、ブルーは踵を返して先に学校へ向かうことにした。
ブルー自身はさしてミュウに関して詳しくはないが、幸いというべきかミュウの友人はいる。
ジョミーの友人であるという少年の言葉を疑っているわけではないが、どうしても腑に落ちないのだ。
これで友人からも同じ答えが帰ってきたら納得するのかといえば、正直なところ自信はまるでない。聞きたい答えだけを求めた質問に意味などあるのだろうか。
だが、どうしても腑に落ちないのだ。
目当ての人物には、教室に行く前に会うことができた。通学中の後姿を発見したブルーは、気が急くように足を速める。
「リオ!」
ちょうど道を分かれようとしていた弟と一緒に、リオが振り返って首を傾げた。
「あれ、今日は一人ですか?」
あれだけ鞄を待つ、送り迎えをすると息巻いていたジョミーの姿が見えないことに首を傾げるだけのリオの横で、マツカは珍しい物でも見たかのように目を瞬いている。
そんな二人ののんびりとした様子には目もくれずに、足早に追いついたブルーはリオの腕を掴んだ。
「聞きたいことがある。君は人の痛みを引き受けることが可能か?」
「なんですか、一体?」
朝の挨拶すらも惜しんで唐突に向けられた質問がこれだ。リオが驚くのも無理はない。マツカなど瞬きすら忘れている様子だ。
そのマツカにも、目を向ける。
「君はどうだ、マツカ」
「ぼ、僕ですか!?」
鞄を両手で胸に抱きかかえ、声を裏返して怯えたように肩を揺らした弟に、リオがその頭を優しく撫でながら苦笑を漏らす。
「急にどうしたんですか?痛みを引き受けるって、僕やマツカに訊ねるということは、サイオンでの話ですよね?」
「ジョミーの知り合いの子供が言っていたんだ。ジョミーの怪我の痛みを引き受ける、と。強いサイオンを持つ者にしかできないとも聞いたが、事実か?」
「事実だと思いますよ」
頭を撫でていた手を肩に落として、軽く二度ほど宥めるように叩いてから、リオは弟を送り出すように軽く押し出した。
リオに話が聞ければ十分なので、それに関しては特に気にすることもない。どこか……恐らくキースの家の方へ向かうつもりなのだろうマツカに目だけで頷いて見せると、マツカは無言で頭を下げて踵を返す。
「少なくとも僕やマツカにはできません。あれはタイプブルー並みの力が必要だと聞いています。痛みを共有するだけなら、誰でもできるんですけどね」
弟の背中を見送りながら学校へ向けて歩き出したリオと足を並べ、ブルーは眉を寄せる。
「……引き受ける、というからには、もちろん引き受けた側に痛みがあるわけだな?」
シロエという少年が言っていたように本来の幻視痛から名前を持ってきたことを考えれば、そのはずだ。だが一応と確認すれば、リオは肩を竦める。
「ですから、わかるわけはないでしょう。僕はしたことも、されたこともないんですから。ただそういうものだと聞いたことがあるだけです。それで、一体それがどう……」
「……ジョミーが、僕の怪我と同じ場所を痛めている」
リオの足が止まった。ブルーも足を止める。
「夢を見た。僕が眠気で早退した、あの日だ。部屋にジョミーがいて、僕の怪我の痛みを誤魔化したと言った。目が覚めれば、当然部屋には僕しかいない。だが痛みは驚くほど小さくなっていた。あの日から、僕は薬を飲んでいないが、痛みに悩まされることはなくなった。そして夢の翌日、ジョミーは胸を痛めていた」
偶然か?
目で問い掛ければ、リオは難しい顔で眉を寄せる。
偶然だ、思い込みだろう。
そんな答えも予想してたが、リオは即答を避けた。
「……ジョミーはミュウではない、と聞いています」
「僕もだ。だが自覚のないミュウだとして、怪我をさせた罪悪感で無意識にサイオンを使ったという可能性はないか?」
「ありえません。他人の感覚を弄るなんて真似を無意識にしてしまうような力なんて、気がおかしくなりますよ。他人と自分の境界が曖昧になっていなければできない。普通は意識して働きかけない限り、サイオンは生命に対して受動的なものなんです」
「では、ミュウだということを隠している可能性は?ジョミーの妹が、昨日から完全に思念を閉ざしていると言っていた。あの歳でそこまで完璧に思念を閉ざせるものか?」
「思念を閉ざせると言えば、あなたもでしょう」
長年の付き合いのリオは呆れたように肩を竦めて、軽く首を振る。
「隠すなんて無理です。あなたも何度もESPチェックは受けたでしょう。ごく微弱なサイオン波形すら見つけ出すチェックなのに、強い力を持つならなおさらです。それに意味がないですよ。ジョミーのご家族がミュウを嫌っているのならまだしも、ジョミーにはミュウの妹がいて、ご両親とも仲がいいのでしょう?」
「そう……だな……そうだ、確かに」
隠している、意味がない。
可能性を潰していきながら、それでも納得できない自分を自覚している。
ブルーが黙り込むと、今度はリオが納得していないような声で「でも」と呟いた。
「でも……僕も、実は僕も疑問に思っていました」
ゆっくりと顎を挙げ、顔を向けると、リオはブルーを見下ろしていた。
「初めて会ったとき、僕はジョミーがミュウだと思い込んでいました。違うと言われて驚いて、そして納得できなかった」
一度言葉を切ってブルーを伺うリオに、無言のまま視線で続きを促す。
二人はすっかり足を止めて話し込んでいて、その両脇を同じ目的地を目指す学生たちが通り過ぎていく。
「先ほど、あなたも思念を閉ざせるといいました。でもジョミーは完璧すぎるんです。後になればなるほど、そう思わずにはいられない」
「探ったのか?」
彼の思考を。
禁じられているはずの行為を試みたと、堂々と言ってのけた友人に驚いた。この友人が穏やかで人がいいばかりではないことは知っていたが、それにしても大胆な告白だ。
リオは緩く首を振った。だがすぐに首を傾げる。
「いいえ。ああ、でも、はいともいえます。ジョミーがあなたの上に降ってきたあの日、ジョミーがあなたを初めて目にしたあの瞬間……」
リオは眉を寄せて視線を行く先の方へと転じた。ブルーもそれを追う。
この道路のずっと先、下り坂になったその先で、ジョミーと初めて出逢った。
「ジョミーの感情は凄まじいほどに揺れていました。閉じていた僕の思念を揺るがすほど、動揺していた。僕はその波に飲まれそうなほどでした。でもたった一瞬で、それらを全て消し去ってしまった。それからは意図して探っても、まったく感じられないほど完璧に」
なぜそんなに動揺することがあったのか。
初めて目を合わせたときの、ジョミーのあの泣き出しそうな、嬉しそうな、苦しそうな、その表情を思い出す。一瞬で消し去ってしまったあれは、やはり見間違いなどではなかったのか。
「チェックをすり抜けるはずがありません」
ブルーの意識が他所へ向いた間にも、リオの話は続いていた。疑問ばかりが増えて行く。
「ですから、もしかするとジョミーの家族は、家族ぐるみでジョミーがミュウであることを隠しているのではないかと、疑っていたのですが……」
「それこそ何のために」
リオの出した結論に、ブルーは思わず反射的に否定的な声を上げた。最初にジョミーがミュウではないかと疑問を投げかけたくせに否定したブルーを、リオは責めなかった。代わりに、困ったように眉を下げる。
「そうなんです。それもまた、理由がないんですよね」
違う、そうではない。ブルーが聞きたかったことはそうではない。
リオはチェックを素通りできるはずがないと言った。実際、300年前のSD体制化のチェックでは稀に、それこそ奇跡に近い確率であったがチェックを抜けた例があるという。だがそれを教訓に、今では更にチェック方法が細分化されてそのようなことはもうありえないとされてはいる。
だが本当にそうだろうか。
300年前だって、当時はミュウがESPチェックをすり抜けることがあるなんて思っていなかったはずだ。だが実際には、片手で足りほどとはいえ、例がある。
今だってそうではないと、どうして言い切れるだろう。
そう、ブルーが疑っているのは、そういうことだ。
絶対行くぞー!と騒いでいたジョミったけに行ってきました。オンリーイベントは数えるほどしか行ったことがないのですが、非常に楽しかったですv
パンフも見やすかったし、それにまたあちこちで大人買いしまくりでしたし(^^)
全部一冊ずつくださいv、は最早自分的合言葉です。どこを見回してもジョミーが一杯で幸せ夢気分でした。
イベント後の食事も、みなさんジョミー好きさんばっかり集まっていやもう本当に楽しかったですv
ありがとうございましたv
……小学生の感想文よりひどい日記ですが、未だに頭がぼーっとしているといいますか、スイッチが切れたように意識が途切れたりしているくらいで……。
買い込んできた宝物たちがまだ読み終わりません。楽しみに置いているとかいうことではなく(楽しみを後に取っておけない奴なんで)、読んでいるときはいいんです。
気分は高揚(興奮?)、目も爛々、幸せ一杯だったり、大笑いしたり、涙したりでじっくり読んでいるのですが、さあ次だ!と読み終えた本を閉じてから次の本を手に取った後の記憶が……途切れてます。前のめりに机に突っ伏して寝ているという……この繰り返し(^^;)
しゅ、週末までこんな感じかもしれません。体力がないにもほどがある……。
スラダンのディーフェンス!みたいなノリで一週間前から興奮気味に、まさにくびったけなジョミ受オンリーイベントですが、行き帰りの飛行機と新幹線のチケットは買ったのに、まだ宿を押さえていないという適当さです。なんてこと。
いや、別に当日朝一の新幹線に乗れば間に合うんでしょうけど、自分体力ないですし(笑)
せっかくなんで東京に住む兄宅に泊まらせてもらうつもりで前日でチケット買っちゃったんですが……奴の自宅は東京でも外れにあるので、会場まですんなり行けても2時間くらいは掛かるとか。
なぜ泊まりでありながらそんなに時間を掛けねばならんのか!と思ったのでホテルを予約するつもりになりました。でも気が付けばもう一週間前です。お前……なんて腰の重い。
最悪泊めてもらえばいいやーという気持ちがあるのでいけません。何事もケツを蹴り上げられないとできない意志薄弱人間なんで(下品!)
そういえば前回の日記でダーカーの二期の噂が云々と書いたのですが、やっぱり噂は噂だったようで、ネットを探してみても見つかりませんでした。つーか、あまりにも欠片も見当たらなかったんですが、ひょっとして白昼夢を見ていたんだったらどうしよう(^^;)
で、こちらは夢でも偽りでもなく始まった00の第二期。
ちょっと展開が速すぎて、第1話ではなにがなにやら……。刹那はこの四年、一体どこであんなデカイ機体を修理して隠して潜伏していたんでしょう?これからわかってくるんでしょうけれど。
そして訳が分からんところで乙女座に感謝する男はどう扱ったらいいのやら不明です(笑)
今週からいよいよタイタニアのアニメも始まるし、アルスラーン戦記の新刊もでるし、ゲームは未プレイですがアビスのアニメも好みな感じだし、なんか今月は趣味の方面で幸せすぎて怖いですv
まあその分、それ以外の部分で跳ね返ってきてるともいえますが……なんでこんなに休みがないのか。といっても日曜休みなんだからそれくらいで文句いうな、程度ではあるんですけどね(溜息)
故障したターミナルアダブタの修理に2週間ほど掛かりました……掛かりすぎでは!?
故障はたぶん落雷による電気の逆流が原因だと思うのですが、10年くらい前にも一回やったのにまたかorz
拍手とメールだけは携帯で見れたんですが、それ以外は……携帯でネットサーフィンするのは未だに苦手です。上手いこと検索とか使えないんですよ(^^;)
逆流防止のコンセントを買ってなかったのも悪いので誰に八つ当たりするわけにもいかず、日々ぼんやり過ごしておりました……ってローカルで書けばいいのに。
いや、書いてなかったわけじゃないんですが、ネット向けの話はとんと……ダメダメ生活に突入でした(土下座)
それにしても、そうこうするうちにギアスは終わっちゃうし、夏目の第二期決定だし、もうすぐタイタニアが始まるし、ダーカーの第二期の噂を聞いたりとネットに繋ぎたくてたまりませんでした。
なんかダーカーの第二期はトラブルが、とかも聞くのですが、それ以前に第二期の話自体、ホントに上がってるのかも疑問。黒の死神の話は綺麗に終わったのにどうやって続きを……?
ブルーが在学中に戻っていますがお気になさらずに(笑)
そして再び文化祭に戻っていますが、それもお気になさらずに(おい)
「今度の文化祭で生徒会の出し物は怪談演劇に決定しました」
クラスのホームルームが長引いて、遅れて青の間に入ったジョミーはにこやかなリオに言われて扉に手を掛けたまま目を瞬いた。
「え?そうなんだ……というか生徒会でも出し物なんてやるの?当日は役員の仕事だけで忙しいんじゃないの?」
今まさにクラスの出し物の決定を話し合いをしてきたばかりのジョミーは、渋面を作って一同を見渡す。
クラスと生徒会の仕事、それに加えて更に生徒会でも演劇?
「大丈夫だよ、ジョミー。心配しなくていい」
ブルーは奥のテーブルに両肘をついて組んだ手に顎を乗せ、笑顔で安請け合いをする。きっと去年も両立させたのだろう。先人の自信満々の笑みにジョミーは軽く息をついた。
ブルーにできたからといって、ジョミーに同じようにできるとは限らない。既に目が回るほどの忙しさを覚悟していたのに、それにまだ上乗せされるのか……。
それでも慣例なら生徒会でも出し物をするしかないだろう。それにしても、もっと簡単な展示物などにすれば楽なのに、なにも手の掛かる演劇を選ばなくたっていいと思う。
「でも、どうして怪談なんですか?怪談ってよっぽど凝って作らないと白けるだけのような気もするんですけど」
「いやなに、説話や名作といった類の話で夫婦といえば、大抵主人公の両親だったり、既に落ち着いた仲だったりするだろう?童話などは恋人関係が最後に成立して終わりなどだしね」
「ああ、夫婦役がやりたいんですか」
そう言うからにはブルーは夫役をするつもりだろう。だとすれば妻役はフィシスになる。ならジョミーは端役で済むかと気楽に頷く。
「でも怪談の夫婦って、それも大抵ひどいラストになると思うんですけど……」
「いや、これも夫婦の約束をするというものだが、牡丹灯篭なんてどうだろうと思ってね」
「牡丹灯篭……というと、死んだ人が毎晩やってきて、お札を貼って隠れていたけど最後に剥がしてしまうっていう、あの?」
「そう、想う人と死してなお添い遂げた、その話だ」
いや、連れて行かれた方からしたら、かなり迷惑な話だと思うけど。
連れて行かれる役のブルーがそう言うなら、それでいいのだろう。
恋人が死んだと知らずに逢瀬を重ねる男がブルーで、幽霊になっても通う女がフィシスだとして、話の前後をかなり省略して有名な場面だけに限っても明らかに人数が足りない。
女の明り取りをする、やはり既に死人となっている女中と、男に札を渡す和尚、通ってきている女が幽霊だと気づき忠告をする隣家の男。この三人がいる。
「うーん……削るとしたらやっぱり女中役かな?寺の和尚がリオで、隣の家の男がぼく、ってところですか?」
「何を言っているんだジョミー。君は僕の恋人お露役だろう」
「はあ?」
どうしてそこで、フィシスがいるのに男同士で恋人役なんだ。
「通ってくるのは女性なんですから、普通に考えてフィシスじゃないですか」
「まあジョミー、そんなはずはありませんわ」
当然同じ意見だろうと思っていた当フィシスに否定されて、ジョミーは眉をひそめる。
「ブルーの恋人だなんてそんな面ど……幸せな役は、ジョミーにしか務まりません」
「いま面倒って言わなかった?ねえフィシス!やっぱりあなたこの人のこと面倒だって思ってるんでしょう!?」
「ふむ、女性役が嫌だということかい?だったら君が新三郎で僕がお露をやってもいい」
「いや、そういう話じゃなくてですね……」
話がかみ合わない。どうして何の疑問もなくその配役になるのか不思議でならないのに、ブルーはさも当然だという顔で、逆にジョミーの不満が分からないとでもいうように首を傾げている。
「待つ男が僕、通う女がジョミー……ここは逆でもいいけれどね。札を渡す役はフィシスに、隣家の男はリオ、身分違いの二人の結婚を反対して生前の仲を引き裂く女の父にキース、とすれば完璧じゃないか」
「どこがですか。しかも勝手にキースを加えてますよ!いいんですか!?」
「気にしなくていい。古典作品ならば演劇に協力してもいいという話は取り付けてある」
「こんなときばっかり手際いいですね!」
普段はすぐに倒れたふりをするくせに、やりたいことに関してだけは素早く動くのだから腹立たしい。
もう燃え尽きるなんて絶対嘘だ。
ジョミーは深い溜息をついて、ふと目に入ったブルーの手許の紙を覗き込んだ。
「……なんですか、この買い物リスト。羽毛布団って」
「うん?それはそうだろう。学校のマットで代用では硬くて背中が痛いし、あれでは床を共にしたという雰囲気が出ない。おまけに掛けるものがないと……」
「古典作品の怪談で羽毛布団のほうが可笑しいでしょう!?こんな経費の無駄遣いは却下!」
「そんな……!ではジョミーは、僕達の睦み合いを筒抜けにしたいというのかい!?」
「あんた舞台でなにやるつもりだーっ!」
ブルーが演劇に牡丹灯篭を選んだのは、そういうシーンがあるから、
という辺りを書ききれませんでした。
生徒会で演劇ってそれなんてグリーンウッド?(笑)
ちなみに「上邪」とは読み人知らずの漢詩です。
諸説あるようですが、ともかく
「この世がある限り私は君を愛すると天に誓う!」
というノリで愛を捧げる歌だとか。
このブルーなら天地が崩壊しても、とか言いそうですが…(^^;)