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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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エイプリルフールさえもサイト嘘より小話に持っていくサイトです。
元々なんにもするつもりがなかったから遅くなりましたが、サイト名を考えたら嘘の日はなんかしとかないと!という気になったので(笑)
4/1で学園ということはブルーは既に卒業しちゃってるんですね。この話を書こうとして初めて気づきました。まあ……シャングリラ学園の暦が日本と同じだったとしてですが……(^^;)
ところで四月一日と書くと「わたぬき」と読みたくなります(だからなんだ)



「ジョミー……大変なことになった」
休日登校、青の間。
すぐ傍に控えた入学式に向けて、生徒会として行う歓迎の言葉の草稿を考えていたジョミーは、突然やってきて青褪めた顔色でそんなことを言い出したブルーに、リオと顔を見合わせた。
「どうしたんですか、一体」
ブルーが大袈裟なのは今に始まったことではないので軽い気持ちで水を向けてみると、ブルーは額を押さえて深い溜息をつきながら椅子に座る。
「僕の卒業が取り消しになった」
「はあ!?」
どうせ大したことはないと草稿に戻ろうとしていたジョミーが声を裏返してペンを取り落とす。
「ど、どういうことですか?」
滅多なことでは動じないリオも声が上擦っている。
ブルーは二人にそれぞれ目を向けると、再び溜息をついて首を振った。
「卒業自体が、手違いだったらしい。出席日数が足りないはずが、それを通してしまったと……」
「そ、そんな!だって証書まで渡しておいて……」
「電話を受けてね……証書なら今返還してきたところだ」
ブルーが鞄から卒業証書を入れる筒を取り出して蓋を開けると、中は空になっていた。
「返還って……そんなの向こうが悪いのに、素直に応じたんですか!?あなたらしくもないっ」
ジョミーは机を叩いて立ち上がったが、どうやら小細工が過ぎたようでリオは目を閉じて肩を竦めた。
「普通なら……そうだね、抗議くらいはしたかもしれない。だが僕はそれはそれでいいかと思えてしまったから」
「どうしてそんなことが……っ」
「高校に戻れば君がいる」
先ほどまで青褪めた顔色をしていたくせに、今度は笑みを浮かべて机に肘を乗せると、指を組んだ手の甲に顎を置いて立ち上がったジョミーを見上げた。
「もう一年、ここで君と過ごせるのなら、それも悪くないかとね」
呆気に取られたように口を開けたまま言葉をなくしたジョミーに、リオは気遣うような視線を向ける。
どう言ってくれるかと期待して待っていたブルーは、ジョミーが突然身を翻したことに驚いて駆け抜けようとしたその腕を掴んだ。
「どこへ行くんだい、ジョミー」
「抗議してきます!だってこんな話ひどいですよ!」
掴まれた腕を振り払う勢いで職員室か校長室か、とにかくどこかへ向かおうとするジョミーに、慌ててブルーも席を立ちながら掴んだ腕を強く引いた。
「よしなさい、そんなことを詰め寄れば、君が笑われるだけだ」
「笑って済むことじゃないでしょう!」
「ジョミー、カレンダーを見てください」
冷静なリオの声にジョミーが振り返ると、リオはカレンダーのすぐ横に立って今日の日付を指差していた。
4月1日。
「今日は何の日ですか?」
「何の日って、今それどころじゃ………な、んの………日……」
ようやく気づいたらしく、力尽きたように床にへたり込んだジョミーに、腕を掴んだままブルーもその前にしゃがみ込む。
「君が本気で僕のことを案じてくれて嬉しかったよ」
「エイプリルフールだからって性質が悪い嘘つかないでください!本気にしちゃったじゃないですか!」
「いくらこの学園がのんきだからといって、さすがにこれはありえないさ」
ジョミーは赤くなった頬を膨らませてリオに視線を向ける。
「最初は一緒に驚いてたよね……?」
「卒業証書を返すとしたら、筒ごと返すはずですよ。中身だけなんておかしな話ですから」
「つまりそれまでは、君も本気にしていたのか……」
「出席日数が足りないなんて、あなたならありえる嘘をつくのが悪い!」
「信用がないな。さすがに足りるように計算はして……いや、なんでもない」
悪びれもせずにそんなことを言うブルーに、ジョミーは掴まれたままだった腕を振り回してブルーの手を振り払う。
「ジョミー、そんなに怒らないでくれ。まさかそこまで君が僕のために怒ってくれるなんて思わなくて」
「だって……」
ジョミーは膝を曲げた足をハの字にして床にぺたりと座り込み、膝の間に両手をついてブルーを見上げる。
その目尻には僅かに涙が浮かんでいて、そんな目にそんな格好で見上げられてブルーは我知らず顔を赤く染める。
「そうしないと、喜んじゃいそうだったから……」
「ジョミー?」
「もう一年、あなたと一緒にここにいられるんだって……」
ぎゅっと唇を噛み締めて、俯いたジョミーに思わず手が伸びる。
「ジョミー……」
まさかそんなことを言ってくれるなんて思いもしなかった。
喜びに震えそうな手が、その肩に触れようとする瞬間、けろりとした様子でジョミーが顔を上げる。
「なんて、本気にしました?」
「え……?」
目に浮かべていた涙など、始めからなかったように欠片も見えない。
「あと一年も、あなたのお守をしながらソルジャーなんてやってられませんよ。今度からは多分トォニィも入ってくるし」
呆気に取られるブルーを笑いながら、ジョミーは床についた手に力を入れて立ち上がると、埃を払うような仕草で制服を払った。
「おあいこ、ですよね?」
「ジョミー……」
僕は本当に喜んだのに。
がっくりと肩を落としたブルーに、ジョミーは勝ったと笑いながら勝利の宣言を上げた。

最初に騙したお詫びに飲み物を奢ってくださいと強請ると、ブルーは諦めたように苦笑を零して扉に手をかけた。
「リオの分もですよ!」
強調すると、了解したとばかりに手を振ってそのまま青の間を出て行く。
「やれやれ、原稿に戻らなきゃ」
もう少しで下書きが終わるから、早く書き終えてブルーが帰ってきたときには一緒に一服しようとペンを手に座る。
ジョミーの参考にと出していた歴代の生徒会長の挨拶の原稿を片付けようと手にしたリオは、一番上に乗せた原稿を見て小さく笑った。
「リオ?」
「本当は、どちらが嘘だったんですか?」

最初に色々な原稿を見比べていたジョミーは、生徒会長のことをソルジャーと呼ぶよう定めた前ソルジャーの原稿を手にしてしみじみと溜息をついたのだ。
「まともにソルジャーやってるあの人は、本当にすごいのに……」

もう一年、一緒にいられると喜んでしまったということと。
それは嘘だと舌を出したことと。
微笑むリオに、ジョミーはふいと横を向いて赤く染めた頬を隠すように頬杖をついた。
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