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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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と言った人は偉大です……親父ギャグですけどね!(笑)
結局時間が足りなかったのが心残り…。クリスマスならみんなデートとかパーティーとかがあるだろうから早く帰れるかと思ったのに、連休の余波のほうが大きかったですよ。死にそう……orz
小話の連投の記事なので、スクロールを短くするために折り畳みます。内容は単なる愚痴(苦笑)

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一番の心残りは、子供こそクリスマスネタだろうに子ジョミで書けなかったことでしょうか……。
今年書けなかった残りのネタは、来年まだサイトがあれば書きたいです。たぶんあると思います(^^;)
ハロウィーンの時といい、前日になってネタがある程度できたせいで、なんだか強迫観念のように書き続けでした。途中からなぜここまでして書いているのか、すごい謎な気分に(笑)
その前に緋色パロでパソコンに張り付いていて、連投だったせいで目が痛い……今日は仕事もパソコン打ちだったし(苦笑)

シャングリラ学園の続きの方は、それこそおまけのつもりだったので、そんなにクリスマスらしい話じゃなくていいやーと思ってたんですが、魔性の男の方が時間が足りないとばっさり途中で切ったら、どの辺りがクリスマスの小話だったんだという感じに(苦笑)
クリスマスはキリスト教ゆかりの日ですが、天上の人というと天使とか?みたいな印象のブルーと、天国と天上は別ー!とクリスマスなんて知りもしなかったジョミーのはずだったんですが……単なるブルーののろけ祭りでした。あれ?(笑)

できれば年始にも何か話を書きたいのですが、今になって正月を家で迎えられるか微妙になってきたので、書けるかどうかわかりません。
東京行くなら29日に行きたかったよ……なんで31日なんだ……それは仕事が29日まであるから……(先立つものもないけどorz)
前の仕事は元旦からだったので、4日が仕事初めなだけありがたいんですけどね。
とりあえず、年が変わるまであと一週間弱、できれば毎日更新、を目標に頑張りたいです。
短編、魔性の男(ばらいろ すみいれいろパロの話)のクリスマス小話。
ブルーはやっぱり騙してます。色々と……(笑)




「ジョミー、ジョミー!」
ジョミーの姿を探して家中の扉を開けて回ると、ブルーの部屋でベッドにうつ伏せに寝そべりながら両手に顎を置いてマンガを読んでいるところを発見した。
「あ、お帰りブルー」
ゆらゆらと揺れていた足がベッドに落ちて、ベッドに手をつきながら振り返る、その仕草にブルーは緩みそうになる頬をどうにか保つ。
このまま上から覆い被さりたいのは山々だが、今日は別の目的がある。
「ただいま、ジョミー」
腰を屈めてその頬にキスを落とすと、くすぐったそうに片目を閉じたジョミーは、手を伸ばしてブルーを引き寄せ頬にキスを返してくれる。
頬に当てられた唇の感触にブルーは更に機嫌を良くしながら、脱いだコートを椅子にかけてネクタイを解く。
これが「いってらっしゃい、いってきます」と「おかえりなさい、ただいま」の挨拶なのだと教えると、ジョミーはなんの抵抗もなく受け入れた。
嘘は言っていない。この国ではあまり一般的ではないが、家族同士の挨拶である国だってあるのだから。
始め、養父のハーレイは、息子の所業に頭が痛いと額を押さえてよろめいたが、ブラウは喜んで協力してくれた。
つまり、ジョミーが地上に降りてきてからというもの、ハーレイとブラウも挨拶として頬にキスを贈りあう習慣を、ブラウによって定められたのだ。
ブルーとジョミーの視線を気にして抵抗したハーレイは、二人の姿が見えない玄関先でなら、という条件で結局妥協したらしい。
実は嬉しいくせに、とは思っていても口しない自分はできた息子だと思う。
ちなみに妻ではない女性には手の甲にするようにと教えているので、ジョミーがブラウに挨拶をするのは手の甲へのキスで、ハーレイは妻に操を捧げているという言い訳でキスの挨拶は拒絶した。むろん、息子からのプレッシャーに負けてのことだ。
ブルーは制服と学校指定のコートをクローゼットに仕舞いながら、今度は私服のコートを引っ張り出す。
「ジョミー、出かけよう」
「出かけるって、どこへ?」
「どこでも。君が行きたいところはないか?君はいらないといったけど、やっぱり僕は君にプレゼントを贈りたい。今思いつかなくても、街角を見て回れば欲しいものがあるかもしれないよ?」
起きがってベッドに胡座をかいていたジョミーは、軽く首を傾げて頬に指先を当てる。
「でも……ぼくは何も返せないし……」
「別にそんなことを気にしなくても。君はいつも僕にトレーニングをしてくれるのだから、そのお礼と思ってくれたら」
「それだよ。よくわからないけど、くりすます、だっけ?あれのせいでどこに行っても人だらけじゃないか。ブルーの訓練はまだ途中で、ときどきコントロールが効かなくなるだろう?人込みに行って大丈夫?」

ジョミーの危惧に、ブルーはにっこりと微笑む。
実はジョミーはまだ気づいていないけれど、ブルーの力のコントロールは至極順調に進んでいる。
順調でないのは、その振りをしているからだ。
少なくとも、道端を歩いていて突然バラの花束と共に見知らぬ男にプロポーズされたり、電車の中で杖をついたおばあさんに背後から抱きつかれて愛の告白をされたり、通りすがりの園児に離れたくないと腕にしがみ付いて大泣きされるなどという目には遭わなくなった。
ジョミーに落ち零れと思われるのはとても悔しいけれど、コントロールが上手く行くようになったのなら、天上へ行こうとジョミーにせがまれるはめになる。
ブルーはジョミーに詰め寄られて下から上目遣いでお願いされることには弱い。
だったら、最初からせがまれないようにしよう、というのがブルーの狙いで、今のところは上手くいっている。
そういうわけで、ジョミーが訊ねてくる前ほどブルーは人込みも苦手ではなくなっているのだが……。

「大丈夫だよ、ジョミー。君が一緒なら」
「もー!それじゃあブルーの訓練にならないじゃないか!」
ジョミーは頬を膨らませて不平を鳴らすが本気で怒っている様子ではない。
力をコントロールする方法として、ジョミーは初めにブルーと手を繋いだ。
ブルーに触れて力の方向の定め方を、同調して感覚で教えるためとのことで、指を絡めて、心を委ねるようにと言いながら。
以来ブルーはコントロールが苦手な人ということになっている。
「ジョミー」
ブルーが笑顔で手を差し出すと、ジョミーは膨れながらもベッドから降りて手を重ねた。
「クリスマスデートだね」
ブルーが微笑みかけると、ジョミーは軽く首を傾げる。
「くりすますって、家族で過ごす日だって言ってなかった?」
「うん。家族とか、友達とか……恋人とかの日なんだよ」
そうしてそんな日に、指を絡め合って寄り添って、ふたりで歩くのだ。
傍目にどう見えるのかなんて、ジョミーにはわからないかもしれないけれど。
ブルーは手を繋いで一緒に部屋を出ながら、腰を屈めてジョミーの頬にキスをした。
「なに?」
突然のキスに瞬きをするジョミーのにこりと微笑む。
「いってきますのキス」
「一緒に出かけるのに?」
「うん。だからいってらっしゃいのキスを僕からも贈るから」
君からも。
そう言ってもう一度頬にキスをすれば、やっぱりジョミーは背伸びをしてブルーの両の頬にキスを贈ってくれた。
とりあえず、クリスマス話の第一弾でシャングリラ学園。
相変わらずジョミーはツンデレ(でも今回はそれほどでもない?)
第一弾と言いつつ、一体何個書けるかはわかりません(苦笑)




「ジョミー、この紙に願い事を書いて」
「は?」
「願い事だよ」
ブルーに手渡されたのは、俳句でも詠めというのかと言いたくなるような短冊形の薄い紙だった。
「願い事って」
「もちろん、ツリーに飾る。君の願いが叶いますようにと僕が誠心誠意を込めてあのツリーの天辺に括りつけてあげるよ!」
「違う行事が混ざってますよ!」
ジョミーは紙を目の前の麗しい顔に叩き付けた。
「それを言うなら欲しいものでしょう!?それだって子供に言うことだけど」
「子供に?」
顔に叩きつけられた短冊形の紙を剥がしながら首を傾げるブルーに、ロッカーを指差す。
「そう。サンタクロースを信じているような子供に、願い事を書いて高いところに置いておけばサンタクロースがプレゼントを持ってきてくれるよって言って、親がああいうところに置くものでしょう?」
「なるほど、ジョミーの家のクリスマスはそうやっていたのか」
「子供の頃ですけどね」
「ではジョミー」
ジョミーにもう一度紙を握らせると、ブルーは上から両手で包むようにその手を握り締める。
「ここに欲しい物を書いて」
「………別にこんな方法を取らなくても」
紙に書くのはサンタクロースにお願いすると思っている子供だからだ。今のジョミーになら、クリスマスプレゼントは何がいい?と直接聞けばいいものを。
「何を言う!サンタクロースに頼むのだから紙に書かなくては!」
「はあ?」
また訳のわからないことを。
不審の目を向けるジョミーに、ブルーはわくわくと何かを期待するような目で、さあ書けやれ書けと迫ってくる。
サンタクロースをやりたいのか。
赤い服をきて、白い袋を担いで、「やあ、ジョミー。いい子にしていたかい?」と登場したいのだろう。別にそれくらいなら付き合ってやらないこともない。
無理やり生徒会長にされたことや、ちょっと思い込みの激しい転校生の相手をさせられたり、女湯を覗こうとするのを阻止したりすることに比べれば、これで気が済んでくれるなら可愛いものだ。
「分りました。欲しい物を書けばいいんですね?」
「そうだよ、そして僕に渡してくれたまえ。僕が責任を持ってサンタクロースに届けよう」
「あなたサンタクロースと知り合いなんですか」
ジョミーはくすくすと笑いながら、渡された紙を見て考える。
日頃から何かと面倒を掛けられているし、ブルーは高校生の癖に株とか宝くじとか競馬とかで日々儲けている(生徒会長だったくせに堂々と)
少しくらい高価なものを強請っても快く奢ってくれるだろうし、バチも当たらないだろうとは思う。
クリスマス商戦で新しいゲーム機のハードが発売だったなとか、この間格好いい腕時計を見つけたんだよなとか、テレビも見れる型の最新の携帯電話に機種変更したいなあとか、それこそどれもかなりの値が張りそうな物を色々と思い浮かべる。
紙を前に手にしたペンをくるくると回しながら考えるジョミーに、期待に満ちた楽しそうな目を向けるブルーをちらりと見て、ふむと小さく頷いた。


「ま、でもぼくらまだ高校生だしね」
枕を叩きながら呟くと、明日に備えて早く寝ようとジョミーはベッドに潜り込んだ。
いくら金に困ってないとは言っても、高価な物を強請るのはあんまりだろう。発売したばかりの好きなアーティストの最新アルバムで手を打っておいた。
明日会う約束をしているブルーは、果たしてどのタイミングでサンタクロースになるつもりなのか。それともあの格好はしないで、サンタクロースからなんて言いながら手渡しとか?
「会うのが学校だったら、絶対生徒会室にサンタクロースで現れただろうけど……」
手元のスイッチで室内の明かりを消して、赤い服を着たブルーを思い浮かべてくすりと笑みを漏らす。白い髭とビヤ樽のようなブルーは想像できないけれど、すらりと格好いいサンタクロースが出来上がることなら想像できる。だが今年の二十四日は学校は休みだ。
「とにかく、ブルーの相手をしたら疲れるんだから早く寝ないと」
温かなベッドの中で、ゆっくりと眠りに落ちた……はずだった。

「メリークリスマス、ジョミー」
まどろみの中で聞えるはずのない声が聞えて、ジョミーは目を開けた。
部屋は真っ暗だが、闇の中でも白いファーをつけた赤い服はしっかり見える。
「どろぼ……っ」
「しーっ!大声を上げるとご両親を起こしてしまうよ」
叫びそうになったジョミーの口を塞いで囁く声に、ジョミーは目を白黒させた。
「ブルー!」
「僕はブルーではなくてサンタクロースだ」
「何馬鹿なこと……ど、どうやって入ったんですか!?」
辺りを見回すと、もちろん生徒会室で転寝していたなんてことはなくて自分の部屋の中だ。
「サンタクロースだからね。忍び込むのは得意だ」
威張るように胸を張りながら、それでもブルーは種を明かす。
「君の鞄は生徒会室にあって、リオはいろいろと器用だし、知り合いも多い」
「……勝手に合鍵作ったんですね」
犯罪だろう。ブルー相手に今更なツッコミで、今更すぎるけど犯罪だろう。
叫びたいのを堪えたのは、ひとえに今が深夜で両親が起き出してきたら言い訳に苦慮するからに他ならない。
決してブルーの暴挙を許してのことではない。
「さ、ジョミー。メリークリスマス」
ぽんと軽く手渡された包みは、見慣れたCDショップのものではなくどうやらブルーが包み直したらしい。
「……ありがとうございます……普通に昼間渡してくれたら、もっと嬉しかったけど……」
それでも一応お礼が出てくるあたりがジョミーがジョミーたる所以かもしれない。
溜息交じりのお礼に、それでもブルーサンタはにこりと笑うと、白いぼんぼりをつけた帽子を手で直して立ち上がった。
「それではジョミー、よいクリスマスを」
「え、帰るんですか?」
本当にプレゼントを渡しに来ただけなのかと驚くジョミーに、ブルーサンタは大いに頷く。
「サンタクロースはプレゼントを渡したら即座に帰るものだよ」
「わざわざ合鍵まで作って忍び込んで人を起こしておいて、なに言ってるんですか。ちょっと待っててください。温かい飲み物を持ってきます」
渡された包みはひんやりと冷たく冷えていた。CDをわざわざ冷やすわけはないのだから、外がどれほど寒かったのか推して知れようというものだ。
サンタクロースの格好は温かそうだとはいえ、受験生に風邪でも引かれたら大変だ。
ぶつぶつとそう不平を漏らしながら、ベッドから降りようとしたジョミーの頬が少し赤いなんて、暗い部屋では見えないだろう。
それでも闇に慣れた目には、ブルーが微笑んだことはちゃんと見えた。
後編。今度こそホントに終わりです。
しかし考えてみれば、緋色だとシンの方のジョミーは報われないような気が……(今更)
あくまでネタなんでこの話は続きません~。




「それで……」
ジョミーは紅い椅子の傍らに立つ青年を、呆然と見上げる。
「それで、ブルーは?」
戦慄く唇を一度噛み締め、震えを止めてシンを睨みつける。
「ブルーを見捨てたのか!?」
「ブルーは生きてる!」
ジョミーの叫びをかき消すほどのシンの怒号は、まるで悲鳴のようだった。


「放して……放してくれ、ハーレイさん!ブルーを助けに戻るっ」
「行かせません」
「ブルーを置いて行く気なのか!?」
盾になると言って付いて来た。盾になりに来たのだ。
斬られたといっても、相手はシンをブルーだと思いそれ以上はブルーに手を出さなかった。今戻って手当てをすれば、大事には至らないかもしれない。
「あれはアニアン家の刺客です。あの男ひとりとは限らない」
「だからなんだ!?それよりも早く……っ」
強く腕を掴む手。指が食い込み、シンは痛みに一瞬だけ息を詰める。
「あの傷では、恐らく彼は……もう」
「な……っ」
「ブルー様!」
腕が千切れても構わない。そう思い今度こそ大きな手を振り払ったシンに、ハーレイはそう叫んだ。
「ブルー様!早くこのまま私と城へ登るのです!」
大きく目を見開いたシンの目に映ったハーレイは、激しい瞳でシンを見据える。
「……僕に、ブルーの身代わりに、なれ、と……?」
答えはない。だがそれは肯定する沈黙。
「馬鹿なっ!そんなことできるはずがない!それにブルーは生きてる!絶対に生きて……っ」
「だからこそ!」
大きな両手で激しく顔を掴まれる。睨み据えるハーレイの目は、狂気でも逃避でもない、強い光が彼が正気であることをシンに激しく訴えかけた。
「だからこそ、私はあの方が座る椅子を守るのです。いつか我々の元へ帰って来られる時のために、あの椅子をアニアン家の好きにさせるわけには行かない。あの方もそう望まれたから、あのようなことを……」
―――行ってください、ブルー様!
最初にそう叫んだのは、ブルーだった。
「どうか私と一緒に城へ。そしてあの椅子を……」
頬を掴む手に力が篭る。ハーレイの手は震えている。
「ブルー様、ご決断を!」


紅い椅子の肘掛けに触れる手は、村を出て行ったときのブルーよりほんの少しだけ大きく見えた。
ぼんやりと見つめるジョミーの目に、その指が肘掛けを握り締める様子が映る。
「その後は無我夢中だ。ブルーが帰ってきたときのために、王座を誰にも渡すわけにはいかなかった。僕とハーレイは、ブルーが帰ってくる日だけを考えて、ずっと……」
溜息が聞えた。
言葉に詰ったわけではない様子のそれに、のろのろと顔を上げると、シンの横顔は紙のように白い。
「……本当は、ブルーは村に戻ったのかもしれないと思っていた。家も家族も友達も、ブルー以外には何もない僕に、城と王座をあてがって、ブルーはジョミーの傍に戻ったのではないかと……」
ジョミーと同じ翠色の瞳が伏せられる。小さな溜息。
「だが違ったんだな……」
椅子から手を離し、振り返ったシンの瞳は閃光のように鋭くジョミーを見据える。
「ならばブルーはどこかでここへ戻る機会を見定めている。傷を癒しながら、この椅子へ座るための道を」
それは自分を騙し、信じようとしている目ではない。
語ったままを、信じている目。
「僕はそれまで、この椅子を守る。ブルーが帰ってくる、その日まで」

強い瞳。
そっと手を伸ばす。
ゆっくりと伸ばされたジョミーの手に、同じように伸ばされたシンの指先が触れた。
互いに強く握り合い、身を寄せる。
どちらともなく背中に手を回し、手を握り合ったまま、抱き締め合った。
シンの手は、剣を握り慣れた固い掌をしていた。
「………ぼくはブルーを探す」
「うん……」
短く交わされた言葉。それで十分だ。
ジョミーはブルーを探す。
シンは玉座を守る。
ただ、ブルーの願いを叶えるために。
その帰還を想って。


「くれぐれも気をつけて、ジョミー。ブルーを探すということは、秘密に近付くということだ。皆は僕をブルーだと信じてるはずだが、アニアン家の当主キースだけは油断ならない」
「ぼくより危ないのはシンの方だろ?ブルーが帰ってくるまで、君には無事でいてもらわなくちゃいけないんだ。気をつけて」
「言われるまでもない」
王座から離れて階段を下り、広い広間を歩きながらシンは自信の笑みを見せる。
ジョミーはそれに微笑み返し、シンの腕を軽く叩いた。
「ブルーが帰ってきて役目が終わったら、君は村に帰ってくるといい。待ってる」
君に帰る場所がないのなら、ぼくが帰る場所になろう。
シンは驚いたように目を瞬き、ジョミーは悪戯が成功したように笑う。
「何を驚いているんだ。ぼくは君で、君はぼく。ブルーのことを想っている」
あの人の無事と幸せだけを、想っている。
ジョミーの言葉に、シンも眉を下げて、そっと頷いた。

広間から出ると、扉の前でハーレイが待っていた。
何も言わずに頭を垂れる。
ジョミーは眉を寄せて、困った男に苦笑を滲ませると、先に立って歩を進めた。
「時がくるまで、彼を頼みます」
ハーレイは無言で更に深く頭を下げた。

入ったときと同じように、通用門から王宮を出ると、既に日は傾き空は紅く染まっていた。
ジョミーはその光に目を庇うように手を翳しながら、それでも夕日を真っ直ぐに見上げる。
あの人の瞳のように紅い空が滲んだのは、強い光に目が眩んだからだ。
「どこから探そうかな」
そう呟いて、ジョミーは王都の道を走り出した。








ブルーはもちろん生きてます。

緋色の中編。前後編で終わらなかった(またかorz)
せめて後編も一緒に上げます。
本当は陛下の名前は最後に分かるんですが、こっちではとっとと出ます。




ハーレイに連れられて、通用門から王宮へとすんなりと入ることができた。
誰もいない王宮の廊下を歩きながら、ジョミーは目を閉じる。
この先に何が待っているかなんて知らない。だがブルーの行方は聞き出さなくてはならない。本物のブルーは一体どこへいったのか。
……無事で、いるのか。
大きな扉の前で、ハーレイは立ち止まった。広い背中しか見えないけれど、彼が大きく息をついたことがわかった。
扉がゆっくりと開かれる。
その先に立っていたのは、国王の服を来た、ジョミーと同じ金の髪と翠の瞳をした青年だった。
ジョミーと青年の視線が正面からぶつかる。
青年の背後には、紅い椅子が見えた。
緋色の椅子。王の椅子。
ジョミーが臆する事無く部屋へと踏み込むと、青年は小さく笑った。
「ハーレイは下がってくれ。彼と二人で話したい」
一礼をしてハーレイは踵を返す。すれ違うとき、彼はジョミーと目を合わせようとはしなかった。

「君がジョミーだね?」
「………あんた、何者?ブルーはどこ?」
「まっすぐだね」
青年は口の端を上げて笑みを浮かべる。かっと頭に血が昇ることを自覚した。自覚したからなんだ。
「ブルーはどこだっ!」
青年は、目を閉じて一度顔を伏せた。短い、だが息苦しい沈黙が部屋に降りる。
「私の……僕の名前は、シン」
ゆるゆると吐き出された小さな息に続いて消え入りそうな小さな声で呟くように囁くと、シンと名乗った青年は強い目で顔を上げた。
「君は知らないだろうけれど、僕はアタラクシアの外れの橋の下で暮らしていた」
「え……!?」
知らなかった。いや、もしかするとどこかで見た顔かもしれない。
ジョミーが記憶を探ろうとしていることに構わずに、シンは話を続ける。
「流れ着いて死にかけていた僕を見つけて助けてくれたのはブルーだ。あの村で、僕を知っていたのも、気に掛けてくれていたのも、ブルーひとりだろう。だから彼が旅の支度をして、見知らぬ男について橋を渡るところを見つけたとき声を掛けた」


「ブルー!どこかへ行くの!?」
剣を腰に、荷物を肩に掛けたブルーは橋からシンを見下ろして、ほんの少しだけ考えるように沈黙する。
「……敵の多い所へ」
「敵……?危ないところなの?もう帰ってこないの?」
「………一緒に来るかい?」
「ブルー様!」
男は批難するように声を荒げたが、ブルーは涼しい顔で気にも留めない。
「僕の味方になってくれるのなら、連れていってあげるよ」
そんなことを聞かれるまでもない。たとえ連れていってくれなくても、シンはブルーの味方だ。何か力になれるのなら、ブルーのためならなんでもする。
「盾くらいにはなれる」
迷いなく答えると、ブルーの手が差し伸べられた。

旅は村での暮らしよりずっと快適なほどだった。ハーレイは良い身なりの通り、路銀に困ることもない。
道すがら、ブルーは王になりに行くのだと聞いた。ブルーが「どこ」へ行くのかではなく、「どこか」へ行ってしまうことが重要だったシンにとって、行き先はどこでも構わなかった。
「君はジョミーと似ている」
「ジョミー?」
「僕の幼馴染み。君より小さいけれど、髪の色も瞳の色もそっくりだ。でも、きっと似ているのは見た目だけではないんだろう」
ジョミーの話をするブルーはいつも優しい目をしていた。
「城に着いて役目を終えたら、僕はいつか村に帰る……つもりだ。大切なものを置いてきた」
ハーレイが傍にいないとき、ブルーはそっとそう打ち明けた。
村のある方角を見て目を細めていたブルーの横顔は、愛しいものを見ているかのように温かい目をしていて。
ブルーは突然ぐっと息を飲むと、すぐに咳き込み始めた。それは旅の間、時折見かけたことで、シンはその背中を擦って下から覗き込む。
「大丈夫?」
「―――平気だ。口を漱いでくる」
ブルーは川へ向かい、着いて行こうとしたシンを後ろからハーレイが呼び止める。
「シン!少し来てくれ!」
道が悪くて今日はあまり進めず、野宿になってしまうかもしれないと言っていたから、寝床か食事でなにか支度がいるのだろう。ブルーから離れて、シンはハーレイの元へと近寄った。
「この先に小屋を見つけた。このところブルー様のお加減が少し良くない。旅の疲れが出ているのだろう。だから君は……」
「貴様がブルーだな!」
悪意に満ちた声に、シンとハーレイは同時に振り返る。
川べりのブルーに向けて、剣を振りかざす男の姿を捉えた。
咄嗟に走り出したシンの目に、剣で斬られたブルーの紅い血が散る。
「ブ……っ」
「行ってください!」
次の一撃を避けて地面に転がりながら、傷口を押さえたブルーは大声を張り上げる。
「行ってください、ハーレイさん!どうか早くブルー様を王都へお連れして……っ」
ブルーが何を言っているのか、分からなかった。
シンはブルーの盾になりに来た。ブルーを守るためにここにいる。なのに今、血を流して倒れているのはブルーだ。
一体、どういうことだ。
「ブルー様を、どうか国王にっ」
「な、にを……」
よろめきながらブルーへ駆け寄ろうとするシンの腕を、大きな手が掴んだ。
無言で強く引っ張られる。
「あっちが本物のブルーか!」
男の舌打ちが聞えた。掴まれた腕が痛い。振り払いたいたのに、強い力がそれを許さない。振り返ると男は血に濡れた剣を手にシンたちを追いかけてきている。
その後ろで、血を流しながら地面に倒れていたブルーは、痛みの中で笑みさえを見せて。
「行って」
声は聞こえなかった。だが確かに、ブルーはそう言った。
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