日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.68 太陽の花20
Category : 転生話
過去の情景について、細かな点はアニメや原作とは異なっていることがあります。理由があるときもあれば、単にセリフや動作に自分の記憶の自信がないからというだけのこともあります。
今回は後者(^^;)
でもリオがいないのは仕様です(笑)
目次
気がつくと薄暗い部屋の中に立っていた。
仄かな青い光に照らされた部屋は、どこからか水の音が聞える。
「ここは……」
どこかで見覚えがあるような気がするのに、記憶のどこにも掛からない不思議な場所。
薄暗い明かりに目が慣れてくると、部屋の中央へ続く一本の通路が走っていることに気がついた。その先には、大きなベッドがひとつ置かれている。
確かに見覚えがある、とは感じた。だが部屋の全容が見えてくるほどに、見飽きた気分になるのは何故だろう。そこまで馴染みのある場所ではないはずなのに。
周囲を見回しながら歩を進め、支柱を持たないのに宙に浮く天蓋を持つベッドの傍らに立った。
「技術の無駄遣いだな」
持ち主の趣味なのか、それとも何か雰囲気でも出そうとしているのかと、無造作にカーテンを払ってみたが、そこには誰もいない。
「一体ここはどこなんだ」
溜息をついたところで、背後から誰かが駆けて来る騒々しい足音が聞えてきた。
振り返ったブルーの視界に、明るい金色の光が飛び込んでくる。
「ジョミー」
昨日からブルーの頭を悩ませている原因の少年の登場に、ブルーは天井を見上げて溜息をついた。
また君か。
だがブルーがそう零すより先に、扉を潜って部屋に入ってきたジョミーは荒い足取りで喧嘩腰に声を荒げる。
「来たぞ、ソルジャー・ブルー!」
その態度の悪さにブルーの眉間にしわが寄った。
「僕は君なんて呼んでいない。勝手に来ておいてなんて言い草……」
「ぼくはミュウなんかじゃない!」
咎める前に、更に意味の分からない言葉をぶつけられる。
「昨日の話か?あれは……」
これだから人と関わるのは面倒なんだと、忌々しげな溜息を零しながら髪の掻きあげたブルーは、ふとその手を止めた。
「……ソルジャー・ブルー?」
駆け込んできたジョミーは、確かにそう呼んだ。
ソルジャー・ブルーはブルーの名の元になったであろう人物ではあるが、ブルーのことではない。いくら『ジョミー・マーキス・シン』と『ブルー』が揃ったからといって、変な小芝居につき合わされるのは真っ平だ。
ムッと眉を寄せたブルーを、ジョミーは眦を上げて睨みつける。
初めて見せるその表情。
泣き出しそうな表情や、嬉しそうな笑顔、申し訳なさそうに肩を小さくすぼめて落ち込む様子。たった一日しか経っていないのに、あんなに色々な表情を向けられるなんて、他人と関わりを持つことを忌避するブルーにはあまり経験のないことだ。
その中でも、この表情はなかった。
純粋な怒りを秘めたその瞳は、まるでその中央に炎を宿しているのかと思うほどの生命力に満ち溢れ、緑玉よりも鮮やかに輝く。
言葉を失うブルーの前で、ジョミーは握り締めた拳を振るった。
「ぼくを家に……アタラクシアに帰せ!」
叩きつけられた言葉に唖然とするブルーの反応など見てもいないように、ジョミーの興奮状態が治まる様子はない。
帰せと言われても。アタラクシアとは……確か、アルテメシア星の首都がそんな名前だったはずだ。
「転校したくなかったとかいう話なら、僕にするのは筋違い……」
半ば呆けたまま、それでも反射のようにボソボソと言い差したところで、違和感に口を閉ざした。
おかしな点なら最初からすべてがそうだ。気がつけば見覚えはあるがどこかも知らない場所に立っていて、駆け込んできた顔見知りの少年は訳の分からない文句ばかりぶつけてくる。
だが最大の違和感は、目の前のその顔見知りの少年自身にあった。
どことはっきりとは言えないが、強いてあげれば全体的に何か違和感がある、としか言いようがない。
どうしたものかと沈黙するブルーを睨みつけていたジョミーは、突然はっとしたように息を飲み、ブルーの背後に視線を送る。
その視線を追って振り返っても誰もいない。
一体なんだとジョミーに目を戻すと、当のジョミーは既に背を見せて歩き出している。
「ちょっと待て!説明くらい……」
肩越しに振り返ったその視線。胡散臭いと言う不審を残しているのに、まるで去り難いような……。
思わず、手が伸びていた。
「行くな、ジョミー!」
「はい、行きません」
表情とは裏腹に、素直な返事が返ってきた。
いつの間に顔を腕に伏せていたのか、はっと起き上がるとそこは見知らぬ部屋ではなく、見慣れた教室の中だった。
周囲の不審そうな、好奇を含んだ、そんな視線が集まっていて、ブルーは眉を寄せて机から起き上がる。
居眠りか。
おぼろげなイメージしか残っていない夢の、更にその向こうの記憶を辿ると、たしかとてつもない睡魔が襲ってきて、しばらく戦った後にあっさりと降伏したような気がする。
そういえば、痛み止めを処方した医者は、ごく稀に副作用として強烈な眠気を覚えることもあるという話をしていた。
「くそ……あれのせいか……」
まだ眠気の残る頭で腕時計を見るとすでに昼休みの時間だ。時計を見ながら額を押さえようとして、右手が自由にならないことに不審を覚えて自分の手に目を向ける。
誰かの手がある。掴んでいるのは相手ではなくてブルーだ。自由にならなかったのは、その手に指が食い込むほどにきつく握り締めていたせいだろう。まるで言うこと聞かない手をどうにかしようと、左手で右手の手首を思い切り掴む。
硬直したように固く力を込めて手首を絡め取っていた指が、ようやく掴んでいた手から剥がれた。
息を吐くブルーが先ほどまで握っていた手はすいと引かれて姿を消したが、机の前に立つ人の気配は変わらずそこにある。
「ご用はなんですか?」
聞き覚えのありすぎる声に、ブルーは力の込めすぎで固くなった指を解す動作をぴたりと止めた。
ゆっくりと視線を上げると、予想に違わず、犬なら尻尾を振っていそうな嬉しそうな様子で、後ろに手を組んだジョミーが立っていた。
今回は後者(^^;)
でもリオがいないのは仕様です(笑)
目次
気がつくと薄暗い部屋の中に立っていた。
仄かな青い光に照らされた部屋は、どこからか水の音が聞える。
「ここは……」
どこかで見覚えがあるような気がするのに、記憶のどこにも掛からない不思議な場所。
薄暗い明かりに目が慣れてくると、部屋の中央へ続く一本の通路が走っていることに気がついた。その先には、大きなベッドがひとつ置かれている。
確かに見覚えがある、とは感じた。だが部屋の全容が見えてくるほどに、見飽きた気分になるのは何故だろう。そこまで馴染みのある場所ではないはずなのに。
周囲を見回しながら歩を進め、支柱を持たないのに宙に浮く天蓋を持つベッドの傍らに立った。
「技術の無駄遣いだな」
持ち主の趣味なのか、それとも何か雰囲気でも出そうとしているのかと、無造作にカーテンを払ってみたが、そこには誰もいない。
「一体ここはどこなんだ」
溜息をついたところで、背後から誰かが駆けて来る騒々しい足音が聞えてきた。
振り返ったブルーの視界に、明るい金色の光が飛び込んでくる。
「ジョミー」
昨日からブルーの頭を悩ませている原因の少年の登場に、ブルーは天井を見上げて溜息をついた。
また君か。
だがブルーがそう零すより先に、扉を潜って部屋に入ってきたジョミーは荒い足取りで喧嘩腰に声を荒げる。
「来たぞ、ソルジャー・ブルー!」
その態度の悪さにブルーの眉間にしわが寄った。
「僕は君なんて呼んでいない。勝手に来ておいてなんて言い草……」
「ぼくはミュウなんかじゃない!」
咎める前に、更に意味の分からない言葉をぶつけられる。
「昨日の話か?あれは……」
これだから人と関わるのは面倒なんだと、忌々しげな溜息を零しながら髪の掻きあげたブルーは、ふとその手を止めた。
「……ソルジャー・ブルー?」
駆け込んできたジョミーは、確かにそう呼んだ。
ソルジャー・ブルーはブルーの名の元になったであろう人物ではあるが、ブルーのことではない。いくら『ジョミー・マーキス・シン』と『ブルー』が揃ったからといって、変な小芝居につき合わされるのは真っ平だ。
ムッと眉を寄せたブルーを、ジョミーは眦を上げて睨みつける。
初めて見せるその表情。
泣き出しそうな表情や、嬉しそうな笑顔、申し訳なさそうに肩を小さくすぼめて落ち込む様子。たった一日しか経っていないのに、あんなに色々な表情を向けられるなんて、他人と関わりを持つことを忌避するブルーにはあまり経験のないことだ。
その中でも、この表情はなかった。
純粋な怒りを秘めたその瞳は、まるでその中央に炎を宿しているのかと思うほどの生命力に満ち溢れ、緑玉よりも鮮やかに輝く。
言葉を失うブルーの前で、ジョミーは握り締めた拳を振るった。
「ぼくを家に……アタラクシアに帰せ!」
叩きつけられた言葉に唖然とするブルーの反応など見てもいないように、ジョミーの興奮状態が治まる様子はない。
帰せと言われても。アタラクシアとは……確か、アルテメシア星の首都がそんな名前だったはずだ。
「転校したくなかったとかいう話なら、僕にするのは筋違い……」
半ば呆けたまま、それでも反射のようにボソボソと言い差したところで、違和感に口を閉ざした。
おかしな点なら最初からすべてがそうだ。気がつけば見覚えはあるがどこかも知らない場所に立っていて、駆け込んできた顔見知りの少年は訳の分からない文句ばかりぶつけてくる。
だが最大の違和感は、目の前のその顔見知りの少年自身にあった。
どことはっきりとは言えないが、強いてあげれば全体的に何か違和感がある、としか言いようがない。
どうしたものかと沈黙するブルーを睨みつけていたジョミーは、突然はっとしたように息を飲み、ブルーの背後に視線を送る。
その視線を追って振り返っても誰もいない。
一体なんだとジョミーに目を戻すと、当のジョミーは既に背を見せて歩き出している。
「ちょっと待て!説明くらい……」
肩越しに振り返ったその視線。胡散臭いと言う不審を残しているのに、まるで去り難いような……。
思わず、手が伸びていた。
「行くな、ジョミー!」
「はい、行きません」
表情とは裏腹に、素直な返事が返ってきた。
いつの間に顔を腕に伏せていたのか、はっと起き上がるとそこは見知らぬ部屋ではなく、見慣れた教室の中だった。
周囲の不審そうな、好奇を含んだ、そんな視線が集まっていて、ブルーは眉を寄せて机から起き上がる。
居眠りか。
おぼろげなイメージしか残っていない夢の、更にその向こうの記憶を辿ると、たしかとてつもない睡魔が襲ってきて、しばらく戦った後にあっさりと降伏したような気がする。
そういえば、痛み止めを処方した医者は、ごく稀に副作用として強烈な眠気を覚えることもあるという話をしていた。
「くそ……あれのせいか……」
まだ眠気の残る頭で腕時計を見るとすでに昼休みの時間だ。時計を見ながら額を押さえようとして、右手が自由にならないことに不審を覚えて自分の手に目を向ける。
誰かの手がある。掴んでいるのは相手ではなくてブルーだ。自由にならなかったのは、その手に指が食い込むほどにきつく握り締めていたせいだろう。まるで言うこと聞かない手をどうにかしようと、左手で右手の手首を思い切り掴む。
硬直したように固く力を込めて手首を絡め取っていた指が、ようやく掴んでいた手から剥がれた。
息を吐くブルーが先ほどまで握っていた手はすいと引かれて姿を消したが、机の前に立つ人の気配は変わらずそこにある。
「ご用はなんですか?」
聞き覚えのありすぎる声に、ブルーは力の込めすぎで固くなった指を解す動作をぴたりと止めた。
ゆっくりと視線を上げると、予想に違わず、犬なら尻尾を振っていそうな嬉しそうな様子で、後ろに手を組んだジョミーが立っていた。
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