日々の呟きとか小ネタとか。
現在は転生話が中心…かと。
No.62 太陽の花18
Category : 転生話
サムは友達思い。ブルーは自分の気持ちに無自覚。ジョミーはどちらの内心も分かってない。キースは鈍い。
このメンバーだと話がややこしくなるだけのような……(苦笑)
目次
「ジョミー!」
後ろから足音も騒がしく駆けてくる少年の声に、ブルーの眉間にしわが寄った。
あの下級生には特に非はないはずだ。今も斜め後ろから話し掛けてくるジョミーとは違い、ブルーにやたらと関わってくるわけではない。今だって彼が呼んだのはジョミーだ。
だというのに、つい身体が急ぐように僅かに前のめりになる。
気が付けば空いていたらしい距離は、向こうが少し走ると簡単に詰められた。
後ろから引っ張られたらしく、触れるような距離にいたジョミーが不自然な動きで視界の端から急に消える。
空いた右側につい振り返りそうになって、首に力を入れてそれを避けた。
「お前、はえーよ。先に行くなって」
「ぼくも先輩も速くないよ。サムがゆっくりしすぎなんだろ。ほら、キースなんて走ってなくてももう追いついた」
「コンパスの差があるからな」
「…………うわあ……すごいな……」
「キース……悪気がないからって何でも許されると思うなよ!」
「僕は何かおかしなことを言ったか?」
すぐ後ろの喧騒に、ブルーは更に少し前のめりになる。
キースは自分と同種に近い人間だと思っていたが、少し違うようだ。彼は人が嫌いなのではなくて、単に心の機微に鈍いだけらしい。だから友人は少ないが、心を許した相手を持つ事も、自らも歩み寄ることもする。
ブルーにはひとり友人がいるけれど、彼がいい加減に呆れてブルーから離れて行けば、果たして追いかけるだろうか。恐らくは否、だ。
キースとマツカもそんな関係だろうと見ていたけれど、そうではないかもしれない。キースは、マツカの優しさに報いることもあるかもしれない。
そしてジョミーは明らかに、そんなキースたちといるほうが似合う少年だ。
ブルーの世話を焼きたがる様子は一生懸命で誠実で、どれほど明るく振舞っていてもそこにはどこか必死な痛々しさがある。
だがキースやサムと過ごすジョミーは、快活な彼らしい様子が伺える。
馬鹿馬鹿しい。関係が違うのだから当然だ。
ジョミーはサムと友人で、恐らくそのサムを通してキースとも友人になって、けれどブルーとはあくまで責任を挟んだ関係。
だったら無理をしてまで、ブルーの世話を焼こうとしなければいいのに。こちらが生活の補助をしろと言ったわけでもないのに勝手に押しかけて、義務感を振りまくくらいならこなければいい。
学園の門が見えたときには、ほっと息をついてしまった。
何に対して安堵したのかと思えば、そんな些細な行動さえも面白くない。
「もう着いた。鞄を」
振り返って手を差し出せば、ジョミーはそれを忌避するようにブルーの鞄の肩紐を握り締めてブルーから少し遠ざけた。
「教室までまだあります」
「教室まで着いてくる気か?」
「したいようにすればいいって言ったのは先輩じゃないですか」
確かにそうは言ったけれど。
ジョミーがただ難色を示しただけなら更に不快が煽られたかもしれないけれど、彼は拗ねたように唇を尖らせて抗議する。
ジョミーの見せる素直な感情表現は、時にブルーを苛立たせるのに、時に落ち着ける。よく分からないが、とにかく今は嫌な気分ではなかった。
いちいち揉めるのが面倒で好きにしろと言ったのだから、もって行きたいと拗ねるならそうさせようか。
ブルーがそう手を引っ込めようとしたところで、ジョミーの肩から別の手が鞄をひょいと取り上げた。
「あっ、サム!」
「お前ね、お世話するのはいいけど、限度ってもんを考えろよ。何でもかんでも自分がやりたいことをやるんじゃなくて、相手の要望に応えるのが『いい具合』ってもんだろ。やりすぎるとただの押し付けだぞ」
サムはジョミーに苦言を呈すると、むっと頬を膨らませたジョミーからブルーへと視線を移して、笑顔で鞄を差し出してくる。
「すみません、先輩。こいつにはあとでちゃんと言って聞かせますから」
一瞬だけ浮かびかけた言葉をすぐに振り切って、ブルーは淡々と頷いて鞄を受け取った。
「そうしてくれ」
彼が言ったことは間違っていないし、ブルーの要望にも叶っている。
それなのに、まるで無理やり嘘を口にしたように違和感が残る。
鞄を肩に掛け直すと、礼も言わずに背を向けた。そうでもしなければ、自分でもおかしな表情をさらしそうな気がしたのだ。
「あ、先輩!放課後もぼく迎えに行きますから!他にも何かあったら連絡くださいね!」
慌てたようにジョミーが声を張り上げたけれど、ブルーは振り返りもしなかった。
校舎に足を踏み入れると、ちょうど階段を降りて来たところだった友人と出くわした。
「おはようございます、ブルー。教室から見えたので迎えに来ましたよ。鞄を持ちましょう」
偶然ではなく、彼も迎えだったらしい。
「……余計なことを」
口にした言葉に、胸のつかえが取れたような気分になった。先ほどジョミーの友人に向かって言いたかったのはこちらだったらしい。
ブルーの要望に叶うのに、何が余計なのか。
奇妙なことだと自分自身を訝りながら、リオには素直に鞄を渡した。
このメンバーだと話がややこしくなるだけのような……(苦笑)
目次
「ジョミー!」
後ろから足音も騒がしく駆けてくる少年の声に、ブルーの眉間にしわが寄った。
あの下級生には特に非はないはずだ。今も斜め後ろから話し掛けてくるジョミーとは違い、ブルーにやたらと関わってくるわけではない。今だって彼が呼んだのはジョミーだ。
だというのに、つい身体が急ぐように僅かに前のめりになる。
気が付けば空いていたらしい距離は、向こうが少し走ると簡単に詰められた。
後ろから引っ張られたらしく、触れるような距離にいたジョミーが不自然な動きで視界の端から急に消える。
空いた右側につい振り返りそうになって、首に力を入れてそれを避けた。
「お前、はえーよ。先に行くなって」
「ぼくも先輩も速くないよ。サムがゆっくりしすぎなんだろ。ほら、キースなんて走ってなくてももう追いついた」
「コンパスの差があるからな」
「…………うわあ……すごいな……」
「キース……悪気がないからって何でも許されると思うなよ!」
「僕は何かおかしなことを言ったか?」
すぐ後ろの喧騒に、ブルーは更に少し前のめりになる。
キースは自分と同種に近い人間だと思っていたが、少し違うようだ。彼は人が嫌いなのではなくて、単に心の機微に鈍いだけらしい。だから友人は少ないが、心を許した相手を持つ事も、自らも歩み寄ることもする。
ブルーにはひとり友人がいるけれど、彼がいい加減に呆れてブルーから離れて行けば、果たして追いかけるだろうか。恐らくは否、だ。
キースとマツカもそんな関係だろうと見ていたけれど、そうではないかもしれない。キースは、マツカの優しさに報いることもあるかもしれない。
そしてジョミーは明らかに、そんなキースたちといるほうが似合う少年だ。
ブルーの世話を焼きたがる様子は一生懸命で誠実で、どれほど明るく振舞っていてもそこにはどこか必死な痛々しさがある。
だがキースやサムと過ごすジョミーは、快活な彼らしい様子が伺える。
馬鹿馬鹿しい。関係が違うのだから当然だ。
ジョミーはサムと友人で、恐らくそのサムを通してキースとも友人になって、けれどブルーとはあくまで責任を挟んだ関係。
だったら無理をしてまで、ブルーの世話を焼こうとしなければいいのに。こちらが生活の補助をしろと言ったわけでもないのに勝手に押しかけて、義務感を振りまくくらいならこなければいい。
学園の門が見えたときには、ほっと息をついてしまった。
何に対して安堵したのかと思えば、そんな些細な行動さえも面白くない。
「もう着いた。鞄を」
振り返って手を差し出せば、ジョミーはそれを忌避するようにブルーの鞄の肩紐を握り締めてブルーから少し遠ざけた。
「教室までまだあります」
「教室まで着いてくる気か?」
「したいようにすればいいって言ったのは先輩じゃないですか」
確かにそうは言ったけれど。
ジョミーがただ難色を示しただけなら更に不快が煽られたかもしれないけれど、彼は拗ねたように唇を尖らせて抗議する。
ジョミーの見せる素直な感情表現は、時にブルーを苛立たせるのに、時に落ち着ける。よく分からないが、とにかく今は嫌な気分ではなかった。
いちいち揉めるのが面倒で好きにしろと言ったのだから、もって行きたいと拗ねるならそうさせようか。
ブルーがそう手を引っ込めようとしたところで、ジョミーの肩から別の手が鞄をひょいと取り上げた。
「あっ、サム!」
「お前ね、お世話するのはいいけど、限度ってもんを考えろよ。何でもかんでも自分がやりたいことをやるんじゃなくて、相手の要望に応えるのが『いい具合』ってもんだろ。やりすぎるとただの押し付けだぞ」
サムはジョミーに苦言を呈すると、むっと頬を膨らませたジョミーからブルーへと視線を移して、笑顔で鞄を差し出してくる。
「すみません、先輩。こいつにはあとでちゃんと言って聞かせますから」
一瞬だけ浮かびかけた言葉をすぐに振り切って、ブルーは淡々と頷いて鞄を受け取った。
「そうしてくれ」
彼が言ったことは間違っていないし、ブルーの要望にも叶っている。
それなのに、まるで無理やり嘘を口にしたように違和感が残る。
鞄を肩に掛け直すと、礼も言わずに背を向けた。そうでもしなければ、自分でもおかしな表情をさらしそうな気がしたのだ。
「あ、先輩!放課後もぼく迎えに行きますから!他にも何かあったら連絡くださいね!」
慌てたようにジョミーが声を張り上げたけれど、ブルーは振り返りもしなかった。
校舎に足を踏み入れると、ちょうど階段を降りて来たところだった友人と出くわした。
「おはようございます、ブルー。教室から見えたので迎えに来ましたよ。鞄を持ちましょう」
偶然ではなく、彼も迎えだったらしい。
「……余計なことを」
口にした言葉に、胸のつかえが取れたような気分になった。先ほどジョミーの友人に向かって言いたかったのはこちらだったらしい。
ブルーの要望に叶うのに、何が余計なのか。
奇妙なことだと自分自身を訝りながら、リオには素直に鞄を渡した。
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