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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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やっとアルテラ以外のナスチルが登場。
……ナスカの子供たちはジョミー大好きっ子でいてほしかった願望をここで丸出しに(笑)
シロエがサイオンを持っているか持っていないか、ちょっと迷ったんですが、基本アニメ準拠なのでタイプイエローのまんまです。


目次




風を起こしながら影が駆け抜け、一瞬にして目の前に立っていたジョミーの姿が消えた。
「ジョミー!会いたかった!」
声が聞こえた斜め下を見下ろすと、タックルで抱きつかれたジョミーは横薙ぎに倒されて地面に転がって悶えていた。その上に、腰に抱きつくように手を回して一緒に転がる子供。
「せっかくノアに来たのに、どうして一度もセンターに顔を出してくれなかったんだよ!会いたかったのに……っ」
「タージオン、ジョミーが潰れてる」
風のように駆け抜けた黒髪の少年とは違い、歩いてきた亜麻色の髪の少年は呆れたような声でその行動を咎めたが、ジョミーに抱きついた少年は頬を膨らませて振り返る。
「コブはいいよ、アルテメシアでずっと一緒だったんだからさ。ボクらはずーっとジョミーたちが引っ越してくるのを楽しみに待ってたんだ。それなのにジョミーはちっともセンターに顔を出してくれないし……」
「ジョミー?」
ブルーは少年たちの会話よりも、押し倒されて地面に転がったままのジョミーが胸部を押さえて背を丸めて動かないことに眉を寄せる。
「どうかした……」
昨日からジョミーは胸を痛めていたはずだ。大したことはないと言い続けていたが、やはり大した痛みだったのではないだろうか。
ブルーが傍らに膝をついて手を伸ばすと、その指が触れるより先にジョミーが寝返りを打った。
「タージオン………」
「ご、ごめんジョミー。ボクはただ嬉しくて……ジョミーに怪我させる気なんてなかったんだ」
「わかってる。怒ってない。怒ってないから、とにかく上から降りてくれ」
眉を下げて、今にも泣き出しそうな顔をする少年に、ジョミーは苦笑を見せてその髪を優しく撫でる。
ジョミーの苦笑にタージオンと呼ばれた少年は少し安堵したように表情を緩めて身体を起こしたが、ブルーはジョミーの額に僅かに滲んだ汗に気がついた。
「ジョミー、相当痛むんじゃないのか?」
「背中を打ったし、それはまあちょっとは」
「少しのようには見えないが」
手を差し出し、ジョミーを助け起こしたブルーが指でその髪の生え際を軽く擦ると、大して暑いわけでもないのに汗が指を濡らす。
「ジョミー!ボクのせいで……っ」
「違う、昨日から少し痛かっただけだ。タージオンのせいじゃないよ」
顔色を青くして息を飲む少年に、ジョミーは緩く首を振りながら汗を拭ったブルーの手を握った。その掌もしっとりと濡れている。
だが強く力を込めて握るそれからは、これ以上は追及するなという拒絶を感じた。
タージオンという少年のために平気としておきたいようだが、それは逆にブルーには相当痛むのだと教えたに等しい。
後で追及しようと口を閉ざしたブルーに、ジョミーから少し安心したような気配が伝わって握っていた手が離れた。
「ボクが少し痛みを貰うよ」
そんな不可解なことを口にして手を伸ばした少年に、ジョミーは途端に顔色を変えて厳しい表情でその手首を掴んで自分から引き離す。
「サイオンをそんなことに使うな!」
「でも」
「繰り返すけどお前のせいじゃない。……タージオン、サイオンは人と人とがわかり合うことを助ける大切な力だ。それは便利な道具じゃない」
手首を握ったまま、真摯な表情でじっと瞳を覗き込んで言い聞かせるジョミーに、タージオンは言葉に困ったように沈黙して俯いた。
「コブも」
傍らに立っていた亜麻色の髪の少年も慌てたように首を立てに振って頷く。
「タージオン」
もう一度ジョミーがすぐ傍の少年を覗き込むと、黒髪が揺れて俯くように頷いた。

「そんなところに固まってしゃがみ込んで何をやってるのさ」
呆れたような声が背後から聞えて、ブルーは眉を潜めて振り返る。
昨日、食堂でなにやらジョミーに関して言いがかりをつけてきた少年だ。
だが少年は端からブルーを見ておらず、まるでそこにいないかのように横を通り過ぎて地面に座り込むジョミー達を見下ろした。
「タージオンがぼくに会いたかったって飛びついてきたんだ。可愛いだろ?」
ジョミーはにんまりと笑みを浮かべてタージオンの頭を抱えるようにして抱き込む。
「ジョミー!」
慌てたようなタージオンの声はけれどどこか喜びを隠し切れておらず、ブルーは僅かにムッとした。
子供を相手に一体何に腹を立てたのかは謎だが。
シロエは鼻先で笑い、ジョミーとは種類の違う笑みを少年に向けた。
「やっぱりタージオンは子供だな」
「シロエに言われたくない。ジョミーがノアに来る日をカレンダーとにらめっこして待っていたくせに」
「余計なことは言わなくていい」
睨みつけるシロエと、ジョミーに抱き込まれて余裕の笑みを見せたタージオンに、まったく無関係の位置に居たコブが溜息をつく。
「兄弟喧嘩はいいからそろそろジョミーを解放してあげなよ、タージオン」
「そうだった!ごめんねジョミー!」
慌てて立ち上がったタージオンは、ジョミーの手を取って立ち上がる手助けをすると、そのまま握った手を引いて歩き出す。
「お、おいタージオン」
「掌を擦り剥いてる。センターで消毒してもらおうよ」
「これくらい平気だって!」
引っ張られて行くジョミーの鞄をコブが拾って一緒に横に並んで建物に向かって歩いて行く。
ブルーは後に続こうとするシロエの腕を掴んで引き止めた。
「……なんですか」
先ほどの少年たちといいこの少年といい、ほとんどブルーが存在していないかような態度だがそれは別に構わない。
引き止めたのは用があるからだ。
「先ほど……君の弟、か?あの少年がジョミーの痛みを貰うと言ったのだが」
「タージオンが?痛みを?」
「飛びついて押し倒したせいでジョミーが痛がっていたためだ。ミュウにはそんなことが可能なのか?」
顎に軽く握った拳を当てたシロエは、考え込むような表情で眉を寄せる。
「ぼくには無理ですが、サイオン能力が高ければ可能です。タージオンとかアルテラとか。コブもできるかもしれないな」
その発言で、シロエもミュウであることがわかった。
今までミュウと接することなんて、ほとんどリオくらいしかいなかったのに、この数日で一体なんの変化だろう。
「……ジョミーにもできるのか?」
おかしな夢を見た。
夢の中では日の落ちたブルーの部屋にジョミーが居て、胸部の痛みを誤魔化したと言った。
その翌日から、ジョミーは胸を痛めている。
夢は夢だ。そう思うのに、気になって仕方がない。
だが考え込んでいた様子のシロエは、意外なことを聞かれたかのように瞬きをする。
「まさか。ジョミーはサイオンを使えない。センターに通うのはアルテラの付き添いですよ」
「本人がミュウだと気づいていない可能性は?」
「可能性としてはありますけど……なんていったってアルテラの姉妹ですからね。でもファントムペインは自覚のないミュウにできるようなことじゃありません」
「ファントムペイン」
「ええ、ぼくらはそう呼んでいます。本当に自分が持つ痛みではないから本来のファントムペインに近いものとして」
ジョミーにはできませんと繰り返すシロエに、今度はブルーが考えに沈む番だった。
出来すぎた偶然なのだろうか。
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