日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.69 太陽の花21
Category : 転生話
1話ずつが短いとはいえ、気がつけば20話越え。でもまだ出逢って二日目。お、遅……!
目次
「用などない」
「でも、今行くなって」
「寝惚けていたんだ」
認めるのも腹立たしい話だが、意図して引き止めたと思われるよりはずっとマシだ。
周囲から好奇で注目されていることより、ジョミーの期待に満ちた目の方が耐えられない。どうしてよりにもよって、こんなときに寝惚けたんだ。
何か夢を見た気がするのに、例によってその夢の内容を覚えていないことにも苛立ちを覚える。
「大体、なぜ君がここにいる」
寝惚けた気恥ずかしさを誤魔化すために、常にも増してぶっきらぼうに言い放つと、ジョミーの後ろにリオがひょいと現れる。
「僕に会いに来たんですよ」
なんでもないその一言に、ブルーの中で何が蠢いた。
ほんの一瞬のことで、それが何かは分からない。そもそも何か変な感じを覚えたことすら気のせいだったかもしれない。そんな小さなざわめき程度の違和感。
「なぜリオに」
僕ならともかく。
続けそうになった言葉を飲み込んで、思ってもいない言葉が浮かぶ不可解さに眉を寄せる。だがジョミーはそんなブルーの自己分析が上手く行かない焦りなど気づいた様子もない。
「昨日リオか……リオ先輩から、ハンカチを借りたんですけど、汚しちゃって。それで新しいハンカチと、お礼を言いに来たんです」
ね、と後ろのリオを振り仰ぐように斜め後ろに視線を送ると、リオはそれに笑顔を返してからブルーに向かって頷いた。
なんだかよく分からないが、面白くない。
「ジョミー、言いにくいようでしたら、わざわざ先輩なんてつけなくてもいいんですよ」
「でも、先輩は先輩だし」
「先輩や後輩もいいですけれど、ジョミーとは友達になれるといいなとも思うのですが」
「友達……」
今まであまり年上と接してこなかったのか、ときどき言いにくそうにするジョミーにリオがそう提案すると、ジョミーは目を瞬いたあと、嬉しそうに小さく呟く。
「け、けどリオ、先輩はそんな丁寧に話してくれるのに」
「僕の話し方は癖みたいなものだから気にしないで。弟のマツカも似たようなものだったでしょう?」
「癖………なんだ……」
ぽつりと呟いて、何かを考える風に口元に手を当てて俯いたジョミーは、すぐに顔をあげて遠慮がちにリオを見上げた。
「えっと……じゃあ……リオって呼んでもいい?」
「ええ、どうぞ」
顔を見合わせて、少し照れた様子のジョミーと、それを微笑ましく見下ろすリオを前に、ブルー眉間には深いしわが刻まれていた。
一体なんなんだ。わざわざ人の席の前でする会話か、これは。
別に混ぜて欲しいとは欠片も思わないが、目の前で繰り広げられたいと思える種類でもない。
無言で席を立ったブルーに、ジョミーはすぐに視線をこちらに戻した。
「えっと」
「用事はない」
どうせ何か御用はと言うのだろうと先を制すると、ジョミーは言いかけた言葉を喉の奥に押し返されて何をどう言おうかとまごつく。
それを無視して席を離れようとしたブルーに、リオが目ざとくその手に下げた鞄に気づいた。
「帰るんですか?」
「ああ。まだ眠気が強い。どうせ寝るならここにいたって仕方がない」
これだから薬は嫌いなんだとは心の中だけで悪態をついて、病院に行って薬の処方を変えてもらうつもりで時計を確認した。どこも診療は終了している時間だが、時間外で行くか、明日まで待つかと思案しながら踏み出そうとしたが、同時に後ろに引っ張られる。
「………なんのつもりだ」
少し首を巡らせれば、リオに気づかれたことで開き直って肩に掛けた鞄の肩紐を、ジョミーがしっかりと握っていた。
「帰るんならぼく、鞄持ちま……」
「早退にまで付き合われたら、迷惑だ!」
肩紐を掴んだ手を振り払おうと大きく身を捻ると、また胸に痛みが走った。
また気にするだろうジョミーの手前、奥歯を噛み締めてその痛みをやり過ごす。
「さすがにこれはブルーの言うとおりだと思います」
リオが苦笑を零しながら後ろからそっとジョミーの両肩に手を置いてたしなめる。
元々リオは人当たりはいい男だ。それは分かっている。
だがこんな風に接触過多でもあっただろうか。
ジョミーの薄い小さな肩に置かれたその手が妙に目について、顔を背けるようにして歩き出す。
「帰り道、気をつけてくださいね!」
ジョミーが着いて来なかったのは、ブルーの言葉に従ったのか、それともリオの言葉に納得したのか。
今までのことを考えれば自ずと答えは出るだろう。
ブルーは鞄を肩に掛け直し、妙に苛立つ不愉快な気分を胸に教室を後にした。
目次
「用などない」
「でも、今行くなって」
「寝惚けていたんだ」
認めるのも腹立たしい話だが、意図して引き止めたと思われるよりはずっとマシだ。
周囲から好奇で注目されていることより、ジョミーの期待に満ちた目の方が耐えられない。どうしてよりにもよって、こんなときに寝惚けたんだ。
何か夢を見た気がするのに、例によってその夢の内容を覚えていないことにも苛立ちを覚える。
「大体、なぜ君がここにいる」
寝惚けた気恥ずかしさを誤魔化すために、常にも増してぶっきらぼうに言い放つと、ジョミーの後ろにリオがひょいと現れる。
「僕に会いに来たんですよ」
なんでもないその一言に、ブルーの中で何が蠢いた。
ほんの一瞬のことで、それが何かは分からない。そもそも何か変な感じを覚えたことすら気のせいだったかもしれない。そんな小さなざわめき程度の違和感。
「なぜリオに」
僕ならともかく。
続けそうになった言葉を飲み込んで、思ってもいない言葉が浮かぶ不可解さに眉を寄せる。だがジョミーはそんなブルーの自己分析が上手く行かない焦りなど気づいた様子もない。
「昨日リオか……リオ先輩から、ハンカチを借りたんですけど、汚しちゃって。それで新しいハンカチと、お礼を言いに来たんです」
ね、と後ろのリオを振り仰ぐように斜め後ろに視線を送ると、リオはそれに笑顔を返してからブルーに向かって頷いた。
なんだかよく分からないが、面白くない。
「ジョミー、言いにくいようでしたら、わざわざ先輩なんてつけなくてもいいんですよ」
「でも、先輩は先輩だし」
「先輩や後輩もいいですけれど、ジョミーとは友達になれるといいなとも思うのですが」
「友達……」
今まであまり年上と接してこなかったのか、ときどき言いにくそうにするジョミーにリオがそう提案すると、ジョミーは目を瞬いたあと、嬉しそうに小さく呟く。
「け、けどリオ、先輩はそんな丁寧に話してくれるのに」
「僕の話し方は癖みたいなものだから気にしないで。弟のマツカも似たようなものだったでしょう?」
「癖………なんだ……」
ぽつりと呟いて、何かを考える風に口元に手を当てて俯いたジョミーは、すぐに顔をあげて遠慮がちにリオを見上げた。
「えっと……じゃあ……リオって呼んでもいい?」
「ええ、どうぞ」
顔を見合わせて、少し照れた様子のジョミーと、それを微笑ましく見下ろすリオを前に、ブルー眉間には深いしわが刻まれていた。
一体なんなんだ。わざわざ人の席の前でする会話か、これは。
別に混ぜて欲しいとは欠片も思わないが、目の前で繰り広げられたいと思える種類でもない。
無言で席を立ったブルーに、ジョミーはすぐに視線をこちらに戻した。
「えっと」
「用事はない」
どうせ何か御用はと言うのだろうと先を制すると、ジョミーは言いかけた言葉を喉の奥に押し返されて何をどう言おうかとまごつく。
それを無視して席を離れようとしたブルーに、リオが目ざとくその手に下げた鞄に気づいた。
「帰るんですか?」
「ああ。まだ眠気が強い。どうせ寝るならここにいたって仕方がない」
これだから薬は嫌いなんだとは心の中だけで悪態をついて、病院に行って薬の処方を変えてもらうつもりで時計を確認した。どこも診療は終了している時間だが、時間外で行くか、明日まで待つかと思案しながら踏み出そうとしたが、同時に後ろに引っ張られる。
「………なんのつもりだ」
少し首を巡らせれば、リオに気づかれたことで開き直って肩に掛けた鞄の肩紐を、ジョミーがしっかりと握っていた。
「帰るんならぼく、鞄持ちま……」
「早退にまで付き合われたら、迷惑だ!」
肩紐を掴んだ手を振り払おうと大きく身を捻ると、また胸に痛みが走った。
また気にするだろうジョミーの手前、奥歯を噛み締めてその痛みをやり過ごす。
「さすがにこれはブルーの言うとおりだと思います」
リオが苦笑を零しながら後ろからそっとジョミーの両肩に手を置いてたしなめる。
元々リオは人当たりはいい男だ。それは分かっている。
だがこんな風に接触過多でもあっただろうか。
ジョミーの薄い小さな肩に置かれたその手が妙に目について、顔を背けるようにして歩き出す。
「帰り道、気をつけてくださいね!」
ジョミーが着いて来なかったのは、ブルーの言葉に従ったのか、それともリオの言葉に納得したのか。
今までのことを考えれば自ずと答えは出るだろう。
ブルーは鞄を肩に掛け直し、妙に苛立つ不愉快な気分を胸に教室を後にした。
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