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日々の呟きとか小ネタとか。 現在は転生話が中心…かと。
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この話で地球を目指す人ばっかりなのは当然と言えば当然なんですが、妙に一般的な憧れの職業みたいに見えてくる……(苦笑)
でも実はイメージ的には、現代の宇宙飛行士か、それよりもマイナーな人気の職業のつもりだったりします。


目次



「あ、サム。おはよー」
声を掛けられて振り返ると、ジョミーは珍しい連れと一緒だった。
入学初日の事故のせいでずっと無愛想な上級生と共に登校していたはずなのに、今日は友人と二人連れでブルーの姿がどこにも見えない。
「おう、おはようジョミー、シロエ。なんだ、とうとう先輩にフラれたのかよ」
一度決めたことをジョミーが覆すことは滅多にないので、置いていかれたのかとからかえば、ジョミーは苦笑するだけで、なぜかシロエが露骨に顔をしかめる。
「少し待っておくくらいのことができない奴が、勝手に先に行っただけですよ。おはようございますサム」
「怒った言葉尻に挨拶続けんなよ……」
サム自身はそれほどシロエと親しくしていたわけではないが、アルテメシアではジョミーや弟のコブを通して、シロエやその弟と行動することもあった。あの頃は少々強がってはいるが素直な子供だと思ったのに、ノアで再会してみると随分態度が変わったような気がする。
特にキースに対して挑むような態度をよく目にするのだが、このところブルーとばかり行動するジョミーはその辺りに関しては気付いていないようだ。
「まあいいや。それよりジョミー、別行動できるぐらい先輩についてなくてよくなったなら、今日あたり一緒にサッカー部の部活を見学に行かないか?男子部と女子部は両方近くでやってるらしいさ」
「ごめん、今朝はアルテラとセンターに寄ったからあの人が先に行っちゃっただけで、ぼくは放課後も迎えにいくつもりなんだ。えー……と、それに、実はぼくここでは部活に入る気、あんまりなくて」
「え、お前が!?サッカー辞めるのか!?」
よく男に間違われるだけあって、ジョミーは昔から活動的に動き回る。特に好きなのはサッカーだが、その他のスポーツにしても持ち前の運動神経の良さで男に混じってよく活躍していたのに。
信じられないと目を瞬くと、ジョミーは肩を竦めて空を見上げた。
「辞めるとは言ってないだろ。部活としてはやらないだけで、遊びとかでならコートに行くよ。でもいい加減本腰入れて勉強しないとマズイからさ」
「勉強?お前が……って、え、まさか再生機構に入りたいってマジだったのかよ?」
「まさかとはなんだ、まさかとは。ぼくがいつ冗談だって言ったんだよ」
「再生機構!?」
シロエも目を向いて驚いている。そうだろう、当然の反応だ。
「だ、だってさ!再生機構のメンバーってエリート中のエリート集団なんだろ!?」
今度は本当に気分を悪くしたらしく、眉を寄せたジョミーに慌てて手を振り回して力説する。
「世界でトップレベルの専門家チームだって言うじゃねーか。ちょっとやそっと勉強して入れるもんじゃねーだろ」
「専門家チームを目指すとは言ってないだろ。ぼくが目指しているのは実務職だよ。地球に直接下りて専門家の理論を実践する、あれ」
「あれは過酷な地球の環境でも問題なく行動できる体力がいるって話だろ!女のお前が選ばれるかよ!」
「やってみなけりゃわからないさ。それに、必要なのは体力だけじゃなくて、チームワークと柔軟な状況判断能力もだ」
「柔軟な状況判断……」
お前が?という目を思わず向けると、ジョミーの機嫌はさらに下降した。足を速めて、つんとそっぽを向く。
「言ってろよ。ぼくは絶対に再生機構に入るんだ」
「そうは言ったってさあ……」
「……絶対に、地球の地面にこの足で降り立つんだ」
背を見せるように前を向いたままの呟くような声は、ともすれば聞き逃しそうになるほどの小さなものであったにも関わらず、ずしりと重くサムの胸に響いた。
「ジョミー……」
「だったら、ぼくとジョミーでチームを組みたいね!」
その元気の良すぎる興奮した声に、一瞬だけ親友の背中を遠く大きく感じた感覚がすぐさま吹き飛ぶ。
「な、なにぃ!?シロエ、お前もか!」
「そうですよ。ぼくも再生機構を目指しているんです。言ってませんでした?ぼくは工学系のスタッフで、ジョミーは降下班希望でしょう?ジョミーと同じチームで地球に行けたら最高だ!」
「シロエも一緒かあ……そうなったら心強いな」
機嫌を良くして振り返ったジョミーの頼りにするような言葉は、ジョミーを慕っているシロエの自尊心を擽ったらしい。
「任せてよ。ジョミーたち降下班の安全を向上させてみせるから!」
「目指す先が逆の立場の方なら、機構に選抜される可能性が少しは上がったかもしれないな」
未来を語って高揚した二人の気分に、水を差すような冷静な声が割り込んできた。

大通りに入ってきたキースに、サムは背後から上がった二つの怨嗟の気配を見ないようにして手を上げる。
「よ、よう、おはようキース、マツカ!」
「ああ、おはよう、サム」
「おはようございます」
ジョミーとシロエの睨みつけるような視線を気にしていないのはキースだけで、一緒に合流したマツカは少し遠慮するように弱々しい笑みで頭を下げる。
「おはよう、マツカ」
「どうも」
キースの発言が気に食わなかった二人は、わかりやすくマツカにだけ挨拶を返した。キースも二人のことは完全に無視をして、サムの隣に並ぶ。
「お、おいキース」
「本当のことを言ったまでだ」
キースが言葉を選びそこなうことはよくあるが、それにしても今日は随分刺々しい。それも、いつもやたらと挑発してくるシロエだけでなく、今日はジョミーに対しても冷たいような気がする。
「なんだよ、ジョミーと喧嘩でもしたのか?」
こっそりと訊ねながら、だが昨日までは特にそれらしい様子はなかったように思う。キースも同じように目指している地球再生機構を軽軽しく見られているようで気分を悪くしたのだろうか。
耳打ちをされたキースは、サムを振り返り眉を寄せて何か言いたげな表情を見せたが、結局何も言わずに前に向き直った。
「別に」
「ジョ、ジョミー?」
「別に」
振り返るとまったく同じ言葉で顎を逸らすように向こうを向いたジョミーに、どうやら何か揉めたらしいと溜息を零す。
「そ、そういえばジョミー」
刺々しい雰囲気に、サムと同じく気まずい思いをしているらしいマツカが手を叩いて話題の転換を図った。
「どこか大きな怪我をしたんですか?」
マツカの話に、顕著な反応を示したのは何故かキースで、ジョミーは目を瞬いて首を傾げた。
「は……なんで?」
ジョミーの鈍い反応に、マツカは戸惑い言い訳するように手を振る。
「い、いえ、先ほどブルーさんが兄さんにファントムペインの話を聞いてきたんです。それで……」
「ああ、あれ。タージオンが大袈裟に騒いだだけで、怪我って言っても擦り剥いた程度だよ」
ガーゼと保護テープを貼った掌をひらひらと振ってみせて笑うジョミーに、マツカは安心したように胸を撫で下ろした。
「元気そうだったらどうかな、とは思ったんですが、何か大きな怪我をしたのかと心配していたんです」
「なに、あいつマツカたちに聞くなんてまだ疑ってたの?」
やはり顔をしかめたのはシロエで、ジョミーは軽く肩を竦めるだけだった。
「………胸部の怪我を疑っているんじゃないのか?」
肩越しに振り返って、キースにしては珍しく控え目に提示された疑問に、これもまたシロエが激しく反応して足を速めてキースに詰め寄る。
「そうでしたキース!この変態!よくもジョミーの前にのこのこ顔を出せましたね!」
「へ、変態だと!?」
「変態を変態と言って何が悪いんですか!」
にわかに騒がしくなった二人に、周囲の注目が集まる。
「まーまーまー!落ち着けって二人とも!」
朝から変態だなんて公道で指を突きつけられて憤るキースに、サムは慌てて二人の間に割って入った。
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