日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.66 太陽の花19
Category : 転生話
ジョミーが女の子な分、アニメよりちょっと心配性なサム、のつもりであって、サムに恋愛感情はありません。彼にとっては、今回のことがあるまでジョミーは男友達感覚だったので(^^;)
目次
キースには「犬みたいに嬉しそうに」なんて冗談混じりの比喩で言ったものの、一人校舎へ入って行く先輩の背中を見送るジョミーの残念そうな様子は、主人に置いて行かれた犬を連想させて、あまり笑えない。
それとも思い込みが入っているのだろうか。もしかして、ジョミーがあの先輩のことを好きになっているんじゃないか、という心配で。
「おい、行かないのか」
ジョミーの様子に気づいていないのか、興味がないのか、キースが軽く肩を叩いて促すと、ようやくジョミーは軽く首を振って気を取り直したようだった。
「行くよ。こんなところに突っ立ってても仕方ないし」
歩き出したジョミーからは、もうそんな寂しそうな様子はなくなっていたけど、一度見た表情が気になって仕方がない。
「……おい、ジョミー。放課後はやっぱり俺が行くよ。先輩に怪我させたのって、俺にも責任あるしさ、交替で行くことにしようぜ」
「いいよ、ぼくが行く」
「なんでだよ。お前にばっかり負担を掛けるわけにいかないだろ」
「サムには無理だよ。だって先輩、手伝いなんて何もいらないって突っぱねるし。強引に押していかないといけないんだぞ?」
あの素っ気なさで毎回突っぱねられてもめげずに食い下がる……というのは確かに骨が折れそうだ。
僅かに怯みかけたものの、それではとジョミーに任せるのはやはり気が引ける。
「大丈夫だって。俺だって相当なお節介って言われるくらいだし」
自信満々で言うことでもないことを胸を張って言い切ると、ジョミーが反論するより先にキースが口を挟んできた。
「それより、そこまでいらないと言われたなら、それこそ放っておいたらどうだ。ブルーはそういったものは嫌うと教えただろう」
サムとジョミーの押し合いに、傍で聞いていたキースは呆れたように嘆息を漏らす。
「どうも見たところ、常に付き添いが必要なほどの状態ではないようだし、それだけアピールしておいたなら、必要があればブルーから呼び出すだろう。遠慮するという柄の男ではないしな」
「それもそうだよな。なあジョミー、キースの言う通りにするのが一番じゃないか?俺やお前より先輩のことわかってるだろうしさ」
きっとそれが一番いい。見たところあの先輩から呼び出すようなことは滅多にないと思えるし、そうすればジョミーがあの人に近付く機会はぐっと減る。
おかしな評判さえなければ、いかにも人気が高そうで難しそうな相手でも、頑張れと言えたかもしれないが、女生徒絡みで問題を起こしがちと聞いては、さすがに親友が心配で到底応援する気にはなれない。
だがキースの助言も、サムの危惧も飛び越えて、ジョミーは足を止めて長身のキースを見上げる。
「キースはあの人と、そんなに親しいのか?」
強い口調ではなかったけれど、キースの足が止まった。
時折。そう、本当にごくたまに、ジョミーの様子が一変するときがある。
普段サムと泥だらけになって走り回っているときは、男っぽいだけでどこにでもいる子供にしか見えないのに、静かな表情で、ひたと相手を見据えると、誰もが目を逸らせなくなる。
そんな瞬間が、ジョミーにはある。
例えばアルテラがミュウであることを誰かに疎まれたときがそうであったし、サムの弟がミュウに覚醒した時もそうだった。
ジョミーは手を上げることも声を荒げることもなく、アルテラを背中に庇って、妹を傷つけた相手を静かな瞳で見つめて黙らせた。その視線に怯えたのではなく、ばつが悪そうに俯いた相手の少年は、小さな声で謝って、二度とアルテラを傷つけるようなことは口にしなかった。
サムの弟がミュウに目覚めたとき、急に得た力に戸惑いながら強がっていた弟から本心を引き出したのもジョミーだった。パパとママを不安にさせたくないと零した弟の背中を優しく撫でながら、「子供の間くらいは親に心配をかけたっていいんだよ」と、まるで大人のようなことを言って。
「パパたちは、どうせぼくらがどれだけ大丈夫って言ったって、何でもないことでも心配したりするんだ。いつも強がっていたら、ママたちはどんなことにも心配する。たまには甘えて寄りかかってあげるのも親孝行さ」
ジョミーの言う恩着せがましい親孝行に苦笑したあと両親に正直に不安を口にした弟は、不安定になっていたサイオン数値が安定したと聞いた。
アルテラも、弟も、普段は恥かしがって口にしたり態度に出したりはしないけれど、ジョミーのことを心から好いている。きっと弟なんて、実の兄であるサムよりジョミーのほうをより信頼しているに違いない。
そんなことを思い出していたサムは、蛇に睨まれた蛙の状態で硬直しているキースに同情の溜息をついた。
ジョミーが纏う雰囲気は決して攻撃的ではないのだが、曖昧さを許さない厳しさがある。今回は「怒らせるな危険」の方の琴線に触れたらしい。
「おい、ジョミー。そう睨んでやるなって」
後ろから軽く肩を押してやれば、ジョミーは前へたたらを踏んで目を瞬いた。
「睨んでないよ。失礼だな。純粋な疑問ってやつだろ」
いつもの様子に戻ったジョミーに、キースは目の調子を確かめるように軽く右の瞼に手を当てている。
その気持ちはとてもよくわかる。ジョミーはどこかにスイッチでもあるのかと思えるくらいに、切り替えたときのギャップが激しい。
「で、どうなのさ。キースはそぉーんなに、ブルーと仲がいいの?」
改めてキースを見上げたジョミーは、先ほどの雰囲気とは違うものの、それでもにっこりと笑顔を見せる。
どこか感じる重石のような重圧に、キースは沈黙に落ちた。
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キースには「犬みたいに嬉しそうに」なんて冗談混じりの比喩で言ったものの、一人校舎へ入って行く先輩の背中を見送るジョミーの残念そうな様子は、主人に置いて行かれた犬を連想させて、あまり笑えない。
それとも思い込みが入っているのだろうか。もしかして、ジョミーがあの先輩のことを好きになっているんじゃないか、という心配で。
「おい、行かないのか」
ジョミーの様子に気づいていないのか、興味がないのか、キースが軽く肩を叩いて促すと、ようやくジョミーは軽く首を振って気を取り直したようだった。
「行くよ。こんなところに突っ立ってても仕方ないし」
歩き出したジョミーからは、もうそんな寂しそうな様子はなくなっていたけど、一度見た表情が気になって仕方がない。
「……おい、ジョミー。放課後はやっぱり俺が行くよ。先輩に怪我させたのって、俺にも責任あるしさ、交替で行くことにしようぜ」
「いいよ、ぼくが行く」
「なんでだよ。お前にばっかり負担を掛けるわけにいかないだろ」
「サムには無理だよ。だって先輩、手伝いなんて何もいらないって突っぱねるし。強引に押していかないといけないんだぞ?」
あの素っ気なさで毎回突っぱねられてもめげずに食い下がる……というのは確かに骨が折れそうだ。
僅かに怯みかけたものの、それではとジョミーに任せるのはやはり気が引ける。
「大丈夫だって。俺だって相当なお節介って言われるくらいだし」
自信満々で言うことでもないことを胸を張って言い切ると、ジョミーが反論するより先にキースが口を挟んできた。
「それより、そこまでいらないと言われたなら、それこそ放っておいたらどうだ。ブルーはそういったものは嫌うと教えただろう」
サムとジョミーの押し合いに、傍で聞いていたキースは呆れたように嘆息を漏らす。
「どうも見たところ、常に付き添いが必要なほどの状態ではないようだし、それだけアピールしておいたなら、必要があればブルーから呼び出すだろう。遠慮するという柄の男ではないしな」
「それもそうだよな。なあジョミー、キースの言う通りにするのが一番じゃないか?俺やお前より先輩のことわかってるだろうしさ」
きっとそれが一番いい。見たところあの先輩から呼び出すようなことは滅多にないと思えるし、そうすればジョミーがあの人に近付く機会はぐっと減る。
おかしな評判さえなければ、いかにも人気が高そうで難しそうな相手でも、頑張れと言えたかもしれないが、女生徒絡みで問題を起こしがちと聞いては、さすがに親友が心配で到底応援する気にはなれない。
だがキースの助言も、サムの危惧も飛び越えて、ジョミーは足を止めて長身のキースを見上げる。
「キースはあの人と、そんなに親しいのか?」
強い口調ではなかったけれど、キースの足が止まった。
時折。そう、本当にごくたまに、ジョミーの様子が一変するときがある。
普段サムと泥だらけになって走り回っているときは、男っぽいだけでどこにでもいる子供にしか見えないのに、静かな表情で、ひたと相手を見据えると、誰もが目を逸らせなくなる。
そんな瞬間が、ジョミーにはある。
例えばアルテラがミュウであることを誰かに疎まれたときがそうであったし、サムの弟がミュウに覚醒した時もそうだった。
ジョミーは手を上げることも声を荒げることもなく、アルテラを背中に庇って、妹を傷つけた相手を静かな瞳で見つめて黙らせた。その視線に怯えたのではなく、ばつが悪そうに俯いた相手の少年は、小さな声で謝って、二度とアルテラを傷つけるようなことは口にしなかった。
サムの弟がミュウに目覚めたとき、急に得た力に戸惑いながら強がっていた弟から本心を引き出したのもジョミーだった。パパとママを不安にさせたくないと零した弟の背中を優しく撫でながら、「子供の間くらいは親に心配をかけたっていいんだよ」と、まるで大人のようなことを言って。
「パパたちは、どうせぼくらがどれだけ大丈夫って言ったって、何でもないことでも心配したりするんだ。いつも強がっていたら、ママたちはどんなことにも心配する。たまには甘えて寄りかかってあげるのも親孝行さ」
ジョミーの言う恩着せがましい親孝行に苦笑したあと両親に正直に不安を口にした弟は、不安定になっていたサイオン数値が安定したと聞いた。
アルテラも、弟も、普段は恥かしがって口にしたり態度に出したりはしないけれど、ジョミーのことを心から好いている。きっと弟なんて、実の兄であるサムよりジョミーのほうをより信頼しているに違いない。
そんなことを思い出していたサムは、蛇に睨まれた蛙の状態で硬直しているキースに同情の溜息をついた。
ジョミーが纏う雰囲気は決して攻撃的ではないのだが、曖昧さを許さない厳しさがある。今回は「怒らせるな危険」の方の琴線に触れたらしい。
「おい、ジョミー。そう睨んでやるなって」
後ろから軽く肩を押してやれば、ジョミーは前へたたらを踏んで目を瞬いた。
「睨んでないよ。失礼だな。純粋な疑問ってやつだろ」
いつもの様子に戻ったジョミーに、キースは目の調子を確かめるように軽く右の瞼に手を当てている。
その気持ちはとてもよくわかる。ジョミーはどこかにスイッチでもあるのかと思えるくらいに、切り替えたときのギャップが激しい。
「で、どうなのさ。キースはそぉーんなに、ブルーと仲がいいの?」
改めてキースを見上げたジョミーは、先ほどの雰囲気とは違うものの、それでもにっこりと笑顔を見せる。
どこか感じる重石のような重圧に、キースは沈黙に落ちた。
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