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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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過去の情景について、細かな点はアニメや原作とは異なっていることがあります。理由があるときもあれば、単にセリフや動作に自分の記憶の自信がないからというだけのこともあります。
今回は後者(^^;)
でもリオがいないのは仕様です(笑)


目次

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気がつくと薄暗い部屋の中に立っていた。
仄かな青い光に照らされた部屋は、どこからか水の音が聞える。
「ここは……」
どこかで見覚えがあるような気がするのに、記憶のどこにも掛からない不思議な場所。
薄暗い明かりに目が慣れてくると、部屋の中央へ続く一本の通路が走っていることに気がついた。その先には、大きなベッドがひとつ置かれている。
確かに見覚えがある、とは感じた。だが部屋の全容が見えてくるほどに、見飽きた気分になるのは何故だろう。そこまで馴染みのある場所ではないはずなのに。
周囲を見回しながら歩を進め、支柱を持たないのに宙に浮く天蓋を持つベッドの傍らに立った。
「技術の無駄遣いだな」
持ち主の趣味なのか、それとも何か雰囲気でも出そうとしているのかと、無造作にカーテンを払ってみたが、そこには誰もいない。
「一体ここはどこなんだ」
溜息をついたところで、背後から誰かが駆けて来る騒々しい足音が聞えてきた。

振り返ったブルーの視界に、明るい金色の光が飛び込んでくる。
「ジョミー」
昨日からブルーの頭を悩ませている原因の少年の登場に、ブルーは天井を見上げて溜息をついた。
また君か。
だがブルーがそう零すより先に、扉を潜って部屋に入ってきたジョミーは荒い足取りで喧嘩腰に声を荒げる。
「来たぞ、ソルジャー・ブルー!」
その態度の悪さにブルーの眉間にしわが寄った。
「僕は君なんて呼んでいない。勝手に来ておいてなんて言い草……」
「ぼくはミュウなんかじゃない!」
咎める前に、更に意味の分からない言葉をぶつけられる。
「昨日の話か?あれは……」
これだから人と関わるのは面倒なんだと、忌々しげな溜息を零しながら髪の掻きあげたブルーは、ふとその手を止めた。
「……ソルジャー・ブルー?」
駆け込んできたジョミーは、確かにそう呼んだ。
ソルジャー・ブルーはブルーの名の元になったであろう人物ではあるが、ブルーのことではない。いくら『ジョミー・マーキス・シン』と『ブルー』が揃ったからといって、変な小芝居につき合わされるのは真っ平だ。
ムッと眉を寄せたブルーを、ジョミーは眦を上げて睨みつける。
初めて見せるその表情。
泣き出しそうな表情や、嬉しそうな笑顔、申し訳なさそうに肩を小さくすぼめて落ち込む様子。たった一日しか経っていないのに、あんなに色々な表情を向けられるなんて、他人と関わりを持つことを忌避するブルーにはあまり経験のないことだ。
その中でも、この表情はなかった。
純粋な怒りを秘めたその瞳は、まるでその中央に炎を宿しているのかと思うほどの生命力に満ち溢れ、緑玉よりも鮮やかに輝く。
言葉を失うブルーの前で、ジョミーは握り締めた拳を振るった。
「ぼくを家に……アタラクシアに帰せ!」
叩きつけられた言葉に唖然とするブルーの反応など見てもいないように、ジョミーの興奮状態が治まる様子はない。
帰せと言われても。アタラクシアとは……確か、アルテメシア星の首都がそんな名前だったはずだ。
「転校したくなかったとかいう話なら、僕にするのは筋違い……」
半ば呆けたまま、それでも反射のようにボソボソと言い差したところで、違和感に口を閉ざした。
おかしな点なら最初からすべてがそうだ。気がつけば見覚えはあるがどこかも知らない場所に立っていて、駆け込んできた顔見知りの少年は訳の分からない文句ばかりぶつけてくる。
だが最大の違和感は、目の前のその顔見知りの少年自身にあった。
どことはっきりとは言えないが、強いてあげれば全体的に何か違和感がある、としか言いようがない。
どうしたものかと沈黙するブルーを睨みつけていたジョミーは、突然はっとしたように息を飲み、ブルーの背後に視線を送る。
その視線を追って振り返っても誰もいない。
一体なんだとジョミーに目を戻すと、当のジョミーは既に背を見せて歩き出している。
「ちょっと待て!説明くらい……」
肩越しに振り返ったその視線。胡散臭いと言う不審を残しているのに、まるで去り難いような……。
思わず、手が伸びていた。
「行くな、ジョミー!」

「はい、行きません」
表情とは裏腹に、素直な返事が返ってきた。
いつの間に顔を腕に伏せていたのか、はっと起き上がるとそこは見知らぬ部屋ではなく、見慣れた教室の中だった。
周囲の不審そうな、好奇を含んだ、そんな視線が集まっていて、ブルーは眉を寄せて机から起き上がる。
居眠りか。
おぼろげなイメージしか残っていない夢の、更にその向こうの記憶を辿ると、たしかとてつもない睡魔が襲ってきて、しばらく戦った後にあっさりと降伏したような気がする。
そういえば、痛み止めを処方した医者は、ごく稀に副作用として強烈な眠気を覚えることもあるという話をしていた。
「くそ……あれのせいか……」
まだ眠気の残る頭で腕時計を見るとすでに昼休みの時間だ。時計を見ながら額を押さえようとして、右手が自由にならないことに不審を覚えて自分の手に目を向ける。
誰かの手がある。掴んでいるのは相手ではなくてブルーだ。自由にならなかったのは、その手に指が食い込むほどにきつく握り締めていたせいだろう。まるで言うこと聞かない手をどうにかしようと、左手で右手の手首を思い切り掴む。
硬直したように固く力を込めて手首を絡め取っていた指が、ようやく掴んでいた手から剥がれた。
息を吐くブルーが先ほどまで握っていた手はすいと引かれて姿を消したが、机の前に立つ人の気配は変わらずそこにある。
「ご用はなんですか?」
聞き覚えのありすぎる声に、ブルーは力の込めすぎで固くなった指を解す動作をぴたりと止めた。
ゆっくりと視線を上げると、予想に違わず、犬なら尻尾を振っていそうな嬉しそうな様子で、後ろに手を組んだジョミーが立っていた。
ジョミーが女の子な分、アニメよりちょっと心配性なサム、のつもりであって、サムに恋愛感情はありません。彼にとっては、今回のことがあるまでジョミーは男友達感覚だったので(^^;)


目次



キースには「犬みたいに嬉しそうに」なんて冗談混じりの比喩で言ったものの、一人校舎へ入って行く先輩の背中を見送るジョミーの残念そうな様子は、主人に置いて行かれた犬を連想させて、あまり笑えない。
それとも思い込みが入っているのだろうか。もしかして、ジョミーがあの先輩のことを好きになっているんじゃないか、という心配で。
「おい、行かないのか」
ジョミーの様子に気づいていないのか、興味がないのか、キースが軽く肩を叩いて促すと、ようやくジョミーは軽く首を振って気を取り直したようだった。
「行くよ。こんなところに突っ立ってても仕方ないし」
歩き出したジョミーからは、もうそんな寂しそうな様子はなくなっていたけど、一度見た表情が気になって仕方がない。
「……おい、ジョミー。放課後はやっぱり俺が行くよ。先輩に怪我させたのって、俺にも責任あるしさ、交替で行くことにしようぜ」
「いいよ、ぼくが行く」
「なんでだよ。お前にばっかり負担を掛けるわけにいかないだろ」
「サムには無理だよ。だって先輩、手伝いなんて何もいらないって突っぱねるし。強引に押していかないといけないんだぞ?」
あの素っ気なさで毎回突っぱねられてもめげずに食い下がる……というのは確かに骨が折れそうだ。
僅かに怯みかけたものの、それではとジョミーに任せるのはやはり気が引ける。
「大丈夫だって。俺だって相当なお節介って言われるくらいだし」
自信満々で言うことでもないことを胸を張って言い切ると、ジョミーが反論するより先にキースが口を挟んできた。
「それより、そこまでいらないと言われたなら、それこそ放っておいたらどうだ。ブルーはそういったものは嫌うと教えただろう」
サムとジョミーの押し合いに、傍で聞いていたキースは呆れたように嘆息を漏らす。
「どうも見たところ、常に付き添いが必要なほどの状態ではないようだし、それだけアピールしておいたなら、必要があればブルーから呼び出すだろう。遠慮するという柄の男ではないしな」
「それもそうだよな。なあジョミー、キースの言う通りにするのが一番じゃないか?俺やお前より先輩のことわかってるだろうしさ」
きっとそれが一番いい。見たところあの先輩から呼び出すようなことは滅多にないと思えるし、そうすればジョミーがあの人に近付く機会はぐっと減る。
おかしな評判さえなければ、いかにも人気が高そうで難しそうな相手でも、頑張れと言えたかもしれないが、女生徒絡みで問題を起こしがちと聞いては、さすがに親友が心配で到底応援する気にはなれない。
だがキースの助言も、サムの危惧も飛び越えて、ジョミーは足を止めて長身のキースを見上げる。
「キースはあの人と、そんなに親しいのか?」
強い口調ではなかったけれど、キースの足が止まった。

時折。そう、本当にごくたまに、ジョミーの様子が一変するときがある。
普段サムと泥だらけになって走り回っているときは、男っぽいだけでどこにでもいる子供にしか見えないのに、静かな表情で、ひたと相手を見据えると、誰もが目を逸らせなくなる。
そんな瞬間が、ジョミーにはある。
例えばアルテラがミュウであることを誰かに疎まれたときがそうであったし、サムの弟がミュウに覚醒した時もそうだった。
ジョミーは手を上げることも声を荒げることもなく、アルテラを背中に庇って、妹を傷つけた相手を静かな瞳で見つめて黙らせた。その視線に怯えたのではなく、ばつが悪そうに俯いた相手の少年は、小さな声で謝って、二度とアルテラを傷つけるようなことは口にしなかった。
サムの弟がミュウに目覚めたとき、急に得た力に戸惑いながら強がっていた弟から本心を引き出したのもジョミーだった。パパとママを不安にさせたくないと零した弟の背中を優しく撫でながら、「子供の間くらいは親に心配をかけたっていいんだよ」と、まるで大人のようなことを言って。
「パパたちは、どうせぼくらがどれだけ大丈夫って言ったって、何でもないことでも心配したりするんだ。いつも強がっていたら、ママたちはどんなことにも心配する。たまには甘えて寄りかかってあげるのも親孝行さ」
ジョミーの言う恩着せがましい親孝行に苦笑したあと両親に正直に不安を口にした弟は、不安定になっていたサイオン数値が安定したと聞いた。
アルテラも、弟も、普段は恥かしがって口にしたり態度に出したりはしないけれど、ジョミーのことを心から好いている。きっと弟なんて、実の兄であるサムよりジョミーのほうをより信頼しているに違いない。

そんなことを思い出していたサムは、蛇に睨まれた蛙の状態で硬直しているキースに同情の溜息をついた。
ジョミーが纏う雰囲気は決して攻撃的ではないのだが、曖昧さを許さない厳しさがある。今回は「怒らせるな危険」の方の琴線に触れたらしい。
「おい、ジョミー。そう睨んでやるなって」
後ろから軽く肩を押してやれば、ジョミーは前へたたらを踏んで目を瞬いた。
「睨んでないよ。失礼だな。純粋な疑問ってやつだろ」
いつもの様子に戻ったジョミーに、キースは目の調子を確かめるように軽く右の瞼に手を当てている。
その気持ちはとてもよくわかる。ジョミーはどこかにスイッチでもあるのかと思えるくらいに、切り替えたときのギャップが激しい。
「で、どうなのさ。キースはそぉーんなに、ブルーと仲がいいの?」
改めてキースを見上げたジョミーは、先ほどの雰囲気とは違うものの、それでもにっこりと笑顔を見せる。
どこか感じる重石のような重圧に、キースは沈黙に落ちた。

一時的に裏へのリンクを切りました。
理由はとても簡単。
現在お借りしてるレンタルスペースがアダルト禁止だったことを思い出したから。

前回、素直~は裏行きにしたほうがいいかな、と呟いたところで、そういやなんで元々このサイトでは裏は書かないと決めたんだっけ?……と考えて理由を思い出したのでした。
本気で忘れてた……す、すみません、ダメ管理人…orz
ぬるかろうが甘かろうが年齢制限を設けている以上はNG。ということで一旦締めました。

とはいえ、まだ書きたいネタはあるので、たぶん移転します。
スッパリ削除するより引越しを選びました(笑)
ただ移転しても、元のINDEXからでも入れるようにはしておきますので、クリック一回分増えても平気な方は、お気に入り等はそのままにしていただいても大丈夫です。
入口利用のように見えますが、ここは元々、別のサイトの別室なので無問題。本家サイトが移転、閉鎖する場合にはINDEXも消去しなくてはならないので、その際は改めてお報せいたします。……更新頻度でいえば、どっちが本家だという感じの本家ですが、あちらも締めるつもりは今のところまったくないので大丈夫かと。

移転に伴い、期間限定だった三つの話を再アップする予定です。
……移転理由である裏に、今のところ二本しかない(しかも素直~を含めて)って、なんだか空しくて(^^;)
一本は子ジョミのハロウィンなので裏じゃないんですが、他を再アップして一番問題のないこれを下げておくというのもなんだかおかしな話のような気がしたので、これも一緒に上げます。
一応今度も期間限定のつもりなのですが、その期間が「裏が寂しくないくらいに他の話が増えたら」のつもりなので、下手したらいつまでも居座るかもしれません。
ははは!居たたまれないなら、早く他の裏話を更新しなくてはいけないという二重の羞恥プレイだ!
……orz

近々移転先のお報せと共に、新サイトのURLをINDEXとTOPの両方にアップする予定です。
いい加減な管理人のせいでご迷惑をおかけしますが、なにとぞ平にご容赦を……。

今頃ガンダム00を見忘れたことを思い出した、浦島太郎的感覚です。コンバンハ。
……本当にびっくりした!もう丸一日以上過ぎてるじゃないか!
昨日あたりから絶望的に集中力がなくて、歌姫が書けなくてずーっと唸っていたので……。ああ、出来れば引き篭もりだった今日はもう一個更新するはずだったんですけどねー……。
ジョミシンをですね、書きたいのですよ。半分だけ裏っぽいような、でもすぱっと裏といえないような…せいぜいR15くらいな、そんな話。
そういえば裏部屋を別に作ったんだから、素直は美徳もあっちに移すべきじゃないだろうか、とか今頃考えてます。そもそもあの話は、全年齢対象でもいけるように、あれもこれもぼやかそうと努力した覚えがあるのですが、考えてみれば少なくともR15くらいにはすべきなんじゃ……特に2は。
……い、今頃ですが明日あたり、移動しているかもしれません。ぼやかせばいいって、なんて適当な基準なんだ……orz
お題から、ぱっと浮かんだ情景が唐突に書きたくなった小話です。
またまたパラレル。
大学教授のブルーと、もうすぐその大学に入学予定(既に合格済み)の高校生ジョミー。
(と、いうことは時期的に2~3月くらいですね。やはり舞台は日本の暦(笑))
ブルーは何年前から容姿が変わってないのか分からないと噂されている若作りで年齢不詳。
出会いはジョミーが体験見学に来たとき。
とか一瞬にして無駄に設定が決まったのですが、あんまり話に関係ありません(笑)
そしてこの二人はまだ付き合ってません。




「こんにちはー」
研究室の扉を開けたジョミーは、ドアノブを握ったまま溜息をついた。
すでに見慣れた光景とはいえ、三日前に片付けたばかりの部屋がすでに元の状態に戻っていれば溜息をつきたくもなるというものだ。
「なんでこんなに物が散乱するのかな」
ジョミーは手首にかけていた紙袋をドアノブに掛けて、床の上に所狭しと山積みになった本をなるべく踏まないように掻き分けて奥へ進む。
「教授ー?部屋にいますかー?生きてますかー?」
先へ進むほど、本の山に何か呪文のようなものを書き付けた紙が混じって落ちている、その割合が高くなる。
「ジョミー」
声が聞こえた方に目を向けると、窓の近くに積み上げられた本の隙間から、ひらひらと左右に揺れる白い手が見えた。
「ああよかった、生きてる」
本は踏まないように気をつけているけれど、紙に関しては気にしない。散乱している紙はもはや必要ないものだ。ならばジョミーにとって理解不能な数字を羅列した紙は、なんの意味も持たない。
乱暴にページが開かれた本を一冊拾い上げて、窓際の堤防のようになっている本の山の一番上に置いて肘を掛けながら、その向こうを覗き込んだ。
「生きてますかとは酷いな」
「だって教授、ほっとくと何も食べないで研究室に篭りきりになったりするじゃないですか」
散乱する紙をベッドに、窓の真下で本を胸に。
覗き込んだジョミーを見上げた、眼鏡の奥のブルーの赤い瞳は、寝起きらしく随分と瞼が重そうだ。
「ほら、また眼鏡を掛けたまま寝てるし。顔を怪我したり、フレームが曲がりますよ」
横に膝を付きたいところだったけれど、ブルーの横は本の山があるのでそれを回り込む。
それでも動かないブルーの足の間に膝をつき、半ば覆い被さるようにして手を伸ばして眼鏡を取り上げた。
「ジョミー」
伸ばされた手を避けて起き上がると、取り上げた眼鏡を掛けてみる。
「うわ、度がキツイ。目が回りそう」
「乱視も入っている。それがないと君の顔も良く見えない。返しなさい」
「だったら寝転んでないで起き上がってください」
ジョミーはブルーの足の間にしゃがみ込み、眼鏡をかけたまま両手に顎を乗せて、また目を閉じたブルーを呆れて見下ろした。
「……まだ眠い」
「こんなところで寝るからですよ。効率のいい研究には、質の良い睡眠も大事だって言ってましたよ」
「ふぅん、誰がそんな適当なことを」
「あなたです。以前、中庭で」
「………」
眠そうに眉を寄せていたブルーの目が開いた。
ブルーが起き上がって顔が近くなっても、レンズの向こうの顔はぼやけてよく見えない。
「何度も言うが、君はまだここの学生ではないから教授などと呼ばなくていい」
「学生になったら呼ばないといけないなら、今からでも一緒でしょう?」
「学生になった後は、『人前では』という条件に変わる」
ぼやけた視界でも伸ばされた手は分かる。今度は逃げずに代わりに目を閉じた。
眼鏡が取り上げられて、瞼を開けると今度こそ何も隔てずに赤い瞳がすぐ傍にある。

「ジョミー?」
不思議そうに呼ばれて初めて、眼鏡をかけようとしていたブルーの手を止めていたことに気づいた。
「ああ……ごめんなさい」
眼鏡をかけたら邪魔になりそうだな、なんて。
一体なんの邪魔になると言うのだろう。
「弁当を作ってきましたら、あなたは中庭で日向ぼっこでもしながら食べてきてください」
「君の手作り?」
眼鏡をかけながら尋ねるブルーに、大仰に頷く。
「そう。ぼくの手作り。あなたがお願いしたら、いくらでも作ってくれそうな女の子がいるのに」
「君の料理が一番美味しい」
「味音痴のくせに」
放っておけばコンビ二エンスストアのサンドイッチやおにぎりばかり食べるブルーのために、ジョミーはせっせと栄養バランスを考えた弁当を作ってはこうして訪ねてくる。
しかもブルーはそれらなんにでもソースをかけようする。味が足りないかどうかではなく、単にそれが習慣だと言われたときには頭が痛くなった。
それを叱りつけたジョミーの手料理だけはそのまま食べる。ジョミー以外の人の料理にはすべてソースをかける。だから弁当を持ってくることが止められない。
すぐに食事を抜く。食べたら食べたでまた身体に悪そうな食べ方。
放っておけば絶対にこの人は病気になる。
そんな義務感に溢れたボランティア。
「ぼくはいつまでこうして弁当係を続けなくちゃいけないんでしょうね」
「ずっとしてくれたらいい。君の料理なら僕も食べるし、君も安心だろう。僕の助手になりたまえ」
「弁当を作ったり、掃除をしたり、助手じゃなくて家政夫の間違いでしょう、それじゃ」
「君と金で雇う関係になる気はない」
やれやれとジョミーはしゃがんでいた膝を伸ばして立ち上がる。
「ブルーは庭へどうぞ」
「一緒に食べよう。掃除はその後でいいだろう?」
「ぼくにも都合ってもんがあるんですよ!?」
この部屋の片付けだけでもどれほど時間が掛かるか分からないのに、食事までしていたら益々遅れる。日が沈むまでに終えなくては、中庭に追い出したブルーがそのままで転寝でもしてしまえば風邪を引いてしまう。
「分かっているさ。さあ行こう。君と一緒に取る食事は美味しいから箸も進む」
分かってない返事を返すブルーとのかみ合わない会話に、ジョミーは溜息をついて部屋を見渡した。
「明日も来るか」
二日に分ければどうにかなる。そうすると中一日でまたここに来なくてはいけないが、それならブルーの食事を明日も持ってくることになるし。
ジョミーの独り言に、ブルーは満足そうに微笑んだ。


「書物の海から引き上げろ」
配布元:Seventh Heaven


 

単にメガネでだらしなくて世話の焼けるブルーと、
面倒見のいい色々器用で家事の得意なジョミーが
書きたくなったというだけの話。

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