ジリジリとした速度で進み、オマケにまだまだ続くのでまとめて目次を作った方がいいかな、とか思ったのですが、とりあえず簡易目次。
転生話 第2話 第3話 第4話
「サム!サム!大丈夫か!?」
切羽詰ったようなキースの声に、腕の中で身動きする少年から目を上げると、先にある街路樹の植え込みに自転車が引っ繰り返った状態で突っ込んでいた。その横から突き出た足が見える。
キースはその傍らに膝をついて足の持ち主の様子を伺っているようだった。
生徒の溢れ返る通学路に自転車で突っ込むとは、キースの友人にしては随分大胆なことだ。
「ブルー………?」
小さく掠れて、消え入りそうな震えた声が、ブルーの耳に僅かに届いた。
泡を食ったキースの珍しい叫び声につい気が逸れたけれど、そういえば自分も荷物を抱えていたのだった。
呼ばれて目を落とせば、翡翠色の瞳と視線がぶつかる。
こんな至近距離で人と目を合わせたことなどないブルーは驚いてつい仰け反ったが、すぐに背中がどこかの家の外壁に当たった。
それにしても、何をそんなに驚くことがあるのか、少年は大きな目を更に大きく開き、今にもその瞳が零れ落ちそうなほどだ。
その輝きは宝石だと言えばそれでも通じそうなだ、なんて。埒もないことが脳裡を過ぎったその頬に、白い手が伸びて触れた。
「本当に、あなたなの?」
戦慄く唇で小さく呟く少年に、けれどその言葉の内容よりも見ず知らずの者にいきなり顔を触れられた嫌悪感が先に立って、乱暴にその手を振り払った。
「なんなんだ、一体。訳の分からないことより、まず言うことがあるだろう」
喧騒に振り返ったときに上から降るように飛び込んできたので見たわけではないが、少年は恐らくあのキースの知り合いらしき相手の自転車の同乗者だ。
クッションになる気がブルーにサラサラなかったとしても、結果的にはそうなった。
振り落とされたのか、危険を考えて飛び降りたのかは知らないが、見ず知らずの人間にクッションになってもらったのなら、言うべきことがあるはずだ。
当然のことを言ったまでだというのに、なぜか少年の顔が今にも泣き出しそうにくしゃりと歪み、胸の底に不可解な感情が湧き上がって眉を潜めた。
少年が泣いてしまいそうな表情を隠すように俯いたのは、ほんの数秒のことだった。
すぐにもう一度上がった顔には、悪びれない苦笑が昇っている。
「ごめんなさい!受け止めてくれてありがとう、助かったよ。怪我はない?」
さっき見た表情は見間違いだったのだろうか。それほど少年の様子には、申し訳ないという意識は見えてもそれ以外に屈託はない。
「君が上に乗っていては、怪我しているかどうかを確かめることもできやしないな」
言外にいつまで上に乗っているつもりだと膝の上で座り込む少年を睨み据えると、何を驚くことがあるのかパチパチと瞬きをする。
「おい……」
「あ、ごめんなさい」
更に要求すると、少年はようやく気が付いたように立ち上がって手を差し出してくる。
「ごめん。それで怪我はない?」
「………ああ」
ブルーは差し出された手を丸きり無視して自分で立ち上がると、服の埃を払って鞄を拾った。
ぶつけた背中と少年を受け止めた腕と胸が痛んだが、それ以外はどうということもなく怪我もしていないようだ。
無言で歩き出したブルーに、少年は金の髪を揺らしてブルーの行く手に回りこむと、両手を広げて前に立ち塞がる。
「あ、あの、怪我は」
「ないと言った」
「お礼を」
「もう聞いた」
「えっと……」
少年が何をしたいのか分からなくて苛立ったブルーは、無言でその肩を掴んで強引に横へ押しのけた。少し力が入りすぎてどこかの家の外壁に強かにぶつかったようだが見向きもしない。大した用事もないのに機嫌の悪いブルーを呼び止めた相手が悪い。
「ブルー!そんな乱暴なっ」
抗議の声を上げたのは幼馴染みだったが、軽く袖を後ろに引かれて振り返ると、少年は壁から身体を起こしてニッコリと微笑む。
「ぼくはジョミー。ジョミー・マーキス・シン」
「……そんなことは聞いてない」
壁に叩きつけられた自覚はあるのかと眉を寄せると、ジョミーと名乗った少年はうんと頷いた。
「聞かれてないけど、名乗っとく。もしも後で怪我とかしてたって分かったら教えて。ちゃんとお詫びするから。アルテメシアから引っ越してきたばっかりの一年生で探したら分かり易いかなって思う」
少年の笑顔に冷ややかな一瞥をくれると、ブルーは無言で袖を掴んだ手を振り払って歩き出した。
なんていい日!
ちむさん、ありがとうございます~v
空気読めてないバッタもんがひとり紛れ込んでおりますが、そこさえ目を逸らせばムッハムッハと幸せ世界が広がっておりました。
可愛い話とか、ちょっと切ない話とか、パラレルや4コマや、どこを見てもすべてブルジョミという、幸せに浸っておりました。はふーv
漫画も小説もじっくりと堪能して、カレンダーをどう飾るかでも楽しく悩めます。ミシン目があるから不器用代表みたいな自分でも綺麗に切り取れる親切設計!
一月ごとに一枚ずつ捲っていくのが正統派だとは思うのですが、私は最初に切り離してビニールに一枚ずつ入れて(日焼け対策)、壁に並べて貼ろうかな、とか……思って、いたり。
ビニールに入れたら埃も被らないし、押しピンで留めなくても両面テープを使えるし、切り離しても大丈夫かしら、とか。
でもこう、一枚ずつはらり、と捲っていく楽しみも捨て難い。毎月違うブルーとジョミーにうっとりしたい!
……幸せな悩みだ(笑)
いや、しかし周りを見回せば畏れ多いばかりだったんですが、人間、度胸が大事だと思いました。こんなこんなお話に参加できる幸せそうそうないですよ。一生の思い出~v
そういえばマツカですが、本来「マツカ」は姓の方なんですよね(^^;)
彼のファーストネームはジョナのはずなんですが、こちらではただ「マツカ」で統一されております。みんな名前で呼び合ってるのにひとりだけファミリーネームというのもあれですし、だからってジョナと呼ぶと今更な違和感が(苦笑)
で、今回はようやくジョミー登場。
この話はブルーの視点で進んでいるので、最後のは間違いじゃありません。
しかしこのペースだとトォニィが出てくるまでにどんだけかかるんだろう……。
「別に目新しい情報は何もない。地球の浄化が進んでいれば大々的に発表されているはずだ。単に行った連中が帰ってくるだけの話だろう」
リオが立ち上げた携帯モバイルのホログラムに無感動に応えたのはキースで、ブルーは振り返りもしない。そのニュースなら、どのソースのものも一通り目を通した。
「これはまた素っ気無いですね。確かキースは地球再生機構への参加を希望しているのではなかったですか?」
それは初耳だ。思わぬところでキースとの接点を知ったブルーは多少興味を惹かれた。
だがすぐにそれも失い、一人歩く速度を上げた。
再生機構への参加は脱落者が続出するという訓練を潜り抜け、厳しい選考とその条件を満たした者のみが参加を許される。
その訓練生になることすらも選考を抜けねばならず、その門の狭さには定評がある。
ならば同じ道を目指しても、キースと同行するとは限らない。いや、恐らく不可能に近い。
なぜなら。
「希望はしているが、それは些末な情報に踊らされるという事とは別物だ。一通りのニュースには目を通している」
キースと同じ行動を取っていると知って、ブルーは機嫌は更に少し下降した。それまで気にも留めていなかった相手が、自分と同じものに興味を惹かれ、同じところを目指している。
しかもそこまでへの距離は、恐らくキースのほうが近い。
「ところで、僕はあなたにそんな話をした覚えはない……マツカ」
「は、はい!あの、でも兄さんなら別にいいかと思って……」
「余計なことを」
年少の二人はそんなブルーの様子など気づいた様子もないが、少し足を速めたというのに距離が空く気配がない。恐らくさりげなくリオがブルーに合わせて二人に気づかれないほど自然にペースを上げたろう。
「マツカは君の希望を吹聴して回ったわけではないですよ。この子が急に機構を目指すと言い出したから理由を尋ねただけです。君について、君の手助けをしたいと、そう言ってね」
ブルーは思わず零しかけた溜息を噛み殺して、更に少し速度を上げた。下り坂のお陰で勢いがついた。
「くだらない」
同じ道を目指し、その手助けをしたいという友人の思いをくだらないと切って捨てたキースに、マツカは怒るどころか軽く首を傾げた。
「今日は機嫌がいいんですね、キース」
無関心に先を歩いていたのに、思わぬ感想につい振り返ってしまった。
ブルーと目が合ったキースは不機嫌そうに眉を寄せてふいと横を向く。今朝のキースといえば、相も変わらぬ無表情。どの辺りに機嫌の良さがあるのだろうか。
「余計なことを言うな」
「はい、すみません」
叱られながら、それでも楽しそうなマツカの様子にリオは苦笑して、ブルーは気が知れないと肩を竦めて、リオとマツカをそれぞれ目だけで指し示す。
「ミュウはみんなどこか変なのか?」
「それはまた随分な言い様ですね」
「僕やキースみたいな奴に好んで構う」
「それを言うなら寛大と」
自分で言っていれば世話はない。少なくとも神経は図太いのだろうと結論付けて速度を落とさず歩き続けるブルーの後ろで、答えがなくとも自分で見つけたらしいマツカが軽く手を叩いた。
「ああ!そうか、今日からアルテメシアに移動していたサムが戻ってくるんでしたね」
言いながら自身も嬉しそうに微笑むマツカに、キースは苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、リオが弟に問う。
「サム?」
「キースの親友です。お父さんの仕事の都合で二年前にアルテメシアへ移住していて、今年から帰ってくるはずなんです」
「余計なことを言うな」
聞くともなしに耳に入ってきた後ろの会話に、キースにマツカ以外で友人がいたのかと少し感心してしまった。確かに自分よりはキースの方がまだ社交性は望めるが、世の中は案外お人好しと物好きが多いらしい。
どちらにしても自分には関わり合いのない話だと、大した興味もなく鞄を肩に掛け直した、その後ろでざわめきが起こった。
聞き慣れたそれに振り返りもしないでいると喧騒が大きくなり、悲鳴や怒声までが上がる。
さすがにいつものブルーを見世物にした様子ではないと振り返ろうとした刹那。
「どいてくれー!」
急ブレーキ音に周囲から上がる悲鳴。
その中心にいたはずのブルーは、一瞬のうちの判断で後ろにステップを踏んで振り返りながら道の脇に避けた。
その視界に、茶色の影が過ぎる。
それが人だと認識したのは、飛び込んできた物体を咄嗟に受け止めてからのことだ。
激しい衝突で飛び込んできた物を両手に近くの壁に強かに背中をぶつける。少し先に進んだ向こうでは、尾を引いたブレーキ音が何かに激突する音と共に止まった。
「サム!?」
背中と胸を痛めて軽く咳き込んだブルーに見向きもせずに、いつになく血相を抱えたキースが駆けて行く。その後ろをマツカが追いかける姿を見たところで、ブルーの腕の中のものが動いた。
ぎょっと目を落とすと、目に鮮やかな金色がすぐ傍にあって思わず息を飲む。
「いたた……」
呻き声が上がり、金色がひょこひょこと揺れて驚いた。
「なに……?」
「大丈夫ですか、ブルー!それに君も!」
蒼白の顔色で駆け寄ってきたリオの呼び掛けで、ブルーは腕に飛び込んできたものが、金色の髪を持った茶色のジャケットを着た少年だとようやく認識した。
(好きと言っても超浅いファンです。出演作品は指折り数えられるくらいしか観てない^^;)
いや、笑いどころもあってそこそこ楽しい映画でした。が、どうにも目当ての織田さんが……ちょっと、なんとなく、違う?なんて言えばいいのか……はまり役って感じじゃなかったかなーと。
椿三十郎はもっともっさりした人のほうがよかった気もする……のです。
ちょっと間抜けな青侍たちや、いつの間にかほだされている元敵の見張りとか、ほとんどのところが好きだったので、そこだけがちょーっと惜しかったな、と。
ただこれは完全に個人の趣味の問題で、一緒に見に行った二人には賛同を得られませんでした(苦笑)
そっかー、椿三十郎はもっともっさいと思ったのは自分だけかー。
こうなると、黒澤版の椿三十郎が観たいところ。
名作ぞろいの黒澤映画ですが、これまた指折り数えられるくらいしかみたことないんですよね……。趣味とはいえ物を書くなら、良作はたくさん見ないとだめなのに。だから底が浅いんだ(苦笑)
しかし作中のセリフですごくすごく気になって、しばらく集中できなかったものがありまして。
「本当にいい刀は鞘に収められている。あなたは抜き身の刀ね」
このセリフ、なんかのマンガで見た!マンガの中で、「古い映画のセリフで~」とあった、なんのマンガだっけ!?と気になって気になってしかたありませんでした。
ちなみにそのマンガは樹なつみさんの「八雲立つ」です。映画のエンディングロールになってようやく思い出したという。
オリジナルよりそっちで知ってるっていうのもどうなんだろう……(笑)
えー、この話のジョミーですが、女の子でいくことにしました。
女の子ジョミーが駄目な方には中途半端なところで宣言となって申し訳ないのですが、最初にそうなるかも~と書いていたということで……。
しかしここで女の子と宣言すると、初期展開のネタバレになっているという。
前回の冒頭に書いていた通り、転生した人たちは前世とほぼマンマの容姿をしておりますので、ベタな展開が待っております(笑)
とにもかくにも、まず3話目。ここから一気に登場人物が増えます~。
ジョミーは多分……次で登場できるかと。
このブルーは色々捩れています。それにしてもおかしな取り合わせ(笑)
家を出てしばらく進み、大通りまで出ると人の波に方向性ができる。
その波のうちのひとつはブルーと同じ年代の子供が作るもので、行く先はほぼ同じだ。
今日から新学期。
母の言葉を思い返して憂鬱な気分になった。
新学期、新学年。新入生も入ってくる。またしばらくの間は見世物だ。
銀の髪も赤い瞳も、自分の他に見たことがない。それは周囲にとってもブルー以外には見たことがないわけで、どうしても人目を集めてしまうのだ。否応もなしに。
それが酷く煩わしい。
ふと、横の角から黒のジャケットを翻して三つ年下の顔見知りが大通りに合流した。
あちらもブルーに気がついて、互いに視線が合ったがそれだけだ。
軽く目だけで挨拶をしたような、しなかったような、そんな様子で同じ方向へ向かう。
傍から見れば顔見知りだとは思わないほどの素っ気無く、二人揃って無言で歩いていると別の角からひょいと友人が現れた。
「やあ、おはようございます、ブルー」
「……おはよう」
それだけを返してまた気だるげに歩くブルーの横に並んだ幼馴染みは、素っ気無い態度にも気を悪くした様子もなく、眼鏡の向こうで優しげな目を細めて苦笑を漏らすだけだ。
そしてその弟は、同い年の友人の隣へとくっついた。
「おはようございます、キース」
「ああ、おはようマツカ」
背筋をピンと伸ばして歩くキースの返礼は、ブルーとは違い堅苦しいまでにきびきびとしている。
「相変わらずですね、二人とも。せっかく一緒に歩いているのに、まったく口も利かないなんて」
リオが呆れたような、いっそ感心するようなという様子で笑う。
隔意とまではいかなくとも、キースのほうには色々と思うところがあるようだが、ブルーからはキースに対して何の感慨もない。
「別に」
「話すこともないだけだ」
やはり揃ってにべもない返答をされて、リオは肩を竦めて息をついた。
「そうそう、それなら僕から提供する話題が……」
リオがごそごそと緑のコートのポケットを探っているうちにも、周囲からひそひそと小さな話し声と視線が集まってきていた。
ブルーがちらりと目を向けると、こちらを見て何かを話していた二人の女の子が顔を赤らめて小さな歓声のような短い声を上げる。
他にもこちらを見て声を潜めている集団がいくつもあって、ブルーは早々に予想通りの展開が見えた気がして溜息をついた。
「毎年毎年……」
愛想よく笑ったりしなければ、好奇の視線に対して睨みもせず、ブルーは気だるげな歩調のままで特に態度を変えることもない。
銀の髪に赤い目と、小さな頃は指を差されるたびに逃げるように足を速めたが、もうすっかり慣れてしまった。好奇の目にも、嫌悪の目にも。
「新入生でしょうか」
「だろうな」
あの反応はと傍で遠慮もなく言う友人は、本当に友人なのだろうか。
制服のない学校だったおかげで、一見しただけでは学年など分かりはしない。だがブルーに対する視線は、ある程度それを振り分けるのに役に立つ。特に女生徒は顕著に。
古馴染みの友人のうち、兄はそんな周囲のブルーへの態度に既に慣れきっているのに、その弟は気が優しいのか弱いのか、気を遣うような視線を向けてくる。
それが哀れみから来る同情なら反発もできるのに、マツカの場合は心根が優しいだけだと知っていることが、より厄介だった。
ブルーは軽く舌打ちして鞄の紐を引いて肩に掛け直した。
「ひとつ、先に言っておくが」
そんな中、友人の弟の、そのまた友人という微妙な立場の少年は、むしろこちらこそが昔からの馴染みのように遠慮の欠片もない。
「去年のような騒ぎを起こさないように心掛けてもらえるだろうか」
「君に何か迷惑をかけたか……ああ、そういえば学年代表だったな」
ブルーが絡むことで起こる騒動は、同学年ではほとんどと言っていいほどない。
キースが言った騒動とは、黙っていれば貴公子然としたその容姿に、勝手に憧れて勝手に盛り上がった下級生が告白なんてものをやってきて、ブルーがそれを手酷くあしらうことに端を発することが半数以上を占める。
去年が一年次だったキースは学年代表だったこともあって、大きな騒ぎに発展したときはその耳に原因のことも伝わっていたのだろう。何度か苦言を呈された。
強い抗議でなかったのは、一方的にブルーに問題があったわけではなかったからだ。まったく、三つも年下の癖に、妙に冷静で公正なので嫌になる。
「僕に言われても知らないな。それにキースは今年は二年次だ。一年もの期間があって、同じ愚を繰り返すような奴の短絡まで僕のせいにされてはたまらない」
優秀な少年はどうせ今年も学年代表だろうという認識で返すと、どうやら本人もそのつもりのようだった。
「一年次の女生徒が貴様に熱を上げるのは目に見えているという話だ」
「それこそ僕の知った話か」
導く後輩たちのことまで、今から気に掛けているのかと、いっそご立派な志に呆れるブルーに、去年の苦い思い出が蘇ったのかキースの目が険しくなったところで、リオがポケットから携帯モバイルを取り出して開いた。
「不毛な会話はこの辺りで終わりにして。シャングリラが地球を出発したというニュースは見ましたか?」
キースはともかく、リオがブルーの地球への興味を知らないはずはないので、これは完全に話題を変えにかかっただけだろうと、その気配りにブルーは皮肉めいた苦笑を頬に昇らせた。